木星カリストの〈森の精〉基地司令官ウィルドレイク大佐は、困っていた。〈機構軍〉から送られてくる人材が、揃いもそろって役立たずばかりなのだ。しかも、新任者をきちんと教育しようと意気込んでも、基地に棲む小悪魔たち――〈グレムリン〉と呼ばれる二人の少年――が悪戯をしかけ、ふいにしてしまう。
実質上の基地の支配者〈グレムリン〉とは、ウィルドレイク大佐の息子ヴァルトラントと、イザーク大佐の息子ミルフィーユだ。
司令本部のシステムをハックしてデータを書き換えるほどの少年たちに、基地の大人達は振り回されてばかり。
今回、彼等の標的となったのは、土星のタイタンからはるばる赴任してきた士官候補エビネ・カゲキヨだった――。
『グレムリン』と聞くと、1984年に公開された某映画を想い出します(^^ゞが、無論、関係ありません(スミマセン・汗)。
お話は、人類が宇宙へ飛び出した時代。宇宙基地でのドタバタ…ではありますが、宇宙人が攻めてきて戦闘機が飛び交うようなSF活劇ではありません。軍隊のなかでの上下関係や、独り親と子どもとの関係、テロリストによる攻撃や政治的な駆け引き、心理的トラウマなどを丁寧に織り込んだ、人情譚となっています。
何より、いたずら好きな少年たちとエビネ君の友情が、微笑ましく楽しい。今後、彼らが一緒に成長していく過程で、どんな出来事が起こるか、楽しみになる物語です。
人間関係重視のライトSFがお好きな方に、お薦めします。