序章 懐かしいあの時間へ
「結局、君は何処に向かっているんだ?」
あれからSという人物に着いていくがその真意が良くわからなかった。知らない裏路地に居るがここに何の用?
「ここよ.....貴方も良く知る場所よ。」
彼女に言われ良く見る。それは小さな建物があり実験施設見たいな場所だった。
確かここは親父の......
「貴方の御父さんの実験ラボってところ。貴方も何度か訪れた事があるでしょ?」
「ああ。去年ぐらいにな。しかし、今は一連の事件により閉鎖されているんじゃ無かったか?」
確か政府や警察の介入によって関係者以外は立ち寄れなくなった筈だが。
何で扉が開くのは謎過ぎる!
「まあそう言うことになっているけど実はそうでもないらしいよ。中に私みたいな組織の人間が立ち寄ることは多いよ。」
「へぇ~ってそれ完全に不法侵入じゃんか。」
オレがそう言うと彼女は何言ってるのか分からない様子で傾げていた。この子と言うより凄いな組織って奴は。
マイペースにも程があるが奥に進むほど照明が壊れているのか薄暗い空間へと包まれる。
「ここから暗いから足元には気を付けてね!」
「気を付けてと言われても全然前すら見えないし君も何処にいるのかわかんねぇ。」
今がどの場所に居るのか分からないが階段にいるのはわかる。多分前来たときの事を思い出すと彼女は地下に向かおうとしているのだろう。
確か地下にはあれがあったような......
「ライトぐらい持ってこれば良かったわね。」
「あ───言い忘れたがオレ持ってるぞ。」
警備員として働いている自分は常にライトは持参していた事をついさっき思い出した。
「持っているのなら早く言ってよ!もう。」
少し彼女の口調が可愛かったのでこれは良しとしよう。ライトを取り出した彼女に渡そうとしたが暗くてはっきり見えないのか探しても見当たらない。
「ちょっとすまないが多分後ろ側辺りにあるから取ってくれないか?」
「はあ~仕方無いわね。少し後ろ向いて。」
後ろを向きライトを取りやすくする。
「まだか?」
「もう少し待って。暗くて分からない.....あった!っえ」
ようやくライトを掴めれたのであるがここで彼女の様子が少し可笑しくなる。
取った瞬間に今までのバランスを崩したのか落下しかけている。
そもそも階段と言う不安定なところで取って貰うこそが間違いだった思う。
「───危ない」
咄嗟にオレは彼女を庇うため抱え込む。階段から転げ落ちた。
「ううっ......」
少し頭を撃ったのか痛みがする。結果的に彼女の方が怪我が無くて安心する。彼女も意識が無いようだ。それはそうとオレの方もそろそろヤバイな。
段々と次第に視界が暗くなっていきそのままオレの意識は途切れた。
ーーーー
『あのね......私ずっと昔から───』
それはある一人の女の子の言葉。今までずっと過ごしてきたあの子の......
『ああ。お前の言いたいことはわかる。だが、オレはお前の梨奈の答えに応じれない。』
その時、一人の男が女の子の答えを否定した。どうして否定したのかどうしてあの時はこの選択をしたのか今では覚えていない。
『やっぱりそうなんだね.....私があの時に』
『いや、それはお前が悪い訳じゃない。オレが守れなかったからああなっただけでお前は悪くない。』
悔やんでも悔やみきれない過去。あれがあれこそがオレの犯した最大のミスとも言える。
そして二人の関係は一度崩壊しそれからは見ず知らずの他人として過ごすことになる。
『ごめんな.....オレが決断出来なくて。分からないんだよ。お前が悲しむ気持ちが。』
『貴方はそう言う人だって知ってる。でももっと良いやり方を思い付かなかったの?』
彼女に言われた言葉はどうしてか胸が苦しくなるほど響いた。他人に一切興味の無い自分が初めて好きになった女性だからこそ心に響いたのかもしれない。
『じゃあね。さようなら.....』
女性はオレの元から去っていく。この時、結局何も言えずに後ろ姿をただ呆然として見るしか出来なかった。当然この時に何か言ってれば未来は変わってたのかも知れない。彼女もそう願っていたのかもしれない。
しかし、それが出来なかった。
「ううっ.....」
少し感覚と意識が戻ってきた。
それよりも何か目の辺りが眩しく感じる......
