アンノーン・ロンリネス

有里 ソルト

オープニング



「かくれんぼがしたい」



その一言が全ての始まりだった。


年に一度、たった一度だけ独りぼっちじゃなくなる日。

忙しい父さんと母さんが仕事を休んで、ケーキで祝ってくれた。

そして聞いたんだ、「誕生日プレゼントは何がいい?」って。


だからそう答えたんだ。


おもちゃなんかより父さんたちと一緒に遊ぶほうが、ずっと素敵なプレゼントだったから。


かくれんぼは鬼が隠れた子を探すゲームだって本で読んだ。

ずっと誰かと一緒にやってみたかったんだ。


そして今は父さんが鬼だ。



父さんの――いや、鬼の足音が聞こえてくる。

音が大きくなるにつれて、心臓の鼓動も速くなる。



見つかったら何て言おうかな?

やっぱり「見つかっちゃった」かな?



見つかったら負けなのに、早く見つけてほしくてたまらない。

笑っちゃいけないのに何故か顔が笑っちゃう。


聞こえていた足音が止まる。






そして――クローゼットの扉が開いた。

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