2045年問題

村田こうへい

第一章:「転移編」

序章:「後悔」

 AIというものをご存知だろうか。ロボットやコンピュータに組み込まれる、人工知能のことである。このAIは今までのコンピュータと違い、人間のように自分で学んだ情報を蓄え、応用し、より高度な知識へと発展させることが可能だ。

この技術で人類の生活が豊かになっていく一方、このAIの自己学習機能により人生を振り回された一人の男がいた。彼ほどこのAIに人生を振り回された人間は、今までいなかっただろう。


「俺は、連れの有海と共に命尽きるまで一緒に暮らしたかっただけだったんだ……」


 そう悲観しながら呟く初老の男性、小林昭人は、自分が導いた結果招いてしまったこの世界の惨状に、心を痛めていた。

そして自らの過ちを後世に残すため、彼はこの過ちを引き起こす根源となった自分の体験について、「一編の小説」にまとめることにした。この小説は、彼が18歳の時に体験した出来事まで遡る……。

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