第1章

1話📎日常

《彩千華side》


私が“絶望”を覚えたのは

何時だったかな……


ああ、思い出した❢❢


幼稚園だ。


表面上はニコニコしているけど

内心では罵り合っている母親達。


子供の年間行事なのに

内心ではめんどくさいと

思っている父親達。


あわよくばと父兄に

言い寄る保育士。


小・中・高・専門

そして、社会人に

なった今でも

まともな人付き合いはできないでいる。


◇◇


「彩千華、ランチ行こう」


私をランチに誘ってきたのは

同期の派谷愁菜と

黒沢菜都魅だ。


二人が私を

見下しいることを知っている。


「そうだね、今日は何処に行く?」


それを知った上で

上っ面だけの付き合いをしている。


私には心の中も筒抜けだとも知らずに

言いたい放題言っている。


そして、菜都魅が

同じ部署の秋月吉隆に

好意を寄せていること知っている。


あんな、俺様でナルシストで

上司すら見下しているような奴の

何処がいいんだか

さっぱりわからない。


まぁ、心の中さえ

聴こえなければ

仕事ができるイケメンだけどね。


因みに、こいつも

私を見下しいる一人だ。


聴こえなくていいものが

嫌でも聴こえる世界を

私は生きている。


昼食後、デスクに戻っても

三人の私を見下した

心の声がずっと聴こえていた。


他に考えることはないのかね……


菜都魅は私を罵る傍らで

秋月吉隆のことを考えているが。


やっと定時になり、私は帰り支度した。


❁……❁……❁……❁……❁……❁……❁


《怜貴side》



俺は人の心が聴こえる。


二九年間、休む暇もなく

聴こえてくる

毎日辟易としている。


オフィス内で聴こえてくる

街中で聴こえるもうんざりだ……


この能力で

一番聞きたくなかった

三年前の親友だと思っていた男と

当時付き合っていた女が

俺を出し抜いて、二人で出掛ける算段を

しているとわかった時だった。


だから今、恋人はいない。


相変わらず、容姿だけで

言い寄って来る女は多い。


そして、男どもは俺に

無駄な嫉妬心を燃やしている。


そんなことを考える

暇があるなら仕事で成果を出せよ。


そうすりゃ、

女の一人や二人は寄ってくるだろうさ。


今日もうんざりしながら

自分の仕事をこなしていく。

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