第4話
東北の長い冬が終わる。
天気予報から雪マークが無くなって、車の冬用タイヤを夏用タイヤに交換する。
この時ようやく完全に、冬から春に変わったような気になる。
六月の第二週目、私は初対面の男の人とお酒を飲んでいた。
いつまでもライブハウスに入り浸って浮いた話の無い私を心配した先輩が話を持ってきた。
男でも女でも、話したり遊んでみなくちゃ性格や本性は解らない。早速会ってみた。
お酒を飲んだ後は、お互い一人で帰って行った。その後何度か遊んでみたが、しっくり来ないので、会うのをやめた。
同僚から、菊池さんが結婚した事を聞いた。私が初対面の男の人とお酒を飲んでいたあの六月の第二週に、入籍したらしい。
ある日職場で、ライブハウス仲間に会った。同じ会社にいるのは知っていたけれど、社内で会うのは珍しいのでちょっとテンションが上がった。
菊池さんがこっちに向かって来るのが見えた。結婚おめでとうと、一言云っておこうと思い声をかけた。
同僚から聞いたよ、とは云わなかった。こういうのって、自分から報告しなかったのを気まずいと思う人もいるだろうから。変に気を遣わせたくないし、遣いたくないし。
菊池さんは一言、ありがとうとだけ云い、すぐに話題を逸らせた。
「さっき話してた男の人、知り合いだったの?」何だか意表をつかれた。
意外な発言だったので表情が間に合わなくて、素っ気なくそうなの、と云ってしまった。付けたしのように、彼とはライブハウスで知り合ったと説明した。
何だか空気がぎくしゃくしている気がした。後は仕事の話にして、いつもの空気に戻そうとした。
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