仕事の依頼
エーフォイ発芽事件から二日たったある日、いつもと同じように配達に行こうと自分の担当する『発送ボックス』を確認すると荷物が一つしか入ってなかった。
「ユリカ先輩、私の発送ボックスに荷物が一つしか入ってないんですけど…私何かやらかしましたっけ?」
私の先輩のユリカ・シュテルンヒェン先輩は長距離配達科の人気者で、いつもふわふわとしているが仕事が出来る頼れる私の憧れの先輩だ。
私が新入社員の時に仕事でヘマして全然仕事を貰えなくなりショックを受けていた時も優しく慰めてくれた天使のような人で、その時から私は何かあると先輩に相談して助けてもらっている。
「あらあら、ほんとねぇ、特にミスの報告は来てないけれど…ちょっとその荷物見せてくれないかしら?」
私はは差出人と宛先、割れ物注意などのシールが貼られている長方形の箱を先輩に渡した。
「あ~!分かった~この荷物宛先が雪の国への開拓基地宛だものぉこんな長距離配達じゃあほかの荷物は配達できなから、この荷物ひとつなんじゃないかしらぁ?」
最悪だ、雪の国は気候が厳しすぎて古くからの先住民しか住んでいない。しかし、最近は雪の国への配達が増えてきている。
なぜなら、とても綺麗なシュネークリスタルという雪の結晶が取れるため、その結晶採取と雪の国を開拓し人々が住める設備を作る目的で開拓部隊が現在奮闘中なのだ。
「うっわぁ、マジですか…あんな遠くて危険なとこ先輩みたいなベテランが行くべきですよ」
先日も開拓部隊の1人が大怪我を負い近隣の国へ緊急搬送されたというニュースが流れたばかりだ。
知らない土地に経費で行けるからという理由でこの仕事を選んだが、まさかここまで過酷だとは思わなかった。これからの配達を思うと気が重い。私の口からは、思わずため息が零れた。
旅をするのは大好きだが命をかけてするものでもない、そういう荷物は鋼の国のサバイバルマニアたちにでもやらせればいいのに、と思ってしまう。
「なぁに言ってるのぉ?シャルちゃんはもうベテランよぉ後輩ちゃんの育成も頑張ってくれてたしねぇ」
確かに私は新人の育成を任されていたが、私の指導がダメだったのか、仕事がキツすぎたからか結局ほとんどの子が辞めてしまった。ただでさえ長距離配達科は人数不足だというのに…
「ちょこぉっとだけ危ない仕事だけど、シャルちゃんなら大丈夫よ!頑張ってねぇ」
そう言うと先輩は手をひらひら手振りながら自分の仕事に戻って行った。
「はぁ、ただでさえ日数のかかる配達だし私も急ご」
そう独り言をつぶやきなから荷物と一緒に入っている『お客様の声』の紙を読む、この紙は大抵どの荷物にも着いており荷物の内容や取り扱いの細かな注意等が書かれている。
紙には〔雪の国で土地の調査・開拓を行っているお父さんへの誕生日プレゼントとしてお花を「
あんな過酷なところで家族が働いているなんて心配でしょうがないだろうに
(私だって無事に帰ってこれるかわかんないのになぁ…)
まぁとりあえず荷物さえ無事に届けられれば良しとするか。
「只今午前10時丁度、これよりシャルロッテ・ガウナ雪の国へ配達行ってまいります」
長距離配達科のフロア全体に聞こえるように声を張って自分が何時何処へ配達に行くか知らせる。これは、もし何かしらの理由で帰ってこられなかった場合の配達員を早期発見して原因を調べるための規則である。
そんな事はそうそうないが…
(私は雪の国への配達だから、数少ない行方不明者の1人になるかもだけど…)
雪の国への配達は別段珍しい事ではない、今までも今回の配達を除き13回ほど配達を行っている。だがその殆どが山のふもとの村か海辺の村といった比較的安全なところだ。
今まで行方不明になった人はの合計は5人でみな雪の国の奥地へ配達へ行った人達だ。そのうち1人はまだ見つかっていない。
気おつけてなどの私を気遣ってくれるみんなの声を聞きながら、私もそうならないように気を引き締めて配達へ向かった。
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ユリカ・シュテルンヒェン(JulikaSternchen)
常時フワフワした柔らかい雰囲気をしている。小さな星を纏った天使の輪が付いており、長距離配達科の人気者
クリーム色でセミロングの髪に黄緑色の瞳に鹿の耳が着いている。草花の国ゆり街(まち)出身。力持ち
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ブローガ社が独自開発した永久保存液(植物用)
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ブローガ社が独自開発した永久保存液(動物用)
・シュネークリスタル(Schnee Kristall)
雪の国でしか取れないとても綺麗な雪結晶この世のどの鉱物よりも固く溶けにくい。富裕層に人気の結晶
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