力を持つ者達
架前@カクヨム始めました
零話『きぼう』
これは君が住んでいる惑星とは遠くかけ離れた銀河の果てにある世界のお話。
約五百年前
人は様々な種族と寄り添い平和に暮らしていた。
文明は発展途上ながらも凄まじい速度で進化していた最中、彼らに降り注ぐことになったのは神々からの知恵の贈り物ではなかった。
地上が戦場へと誘いざなわれることになる第一歩であった。
「じいさん、続きをはやく! はやく!」
「まぁ、そう急かすでない……」
町の隅にある小さな本屋、外観の白いペンキは剥がれており小さな窓には蔦が生えてるが、オレンジ色の瓦だけはキラキラと太陽に微笑んでいる。
「てかじいさん、この変な文字読めるなんてやっぱすげぇよな!」
「これがわしの力じゃからの」
白髪の老父は本を片手に、黒髪の少年に告げた。
少年は自分の背丈より少し小さい老父を不思議そうに見下ろした。
「解読能力、希少価値の高いこの能力でわしはガッポガッポじゃよ……ぐふふふ」
「なぁ、じいさんはいつごろ力を手にしたんだ?」
「はて、いつじゃったかのう……」
老父は首を傾げ、手を顎に当てる。
思い出しかのように目を見開くと話し始めた。
「十二、三歳くらいじゃったのう…?周りの子は十歳位で力を手に入れておったから、わしは力が使えないのかと思って焦ってた時に手に入ったんじゃ…!」
少年はそれを聞くと、なるほどと顎を触った。
「手に入れた力が珍しいもので、その時はわしも跳ね上がるように喜ん―――」
「じいさん、早く続きを!」
「す、すまない」
老父が開いていた本のページには、五色の騎士が描かれていた。
老父はさっきの続きから読み始めた。
約五百年前
平和に暮らしていた、地上の者達に降り掛かったのは『魔の存在』であった。
悪魔のような外見をした怪物。気性の荒い獣のような魔獣。
人とは似ても似つかないひどく醜い姿をした魔人。
禍々しいオーラと共にどこからともなく現れたそれらは、襲いかかってきたという。
地上の人々は対抗するように一丸となって闘ったのだった。
妖精族の得意とする治癒魔法でも癒せない傷や、獣人族を一瞬で砕くような攻撃を仕掛けてくる魔の者達に必死の抵抗のうえ、数を減らしたという。
そんな時に現れたのが後に『古代兵器 |神威(カムイ)』と呼ばれる、巨人であった。
手のひらで国を潰せるような敵いもしない敵に世界中は、諦めかけていた。
そんな時、五人の英雄が嘘のように『古代兵器神威』を粉々に破壊してしまったという―――
「この五人の英雄が後に伝説と呼ばれる―――」
「五大神……! 太陽神、月神、邪神、鬼神、呪神、だよな!」
「そうじゃよ」
おじいさんはそう言うと、呆れたように微笑んだ。
少年はそれだけ聞くと、じゃあなとおじいさんに告げ、本屋のドアを乱暴に開け放ち、早々と町の小道を走っていった。
「ほほ、あの子は本当にこの部分が大好きなんじゃろうなぁ……」
ある部分だけ聞かせてもらうと、例も言わずに駆けて行った少年の後ろ姿をおじいさんは、笑いながら見つめていた。
パンを運んでいたパン屋さん、武器を売り歩いていた武器屋の人、馬車に乗る準備をしていた人。
たくさんの人に当たりながら少年は駆けていく。
「おい、こらっ! そこのガキめ!」
「べろべろべー!」
少年はこの大きな町「フォータス」でも有名なくらいの、いたずら者だった。
男の者が叱れば、大事な部分を蹴り飛ばし。
女の者が怒れば、胸を揉む。
誰にも止められないいたずらっ子は、今日も駆けていくのであった。
「俺にだって炎の一つや二つ扱えるような力が眠っているはずだ!」
少年の目には希望が見えて取れるようだった。
「なぜなら、騎士団団長様が言ってたからな『努力をしたものにこそ結果がついてくる』ってね」
少年は希望を信じながら大通りを駆けていく。
五年後―――
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