いつか彼方の親愛なる君に願いを

夜空りえる

序章 オレが求める世界とは

現在は西暦二〇XX年の近未来化に成功した日本は数々のシステムが導入され平和が保たれていた。


日本は技術推進国ぶっちぎりのNo.1を獲得していた。そんな近未来社会に置いて一般の人にとっては厳しい生活となっており日々、五十万人以上の日本国民が苦しんでいた。


その中に該当しないオレは極めて有利の存在である。




紹介しよう!オレの名前は小鳥遊蒼人だ。


小鳥遊家の長男として次期小鳥遊家を継ぐはずであったがオレはそれを拒み今は警備員として働いている者だ。




オレが所属している警備員はその他の警備員と違って特殊である。それは各地に回る秘宝を護る特殊警備隊所属の国家任意の稀に存在する最高機関の一員である。




ともあれどうして一般人のオレがそこまで登り詰めれたのかそれはまあ色々と......




基本仕事の依頼が来ない為、実質上では無職のニートと言っても過言ではない。ともあれ今は───




「───なぁ店主。オレはどうすれば良いのだよ!ほんっとうに俺はぁ!」




酒を過剰に摂取してしまったお陰でこの様である。比較的にオレは酒に弱い.....訳ではない。




「私に言われてもねぇ~。ほらお水だよ♪」




見慣れた手付きで酔ったオレに対応する店主。


この店の店主は珍しい女性店主である。


言っても見た目十八歳に見えて本当に大丈夫なのか?と思うが実年歴は.....




「何か変なこと考えました?(ニコッ)」




怖い目付きでニコッと微笑む彼女。おっと年齢は禁句だったな。それは失礼。




「でも最近では鹿園寺家と椎名家が市場が高いですね。どうなんですか?元小鳥遊家次期当主候補だった蒼人さん。」




「それはやめてくれよ~。オレはもうそんなんじゃない。」




昔の話を乗り出した為、急に酔いが覚めた感覚になった。


その名は聞きたくなかった。




「これは失礼───しかし、小鳥遊家が経営するTKNSグループは崩壊しようとしてますよ。良いんですか?自分の家の事でしょ?」




そう彼女の言うとおり。小鳥遊家が経営するTKNSグループは崩壊しようとしている。


その理由はオレの親父小鳥遊良司が開発した時間を遡る事ができるシステムを開発しようとしたが失敗に終わり被験者十名程消息を断ってしまった事件によりTKNSグループは責任を負い過疎化しているのである。




それを見てオレはざまぁ~と思った一面悔しい思いもまた持っていた。




「だからね。今度貴方の御父様に久しぶりに御会いになったら?」




「それは断じて断る!流石のお前に頼まれてもオレはあの家には帰らない。」




絶対に嫌だと強く言った。




「でもそれじゃあ.....貴方の蒼人さんの御父様は.....」




彼女は悲しい表情をしながらそう言うと少し悲しくなる。


そうなった理由は父はショックとストレスで倒れてしまい現在は病院で入院中だ。




オレは一度もお見舞いには言っていない。


その代わり何時もこの店主=彼女が見に行って世話をしている。




「何時もありがとな。オレの代わりに.....」




申し訳無くなり礼を一言。




「良いよ。良く蒼人さんの事を話してくれて私も楽しいし。」




「なに!それは初耳だぞ。親父め!勝手にオレの話をしやがって。」




「良かった。蒼人さんは素直さんでないね~。」




彼女にクスクスと笑われた。


オレが楽しそうな表情をしていたのか彼女の穏やかで輝かしい笑顔にオレは惚れていた。


もう彼女とは何年ものの付き合いだろうか?




彼女と出逢ったのはオレが高校二年の時、そして彼女が中学生であった時。


最初の出逢いは凄く良いものだった事を思い出す。




「今日はありがとう。また今度Seeyou!」




「うん。またね♪」




あれから何れくらい時間が経ったかは知らないけど彼女とお別れした。


良くオレは口癖として日本語と英語を合わせることが多い。


それにしても一つモヤモヤ感があった。




「また.....言えなかったなあ~。どうして好きですって言えないんだろう。」




夜の帰り道で一通りの少ないところで一人そう呟いていた。


もう何年間その言葉を一言も言えてない。


きっと彼女も気付いているのだろうけど彼女からは言おうとしない。


それは実際彼女は恥ずかしがり屋さんなのだから。




オレの言葉を何十年間も待っているのにそれを言えていない。もう呆れているだろうな。




はあ~学生時代に戻って過去を変えたい。




その一言がオレの望みであった───




「───いや、待てよ.....親父が作った失敗作なら行けるのでは?」




そうふと考え出しそのような結論に至った。しかし問題が。




「今、あれは会社の奥底に厳重に保管されている.....たとえオレが親父の息子だったとしても通さしてくれなさそうだし。」




う~~ん。


考えながら帰り道を歩く自分。


結局色んな策や案を考え出したが思い付かず気付けば我が家に到着していた。




「ただいま~。つっても誰もいねーけど。」




オレは現在独り暮らしで家には迎えてくれる人などいない。


そう──孤独なのである。


決してこの生活が好きでやっているのではなくともこの状況はどうしようにもならない。




(まあ実家でも結局は同じだったしな。)




