7.取り返しのつかない失態

「千也さんはどうして日本で下宿したくなったの?」

 ふと疑問に思ったことを、瞳は千也に訊いてみた。

「あー話せば長いんだけど、実はうちの両親駆け落ちしてさあ」

「駆け落ち?」

「日本に留学してた第一王位継承者の親父が、日本人のお袋と駆け落ちしてさ、行方不明になったんだよ。爺さんが退位したんでネモカルアの連中が親父を探して、見つけ出した頃にはもうオレと一也が生まれてて、あ、一也ってのは双子の弟で今のネモカルアの王様な。で、仕方ないから次の王の親父と世継ぎの一也が連れ帰えられて、オレとお袋はずっと日本にいたんだ。んで、十五の時、一也が即位したもんでオレも影武者として呼び寄せられて、最近になってようやくお袋も王国に来てやっと三人で暮らせるようになったわけ。でもさ、一也は日本のこと何にも知らないだろ。だから、日本に下宿でもしたらって言ったんだ。そしたらあいつ『それなら千也兄さんが久しぶりに里帰りしたらいいですよ』って言っていろいろ手配してくれて現在に至るわけだ」

 瞳は千也の話を反芻した。

「つまり、千也さんは王様である弟の一也さんに日本の暮らしを見せたかったわけね」

「そう」

「なのに何で千也さんがここにいるの?」

「……何でだろうな」

 二人の間に少し冷たい風が流れた。

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