オレンジピール

カゲトモ

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「私、このチョコレートはあまり好きじゃない」

「おや、サチコさんのお口には合いませんでしたか? 申し訳ございません」

 三粒乗せたチョコレートのうち、一つを口に運んでから彼女はそう言った。その表情は申し訳なさそうなものじゃなく、淡々としたものだ。

「オレンジピールは苦手なの」

「そうでしたか」

 俺はあのオレンジピールとチョコレートの苦みと甘みが絶妙にマッチしている感じが好きなんだけどな。このチョコも美味しいと思ったから店用に買ったものだ。

「マスターが好きなものなんだったらお店に置いても良いと思うし、ワインとかブランデーとかにも合うと思うし、ビターだから甘いものが苦手な人も行けると思う。ただピールが苦手な人にはダメじゃないかな。とりあえず私はあまり好きじゃない」

「申し訳ございません。次からは気を付けます」

 サチコさんがピールを嫌いだとは思わなくて。でもこっちの二つは好きなんじゃないかな? スタンダードなミルクとスイート。サチコさんは板チョコが好きだって言っていたし、シンプルな方が良いのかも。作り手さんが日本人だから口に合うように作られているしとても丁寧で滑らかだ。見た目も美しいし。

 サチコさんは一瞬考えるような表情をしてから一粒指でつまんだ。色の薄いミルクチョコだ。

「美味しい」

「それは良かったです。きっと喜んでもらえると思いましたから」

「さっきのはダメダメだったけどね」

「勉強しておきます」

 そう答えると彼女は満足そうにしてカンパリオレンジを口に運んだ。まさかオレンジピールが苦手だとは思わないじゃない。

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