3月23日

文字ラジオ準備中

 仕事と健康を失った俺は全てが嫌になり、自ら命を絶った。まぁあとはお決まりの三途の川を渡り、閻魔大王に謁見して地獄に行くか天国に行くパターンやと思ってたんやけどな……。


「ええっと、仲嶋なかしま 弘志ひろしさんですね……あれ?少々お待ちください……おい、仲嶋さんの資料を……えっ! あっちゃ~。これヤバいっしょ?」

「赤鬼さん、顔が青いで。真っ青やんか、まるで青鬼やで。何が有ったんや?」


 近頃は閻魔大王さまが直で謁見する例は少ないそうで、基本的に部下である鬼が処分を言い渡す最近の地獄事情。なんでも凶悪事件とか、地獄放送のニュースで放送される程でないと基本的に鬼が担当するんやって。人間を捌くのに罪悪感を覚える若鬼は血の池地獄の温度管理や針山地獄の研磨などの裏方仕事に就くらしい。


「すいません、こちらの手違いでして……早速生き返らせますので手続きを」


 汗を拭き拭き平謝りになる老鬼には悪いが、現世に未練は無い。それにとっくの昔に焼かれて骨になっている。迎えの死神の到着が遅かったからじっくり見てしもたわ。死神も人(?)手不足とは思わんかったよ。


「実はあなたの不幸はこちらの手違いでして、はい、自殺自体がもう運命課のミスでして……申し訳ありません……」


 正直な所、『申し訳ありませんと違うわ、どないしてくれるねん』と怒鳴り、喚いてから鬼をシバキまくろうかと思ったが、まぁこいつがミスした訳ではない。ミスした時に大事なのはリカバリーだ。その結果次第でどう動くか判断させてもらう。


「ほな、生き返らせんでええから、こっちで生きていく(もう死んでるけどな!)から就職先をあっせんしてくれ。そしたら文句は言わん」

「イイんですか! 助かりますっ! ううっ……地獄で仏とはこの事……」


 ここからの老鬼の対応は素晴らしかった。真っ青だった顔は元の赤に戻り、「これで首が繋がった」「嫁に叱られずに済む」と感謝をされて俺は新しい仕事に就くことになった。


「じゃあ仲嶋さん、あなたは今日から名前を捨てて、この名前を名乗ってください。これが名刺です」


 赤鬼からもらった名刺には『死神十三』と印刷してあった。


「十三か、縁起の悪さが良いな」

「あ、それは十三じゅうさんと書いて十三じゅうぞうです」


「なんじゃそりゃ?」


 こうしてワシは閻魔亡者センターに再就職を果たした。所属は地獄部、その中にある運命課・魂回収係……俗にいう『死神』や。


第1話 おっさん・死神デビューする


……あ、まちがえた。


 京丁椎の真夜中MIDNIGHT∞、次回の放送は3月23日午後10時スタート予定です。皆さんのお便りをお待ちしています。お便りの締め切りは午後11時30分の予定です。


 

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