是々のホラー!
@gurassimiri
夢
最近、俺はとある技術を身に着けた。
明晰夢、その中の世界を自由にコントロールをする力だ。
目を背けたくなるような高校生活の現実、そこから逃避するように毎晩眠りにつく俺には最高の能力だ。
ま、能力なんてかっこつけて言ってみたが内容はというと「昔のいじめっ子に打ち勝つ」「可愛い女の子とスキンシップをとる」など下らないものだ。
いや下る。俺こそがあの世界の王、俺こそがこの世界の神なのだ。
今日も夢をみる。一日の一番の楽しみが眠ることなど隣の席にいるヤツに言ったら案の定バカにされたが、これが生き甲斐なのだ。
さて、今日はどんな夢が俺を待っているのだろうな。
今日の舞台は……なんだ学校か。通っていた中学校。ならあいつ等もいるはずだ。
教室。夢の中だ、ワープするように移動する。
……いたいた今晩のターゲット。少しフケが出るからって、毎日頭を強引にいじってきたあいつ等だ。
相手は複数人。名前と顔が一致しないようなヤツもいる。恐れることなく俺は右手をふりかざし……あれ?
右手がない。両腕がない。どうしてどうして……。
奴らが近づいてくる……やめろ、やめろ!
なーんてね。俺はすぐにその夢から離脱する術も身に着けているのだ。
目を覚ます。体は汗でびっしょりだ。やはり現実では俺はこんなものか。
ふと誰かが俺を呼んだ。誰が呼んだ?俺は一人暮らしのはずだが。
甘い声。女の子だ。おっとまだ覚めてなかったのか?
俺は迷わず近づいていく。夢だ夢。好きにさせてもらうよ。
しかし、思った通りにあるけない。視界はぼやけている。
俺の体はまるでゾンビのような姿になっていた。顔には包帯が巻かれ、体のパーツも原型をとどめていない。
女の子が逃げていく。逃げないで置いていかないで。
こんな夢、望んでいない。また離脱する。
喉が渇いた。飲み物が飲みたい。
俺はベッドからおり、一階の冷蔵庫に向かう。
ただ……どうした?体が動かない。喉の渇きはピークだ。水を水をくれ……。
這ってでもむかう。ただどうしたことか気づけばまたベットの上まで戻されている。
何度も何度も同じことを繰り返す。ループから抜け出せない。
……いつの間にか朝になっていた。俺はようやく目覚めることができたらしい。
胸糞悪い。夢のなかでくらい夢をみさせてくれよ。
朝ごはんは食べない。せめて途中のコンビニでゼリー飲料を買うくらいだ。
ふとチャイムがなる。誰だこんなあさっぱやくから。
覗いてみると、どうしたことか高校で片思いをしている娘だ。
「……おはようございます。なにかあったのかな」
「実は……最近、あなたの顔色が悪いのが気になって。大丈夫ですか……?」
ああ、なんだこの展開。これはまるで……。
「今日は一緒に登校……しません?」
話がはずむ、というより彼女のだす話題に対して相槌をうっているだけだが、彼女はそれでも楽し気に声をかけ続けてくれる。
今までおもやみだった登校もまるで……。
そうかこれも夢だな。俺にこんな幸せが来るはずない。
そして教室へ。高校にも奴らはいる。
へへっ祝砲だ。一発くらいやがれや。
目覚める。突然知らない場所に。白い部屋。夢だからな。
これも夢のはずだが……体中がいたい。
動かない。痛い。呼吸すら苦しい。意識がなくなりそうだ。
目覚める。痛みはない。動く。ただおそろしく重たい。
自分の手を見る。しわくちゃだ。また夢だ。
覚めない覚めない。現実に戻りたい。助けて助けて。
是々のホラー! @gurassimiri
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