確か意識を失ったのは夜中の暗闇の空間だったはず。しかし、今は少々違和感を感じる。
そっと目を開くと日射しの良い青空が広がっていた。
(外.....建物の中にいたはずだが。)
辺りを見渡し確認する。本来なら庇ったはずのSが居るはずであるが見渡してもその存在は確認できなかった。
「先に目が覚めて何処かへ行ったのか?」
体を立ち上げ現在の状況を再確認する。
「はあ!?嘘だろ.....」
思わず裏声った声で驚愕する。
何故そうなったのかそれは本来なら居るはずの無い場所に居たのだから。
その場所とは昔オレが通っていた学園の屋上。良く昼休みになると立ち寄っていた所定位置だということ。後、服装を見ると制服を着ていた。制服が夏仕様となっているため夏だと把握できた。
驚いている場合では無いな。先ずは動いて見るか。
瞬時に切り換えをする。
「ん?あれは.....」
上から覗くと一人の女子生徒が食事取っていた。
所謂ボッチ飯って奴か。悲しいものだな。
ともあれそれらを無視して先ずはあの生徒に何か聞くことにした。
少し段差はあるが飛び降りる。
「私ったら今日も上手くいかなかったなぁ~~」
何か独り言をボツボツと喋っているような。取り敢えず慎重に尚且つ丁寧に声を掛けよう。
「ちょっとすまないが良いか?」
「ひゃん!」
おっと驚かしてしまったか?
流石に何時もの癖で気配を消してしまっていたようだ。
「悪い.....脅かすつもりじゃなかったんだが。大丈夫か?」
「あっはい。突然でしたので少々.....」
ふ~ん、オレと同じ静か系のタイプか。ここは自然と関わろう。
「まあ、大した用ではないんだが今は昼休みだよな?後、もう一つ今は何日?」
「あっえっその.....」
オレの質問が多すぎるせいか戸惑い出す女の子。そんなに戸惑うか?と思うけどそれもこの子の性格ってものか。
「.....今は昼休みだよ。今日は七月六日です。」
ようやく落ち着きオレが言った質問の答えを返してくれた。
その内容にまたもや七月六日と言う七夕の一日前になる。そうなるとピンポイントに過去に飛ばされた事になる。確かオレとあの娘と初めて出逢う日は七夕の日となっている。
「ありがとう!昼食の邪魔をしたな。じゃあごゆっくり。」
一応確認も出来たのでこの子には用がない。そのままお礼をしこの場を後にした。
その後......その女の子はこう呟いた
「───やっと見つけた......小鳥遊蒼人先輩。」
あの後、名前も知らない女子生徒と別れ屋上から離れ自分の教室へと向かっていた。
ズボンのポケットの中に入ってたスマートフォン通称スマホを取り出す。そして電源を開き学生手帳欄を開くと正確の情報が載っており助かった。
この学園の名前は私立上城構成学院、通称上城学園と呼ばれ全校生徒二千人を超えるほどの超最高峰の一角で有名な学園である。その中でも退学者が年間に五十名程を出してしまう記録などもありそちらの方でも有名である。
何故、退学者が多いのかそれはこの学園には特別なシステムが導入されているからだ。
世界、日本の技術は向上し競争社会も頻繁に拡大。一人一人の実力こそが競い合い争う、つまりは早くもその社会に慣れるべく特訓する場所とも呼ばれる。
そのお陰か自由度も高く生徒個人の判断で委ねる事になっているとか。
(確かこの学園の情報はこのぐらいだったかな。)
何年も前の事なので全ての内容は覚えていない。具体的に話すとこれぐらいまでしか覚えていなかった。
ともあれ教室に向かう。オレが在学してるクラスは二年Bクラスである。この学園ではA~Eまでが存在。階級的にAが一番、その次にBだ。
オレの居るクラスは比較的安定している方だ。
「(ようやく教室に着いたか。懐かしいな。)」
そのまま躊躇いもなく扉を開く。中は良くできており其処らの他校に比べきちんと整っている。夏の始まりでもあるのかエアコンもガンガンに効いていた。
辺りを見渡すと同級生の会話、スマホを弄っておる奴、静かに読書してる奴が占めていた。
(取り敢えずオレの席は何処だったかな。)
呑気に歩き席を探す。出来るだけ周りに目立たず程々に。
薄い記憶によれば一番右端の一番後ろ、つまりは良く創作系の主人公等が座る所定地見たいな所。
席に座り窓の外側を覗く。如何にも夏らしい日射しだ。元の時間帯だと冬ぐらいだったから何か違和感も感じる。
(そう言えばこの日、午後から何があったけな?)
