赤ずきん編

第71話

「名無しさん。私、ショッピングモールに行く。」

「……下里町のやつか?」

「上里町の。」


 頭を押さえる名無しに、友里は言い切る。

 昼下がりの図書館。そこの二階で地図を広げながら、二人は話し合う。


 名無しはポツリと質問する。


「計画は決まっているのか?」

「ええ。これ、見て。」


 友里は三枚の紙を名無しの方へと滑らした。

 名無しはそれに目を通す。


「計画書か。もっと書いてくるものだと思っていたが……。」

「沢山書くのは無能の証。必要なことを必要な分だけ書けばそれで十分。」


 友里は短く言うと、机の上に積まれた本の一冊を広げる。表紙には『吸血鬼の身体』の文字。

 パラパラと本をめくり、内容を頭のノートへと書き込んでいく。


 数分後、計画書を読み終えた名無しが、紙を机に置き口を開く。


「悪くないな。吸血鬼の身体能力を甘く見すぎず、自身の痕跡をできるだけ残そうとしない。」

「名無しさんはどうする?」

「まだ俺にメリットがないからな。積極的にお前の計画に乗る気はない。」


 友里の軽い質問に、名無しは淡々と答える。友里は少しだけ残念そうに「そう」と答えた。


 開いた本をそっと閉じ、友里は口を開く。


「多分、で名無しさんは。」

「……一体、どういう事だ?」


 顔をひきつらせて質問する名無しに、友里は曖昧に微笑むと、図書館から出ていく。



 一週間後、法案改正により『混血ABに対する血液配給量の改定』が可決賛成され、混血Aは二週間に一回、混血Bは四日に一回の血液配給となった。


 それに対し、混血の人間たちは何度も反対活動を行った。しかし、それが受け入れられることはなく。

 結果として、吸血鬼へと合流していく混血の人間が増えていった。


 ◇◆◇


 雨の日の夜。閉館直前の図書館で、友里と名無しは顔を合わせた。


 気のせいか顔色の悪い名無しに、友里は言う。


「名無しさん。手を組みましょう。。」

「……良いだろう。組もう。だが、守ってほしいことがある。」


 名無しは、ややぐったりとしながら、用件を言う。

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