第59話
『今朝、下里町の空き家で、女の吸血鬼の死体が発見されました。異様な量の血液が現場に残されていたことから吸血鬼の共喰いと見られ、捜査されています』
テレビから、そんな音が聞こえてくる。
友里は、朝ごはんのトマトサラダを口の中に詰め込みながらテレビの画面を眺める。
トマトの爽やかな酸味と、ドレッシングの香ばしいゴマの香りが口の中に広がるのを楽しみながら友里は画面に映っている建物を思い出す。
_____あれは確か、この家から1キロ位のところにある空き家。
キャベツのしゃきしゃきな歯ごたえを飲み込み、焼きたての食パンに歯形をつける。
友里の脳裏には既に空き家までの詳細な地図が描かれていた。
ふと、台所で料理をしていた叔母の由紀子がフライパンを持ったまま、友里に声をかけた。
「友里ちゃん、今日は学校、お休みみたいよ。」
「……吸血鬼が近所で見つかったからですか?」
「ええ。さっき、ニュースでやっていたわね。」
微妙に食い違った会話をしながら、由紀子は、フライパンでこんがりと焼いたカリカリベーコンを友里達の皿の上に置いていく。
「全く、ぶっそーな世の中よね。」
友里はそれを一度だけ見たことがあるが、どうやら英単語とその日本語訳が書かれているらしい。
新聞を読んでいた叔父の俊彦は、ため息をついて、美穂に注意する。
「トマトも食べなさい。」
「美味しくないじゃん!」
友里は、そんなやり取りを眺めていた。
◇◆◇
やることのない友里は、図書館へと出掛けるため、荷物を整える。
持っていくものは、先日借りた5冊の本と図書カードの入った小さな財布、そして、携帯電話。
それらを美穂から譲ってもらったリュックサックの中に詰め込むと、リビングの掃除をしていた由紀子に声をかける。
「図書館、行ってきます。」
「うん?ああ。気をつけて行ってきてね。」
友里は由紀子の声を聞くと、玄関の靴をはき、外へと出ていった。
◇◆◇
暫く本を読んでいた友里は、近くで音を聴き、顔を上げる。
「_____さん?ああ!やっぱり、友里さんだ!」
「……光國、図書館では静かに。」
「はいっ!!」
光國は歯切れよく返事をする。
返事の声が、図書館にこだました。
友里は、思わずため息をついた。
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