5.ほう、それが正体か

「前から思ってたんだけど」

 朝の仕度をする瞳に千也は声をかけた。

「瞳ってさあ、別に働かなくても暮らしていけるんじゃない?」

 千也を預かっていることで、彼の国から多額の下宿料が渡されているはずだ。

 ざっと換算して、節約して暮らせば一生働かなくていいほどの。

「何馬鹿なこと言ってんのよ」

 腕時計をはめながら瞳は言う。

「突然仕事止めたりしたら不自然でしょ。それに、いくらお金があるからって働かないでいたら噂になって、大金を持ってることがばれるじゃない。血の繋がってない親戚と会うのは嫌よ」

 それに、と瞳は付け足す。

「お金はいくらあっても足りないのよ」

 慌しく出かけていく瞳を千也は見送った。

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