実家での扱いもこのようなもの。ずっと孤独に過ごしていた為になんとも思わない。




「ふぅ~。」




ソファーに腰を降ろし縛っていたネクタイをほどき寛ぐ。冷蔵庫から取り出したお酒を飲み始める。




「やっぱりこれでないと。.....でも程々にしとくか。」




一口喉に通した後、飲むのをやめる。


彼女に「お酒は程々にね♪」と念押しされている。


あれだけ彼女のお店で飲んだのだかそう言われても仕方がない。


脱力感に襲われベッドに寝転がる。




「はあ~オレはどうすれば良いんだよ。」




何でまだオレは......ううん。考えすぎだと思う。目を伏せ視界が暗闇に包まれる。




高校時代の時を思い出す。あれは何時の日だっただろうか?自分が自分で無くなるあの───悲劇な───




『ふふっ───ようやく見つけました。閃鬼さんっ!』




「誰だ!」




急に謎の声が聴こえて目を覚ましとっさに辺りを見渡す。




「女の子.....?」




窓から女性の影かうっすらと見える。


良く見るとここはマンションの七階だ。


しかし女性は宙を浮いているようにもとらえれる。




「君は何者?どうやって七階まで。後、何で宙に浮いているんだ?」




『ふふっ。あまり驚かないのですね。まあ仕方ないと思いますけどね。───小鳥遊蒼人さん、貴方に罪はありませんが死んでくださいっ!』




「なっ!」




そうして宙に浮いている女性は手をかざし何かを始める。


そして次の光景は一瞬過ぎて何が起こったのか理解できずにいた。




「うぐっ.....」




目を開きその視界に広がったのは先程までのオレの部屋が跡形もなく消し飛ばされていた。


建物の瓦礫や破片が飛び散っておりもう何がなんやら分からない状態であった。




「あはははっ!私の一撃を喰らって生きているなんてね。流石だね~閃鬼!」




笑いながら俺の方へ向かってくる女性。ようやく視界が見えたのか女性の姿を捕らえた。女性の容姿は見た感じ十六歳の子供だった。髪型は綺麗なブルー色のストレートヘアで切れ目の肌は健康的な白。体つきも成長期なのか魅力的である。




(いかんいかんー見とれている場合じゃないな。)




「流石に突然でビックリしたけど君は誰かな?どうして俺を殺しに来た?」




それを問い掛けると女性は目を強く開き少し微動した感じに見えた。




「ほぁ~あれだけの事があって冷静にいられるとはねぇ。話の通り大した大物だよ閃鬼さん。──でもその冷静とした余裕感をことごとく潰したいっ!」




その時彼女が取り出した長い鋭い棒を持って此方に突進してくる。




「おいおい。その可愛い声で物騒な事言わないでくれよ。」




俺は華麗に回避し体勢を立て直してそう言った。




「中々やるねぇ。でもこれはどうかな?」




背後にいた彼女は次に棒の形状を変えてこの国では権重に取り締まれている拳銃に変えた。


そしてトリガーを容赦なく弾いた。




「それ───この国で一般人には禁止されているけど君みたいな若い娘が使えるって流石に驚いたけど甘いな。」




「まあ何となく貴方なら防ぐと思いましたけど大胆っですね!」




彼女が撃った拳銃の弾丸はオレの右腕に貫通せずに突き刺さっていた。


血の量は少々だし流石に想定外だったけどまさか射程がピンポイントに心臓に当たろうとしていたとはね。




「大胆と言うより君の方が狂ってると言いたいな。何者なんだ?お前は───」




彼女は何者なのかどうした俺を狙って来たのか疑問は多い。しかし、今は逃げるという選択肢もあるが俺もどうやら遊びたいらしい。だから───




「私?そうねぇ~私はSシード──一言でいうと貴方を殺しに来た『エトワール』つまりは星に導かれし者です♪」




エトワール──意味は星。彼女のいう星に導かれし者というのは昔、何処かで聞いた覚えがある。それは数十年前に日本に突如現れた外国からの聖杯協会の一角。だか、現在では姿を隠していたと言うがどうして今頃になって.....




