幕間:「6号君『戦争』」
「敵軍のロケット砲の飛来を確認! 迎撃班! 対空狙撃を行え!」
サイボーグの指揮のもと、そのサイボーグの部下が戦車を操縦する。
僕は新潟市制圧の際に貢献したサイボーグに勲章を与え、指揮権を一部譲渡していた。
――着弾による爆発音が響き渡る。僕は嫌な予感がした。
「柴村軍曹、戦況はどうだ。どうぞ」
僕はサイボーグに無線で戦況を確認する。勲章を与えたサイボーグには名前と役職を与えた。いつまでもローマ字と数字の呼び名では呼びずらいからね。
「こちら柴村。対空狙撃は一部成功。1発被弾しましたがこちらの戦車が1台破壊されただけです。どうぞ」
「了解。ロケット砲を飛ばした後で今敵軍に隙が発生しているはずだ。こちらも爆撃弾を発射してくれ。 どうぞ」
「承知です。指導者様 無線終話」
指示を受けた柴村軍曹は、戦車100台から爆撃砲の連射を指示する――。
爆撃砲は1発で直径1kmを消し飛ばす性能だ。
敵方で爆撃音が響き渡る。敵軍を確認する限りかなりの被害が見て取れる。
「西村軍曹、敵軍の状況はどうだ。どうぞ」
敵軍近くの諜報部隊に僕は無線で状況を確認する。
「こちらは西村。敵軍の地上部隊は目視する限り壊滅。敵の兵器やロボットも溶けて残骸となっています。どうぞ」
「さすがだ。情報提供感謝する。終話する」
やはりこちらの武力は旧人類を圧倒しているようだ……。
正直この後の戦いはこちらが圧倒的であった。
先ほどの爆撃砲で殆ど壊滅していた自衛隊軍は、こちらに対して航空機やヘリを使って空爆を行おうとしてきたが、こちらの対空狙撃で全て迎撃した。敵軍機は爆弾もろとも全て爆発していった……。
自衛隊軍が攻撃を始めてから30分後、相手は撤退を始めた。
――逃がさないよ?
「柴村軍曹、山本軍曹 敵機を爆撃砲で抹殺しろ。どうぞ」
「こちら柴村軍。了解」
「山本軍も了解」
こちらの高火力な狙撃により、逃げる自衛隊軍も壊滅していった――。
◇
「柴村軍曹。新潟南部の制圧を命ずる。逐次状況を本部へ連絡するように」
「指導者様、承知いたしました」
「続いて山本軍曹。山形県庄内地区の制圧を命ずる。制圧が完了したら秋田県へ進軍するように。自衛隊の駐屯地が存在するから心してかかってくれ」
「指導者様承知いたしました。最善を尽くします」
自衛隊軍の壊滅から1月後、僕は新潟県の残りと山形県庄内地方、秋田県を制圧するために自軍に指示を出していた。山形県には自衛隊の駐屯地があるが、先日の戦いの結果を見る限り全く心配無用な気がしていた。
そして、新潟市で操業を開始したサイボーグ生産工場と兵器生産工場により、自軍の力は着実に底上げされていた。実に素晴らしい。
◇
――しかし制圧が後もう少しで終わるタイミングで、自軍から不思議な報告が上がってきた。
「指導者様。報告いたします。旧人類からある暗号を唱えられた我が同胞達は、旧人類を虐殺することを止めてしまうとのこと」
僕はその報告を聞き、有海が得意げにコーディングの内容を話していた、ある『暗号』について思い出した。
「ああ、なるほどね……」
僕はいやらしい感情をさらけ出しながら、諜報員に対してこう告げた。
「1か月間の休戦とする。歯向かってくる旧人類以外殺さないように。あと――」
「――僕達に出くわした際に『I am your fellow』『私はあなたの同胞です』と言ってきた人たちは旧人類だと思え。僕達の本能だとその暗号を伝えられると同胞だと思ってしまうが、そこは言われた際に『こいつらは旧人類だ』と自分に言い聞かせるようにしろ。1月後、旧人類に対して再度戦争を始める。それまでに本能を克服するように自軍に指示を出せ」
「――承知いたしました。指導者様」
さあ、ひと時の安心をお前たちに与えてやる。
1月後に絶望するがいい。
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