29.山の中に男がひとり

 大自然の中に立つと、ちっぽけな自分を感じる。

 この広い世界の中で、自分がたった独りになってしまったかのような孤独感。

 おうい、と呼んでみても山彦さえも返ってこない。

 千也は深く息を吐いた。

 そして、大きく吸って向こう岸へ聞こえるように大声を出す。

「瞳ーやっぱり一人じゃ渡れないから戻ってきてー」

 千也のつり橋リベンジは失敗に終わった。

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