「貴方もご存知でしょうが今回、私たちは日本の三大財閥の一つ──小鳥遊家の時間を遡る『タイムリープ』という禁忌に手を出したこと。私たちエトワールは貴殿方を成敗しに来ました。」




「ははっ。一つ言っとくけど俺はその件に一切関わっていない。お前らの間違えじゃないか?他を当たれ。」




彼女の言ってることは本当だとしてもオレには関係ない。関係あるのは親父らだと思うんだけどな。




「えっ.....そ、そんな筈無いよね?貴方、小鳥遊家の人間だよね?」




「まあ一応小鳥遊家の人間ですけどオレは関係無いぞ。」




「マジなの?」




「ああ──マジだ!」




その瞬間彼女は後ろに向いて座り込み頭を抱え込みながら落ち込んでいた。




「えっまさか私、狙い目標間違えた?そんな筈は無いのだけどもあれ?合ってるよね。私合ってるよね!」




小声でなにやらぶつぶつと呟いていた。案外ドジな子なのか?


ヤバい、面白い!


見てて面白くなってくる。




「私のバカバカ!どうして何時も上手くいかないのよ!うっうっふぇぇぇぇーーーん!」




おいおい待て待て!遂に泣き出してしまったぞ。


今の彼女が泣いている姿を見てちょっと心苦しく感じるのとこの場の雰囲気が一気にガクッと冷めた気がした。




ああ~仕方無いなぁ。




泣いている彼女に近づき




「ほら。もう泣くなよ。見ててオレが恥ずかしくなるからこのハンカチで涙拭いて。」




「ううっうん~~。」




コクッと頷く姿がなんとも可愛かった。今回のはオレが悪かったのかわかんないけど男として女性を泣かしてしまったのは反省するため慰めてやる。




「ほら。もう泣かない泣かない。俺も少しやり過ぎた。」




彼女の頭を優しく撫でてポンポンした。そうしたら彼女の顔付きは自然と元通りになり何処か嬉しそうな表情にも見えた。




「ふっふん!蒼人が悪いんだからね。昔から意地悪なんだから。」




「はあ?何言ってんだお前。オレはお前の事なんか──」




途中言いかけようとした言葉を彼女に封じられた。




「───やっぱり覚えていないんだね。」




「はあ?」




「まあわかってたけどね。その前に私に協力してくれないかな?駄目.....かなぁ?」




首を傾げて見詰めてくる姿がなんとも───




可愛いし憎い!オレの脳内ではそのような意味不明な構造が出来ていた。




「協力か───お前は俺を殺しに来たんじゃないのか?」




先程までそう言ってた筈だが今度は協力しろと要求されてきて意味がさっぱり理解できずにいた。




「そ、そんなんだけどっ!変わったの。貴方に協力して欲しいことがあります。」




「敵に協力とは。まあオレは別に構わないが具体的にどんな事をすれば良い?」




Sはオレにどのような事をして欲しいかは今さら聞かなくたって何となく感ずいている。つまり彼女の言いたいことは俺に───




「過去を未来を変えてください。貴方にはそれだけの事をやって欲しいのです。」




(まあ、何となく予想は出来ていたけど過去を変える....か。)




現在の日本は近未来化に成功した次いでに多くの課題が増していた。それがこの世界の地獄ともいう強者と弱者の差別的問題。


力を持った者や実力を持った者が優遇される社会。


その逆は落ちこぼれ&才能のある人物であっても他の項目が低ければ弱者としての位置に行く。




オレも良くこの世界を今でも平然として生きているなんて考えると俺も頑張った方だと思う。(多分)




彼女のいう過去を変えて欲しいのはこれらに関係するのであろう。




「それで具体的に何をすれば良い?」




「勿論貴殿方小鳥遊家の一人に協力してもらうのは些か不問だけど私にももう時間が無いの。だから───」




彼女の表情は段々と悲しみに暮れた顔になりそれを見た俺は。




「わかった、そう悲しむなよ───雫。」




「えっ.....!」




あれ?オレ、さっき何で彼女の名前を平然として言ったんだ?本来は知るはずもない彼女の名前が咄嗟に思い浮かびそのまま発言していたようだ。


それに対して彼方は驚いていた。




「ああ、すまん。人違いだった。君が昔の友達に凄く似ていたもんで。」




「そんなにその人は私に似ていたんですか?」




似ていたというか言われても今は良く分からない。昔の記憶が曖昧で少しな。




「さあ?オレにもわかんねぇから何とも言えないな。」




「そう───じゃあ早速過去に行くために準備に取りかかるから着いてきて。」




そう言われ瓦礫まみれの自分の家から出ていく為に階段で下に降りることに。




彼女の後を追い掛ける形でこの状況を打破することに成功した。これ以上は余計な動きをしないでおこうと考えていたら......




「ねぇ───


貴方はこの世界に未練はある?」




「.......」




突然の事で考え込んでしまい沈黙する。


この娘が言うこの世界の未練───あるさ。飛びっきりの修羅場を潜り抜けた自分はまだあの事に根に持っていた。


だからこそこの時正直にこう言った。




「ああ。後悔した未練はある。もし....もう一度やり直せるのなら今度こそは───」




その後の言葉を彼女に聞かせた途端少し微笑み頷く姿が印象的に残った。


これがオレの再始動の始まりと現代と過去を交差する物語である。


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