もう一度確認すべく頭を整理する。記憶によると今日の午後の授業は一年以外は無かったはず。
何せ午後から一年生ににあれが始まるのだから。
(まっ、オレには関係ないが。)
そろそろ昼休み終わる頃か。内のクラスでわいわいしていた者は自分の席に戻り始める。
(先生か......)
何となく耳音を澄まして見た。ヒールを履いているような音が聴こえる。
そう考えながらしていると扉が開く。
「皆さん、担任の冬ちゃんの登場だよ☆」
入ってきてから最初に放った言葉とは先程までの雰囲気とは違った空間に一瞬へと包まれたような感じがした。
オレはそれを見て懐かしいと思った。
二年Bクラス担任の新堂冬実───年は二四歳の若手教師。背中まで伸ばした栗色の髪に毛先にカールが掛かっておりとにかくスタイルも良い方な美人教師。
しかし、彼氏歴いない=年齢というとっても可哀想な女性である。
「もう~!皆さん少しぐらいは反応してください。私泣きたくなりますぅ。」
「先生、泣かないで下さい。立派な大人は泣いたら駄目ですよ。」
一人の女子生徒がテンション下がりの先生を慰めている。
それに対して周りは......
「流石は姫野だな。」
「この場の空気を何とかしようとしてくれる配慮──瀬女は本当に凄いよ。」
「やっぱり我らのBクラスのリーダーだ。」
「「瀬名様~~」」
クラスの雰囲気を見る限りあの女子生徒はそれなりの支持を持っていると見えた。確かにリーダーに相応しそうで頼もしい。それに美少女。完璧超人だ。
(とあれ、そろそろ帰りたいが担任が来たということは何か伝えたいことがあるってことか。)
じっくりと待つ。ポケットに入っているスマホを弄る。別にゲーム等はしない。少々ネット検索程度。
「それより冬ちゃん先生!私たちに何か用で来たんですよね?早く本題に入ってください。」
見た目小動物ぽくて可愛い女子生徒が口を開いて言った。
「ええ、そうだったね。それでは本題に入りますよ。来月のクラス状況の発表が出ましたのでお伝えに来ました~。」
担任の冬実先生がそう言うとこのクラスのほぼ全員が「おおー!」と歓声を広げていた。
「現在、私たちBクラスはAクラスの差には程遠いですが順調に安定してます。」
そう言えばこの時期は比較的安定していたな。
今オレたちが何について取り組んでいるのか?それはAクラスに勝つことそれだけだ。各クラスにポイントが存在する。このポイントをAクラスのポイントを追い抜くことでオレたちはAクラスに昇格できる。クラスによって有利状況は変わってくるため他のクラスは皆、上のクラスを目指す。
まあ、オレは興味は無いがな。
「だけどね。一つだけ問題があるの。今、凄く安定してるBクラスにもそろそろ危機って所かな。今Cクラスが登り詰めようとしているの。」
冬実先生が少々焦っているのか早口に喋っている。それを見てこのクラスの生徒たちは緊張感を漂わせていた。
「話は以上です♪明日も頑張ろう!」
最後に一言だけ残し教室から去っていく冬実先生。ようやく話も終わった所で皆が帰りの支度、準備をしている。
良くこの場合、高校生なら放課後は「飯でもいかね?」とか「ねぇねぇ服買いに行かない?」とか「これからカラオケ行こうぜ!」等々。この光景がどうしてか新鮮だった。
(さて、オレも帰るとするか。)
椅子から立ち上がり鞄を肩に掛けて教室を出ていく。普通この場合は友人と会話して帰るのが基本だろう。
しかし、オレは友達がいないのが痛いところ。そのまま寄り道もせずに真っ直ぐ帰るつもりだ。
(ん?あれは.....)
帰り際で何かに目を付ける。
「好きです!付き合ってください!」
遠くから見て男女二人組が人気の無いところで男の方が大胆な告白をしていた。
「.....ごめんなさい。貴方とは付き合えません。」
女性からの返事はお断りであった。男の方はその瞬間、悲しい表情となりこの場を堪えていた様子に見えた。
まあ学生としてはこれも青春の一課だろう。
だとしてもやっぱり勇気を振り絞って言った告白を断られたらやっぱりそうなるのだろうか。
(見られたら不味いし帰るか。)
その場を離れることにした。家に帰ってから今の状況の確認をすべく急いで帰宅することにした。
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