レール

勝利だギューちゃん

第1話

「私と君は、互いに大切な存在・・・

でも、交わってはいけない・・・

例えば、列車の一組のレールのようなもの・・・

近づいても、離れもいけない・・・

絶えず、同じ距離を保ってないと、大惨事を招く。

それが、私と君との関係・・・」


彼女からの手紙は、それだけが記されていた・・・


それが何を意味するのかは、すぐにわかった・・・

怖かったのだろう・・・

僕も彼女も・・・

互いの関係が崩れるのが・・・


「ねえ、どうして花は咲くのかわかる?」

「どうして、海の水はしょっぱいかわかる?」

「どうして、地球が周るのかわかる?」

彼女の言葉が、脳裏をよぎる・・・


「全て、解明されているよね・・・」

人類は、色々な事に疑問を抱いた。

しかし、疑問をもっただけで、誰も解明しようとしなかった。

物好きな誰かが調べたからこそ、人類は色々な知識を得た。


「でも、それはある意味、不幸でもあるわね・・・

世の中、謎のままでおいていた方が、よかったこともあるわね・・・」

確かにそうだ・・・知らないほうが、幸せなこともある。


「いつか、君に訊いたことあるよね?

『どうして、私に声をかけてくれないのか?』って・・・」

確かにそうだ・・・彼女とはよく会話をした・・・

でも、いつも話かけてくるのは、彼女からで。僕からは一度もない。


「でも、君は答えてくれなかった。正直、悲しかったよ・・・」

答えは簡単だ。

彼女は他の人といつも楽しそうに、談笑している。

僕が、しゃしゃりこんでは行けないだろう・・・

だから、自分からは距離を置いた。


「でも、それでも良かった。

私が声をかけた時は、君は無視することなく、話してくれる。

それがとても、嬉しかった。」

確かに、僕は彼女から声をかけてくてくれるのを、待っていた。

そして、それが嬉しかった。


「あなたは今、ターミナル駅の前に立っているわ」

ターミナル駅の情景が、浮かんでくる。


「この駅は、始発駅。

毎日、さまざまな場所へ向かう、列車が運行されるわ・・・」

複数のホームに、いろいろな列車が止まっている。


「どの列車に乗るかは、君次第。

私は、一緒には行けない。

さあ、どれにのる?」

言われるまでもない。

乗る列車は、決めている。

僕は、ひとつの列車に飛び乗った。


「この列車は、君のこれからの人生。

君には、これからいろいろなことが待ち受けている。

でもそれは、生ある証拠」

その瞬間、列車のドアが閉まり、走り出した。


「列車を支えるには、レールが必要。

一本は君、でも一本では無理。

もう一本必要。その一本は私・・・」

車窓を見ると、彼女の笑顔が浮かんだ・・・


「この列車を走らせるために、私が君の力になる。

方向転換する時も、駅を通過する時も、いつも一緒。

君はもう、ひとりじゃないよ・・・」

列車はゆっくりと走っている。


人生の終焉という終着駅に辿り着くまで、走り続けよう・・・

僕には、大きな支えが出来たのだから・・・


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レール 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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