第6話ゴンとグーン

「また邪魔が入ったか」


 突然、上空から声が聞こえた。


 見上げると、そこにはゴンと同じ、小さな謎生物が翼をはためかせている。こっちは体が青い。


「ね、ねぇ、あれって……」


「いくらでも邪魔してやるわよ!」


「あんたが生徒達を狙ってくる限りね」


 私のことなどそっちのけで啖呵を切る二人。


「そういうことだぜ」


 ゴン、いつの間にいたの?


「相変わらず変な日本語を話すな、ゴンよ」


「この世界で学んだ個性ってやつだぜ」


 この二匹は仲間じゃないのか。


 私だけ展開に置いてきぼりだ。


「若菜、このグーンってやつがブラウンを生み出している。早い話がこいつは元凶だぜ」


 なるほど、そもそも私はゴンのことすらよく分かっていないのだが。


「貴様らの顔は見飽きた。いい加減に失せろ」


 美奈子さんが背を向けたまま、崩れ落ちるように倒れた。


 またあの現象だ。


 再び邪悪なモヤが浮かび上がった。再びブラウンが生まれる。


 今度のブラウンは少し姿が違っていた。


 やけに刺々しくて、ウニのような形に固まる。


「いくよ、真白!ドレスアップ!」


「……ドレスアップ」


 ブラウンの出現に対して、二人も即、変身した。


 きらびやかな魔法少女の姿になった水江は、再びスマホから音楽を流す。


「だからくじけないわ~♪女の子のハート~♪」


 前から思ってたけど、この魔法少女アニメって、別に戦ったりするやつじゃないんだけど。そもそも何の意味が……。


「何度現れても、同じことよ」


 真白が巨大なハサミを構える。


「……やれ」


「グオォッ!」


 グーンの指示と同時に、ブラウンの表面にある無数のトゲが一気に


伸びた。


「若菜っち、下がってて!」


 私は思わず飛び退き影に隠れる。ゴンもそれについてきた。


 二人を見ると、ブラウンのトゲがそれぞれに数本刺さっている。


「ああっ!ちょっと、大丈夫なの!?」


「心配いらないんだぜ」


 私の脇から、ゴンがひょっこり顔を出す。


「エクスコーデは常時、全身にカガヤケルを身にまとっている。ブラウンの攻撃なんざ屁でもないぜ」


「そういうこと!アタシらはブラウンと戦うんじゃなくて、ただ『狩る』だけだよっ!」


 水江がチェーンを手にし、構える。


「姿がちょっと変わったからって、やることは変わらないわ」


 真白はハサミをくるくると回し、でかくなったハサミを、振りかぶって、投げた。


 ハサミは回転しながら次々とブラウンのトゲを切り落としていく。


「トドメはアタシねっ☆」


 水江の腕から放たれたチェーンは、ブラウンに容赦なく巻き付いた。以前にも増してチェーンは伸び、ブラウンを覆い尽くした後、締め上げる。


 やがて巻き付いたチェーンの下から、ブラウンが液体のように流れ落ちた。これで決着だ。


「はいおしまーい、ゴン、浄化を」


 ゴンが向かうと、グーンは吐き捨てるように、


「図に乗るなよ、二度と邪魔はさせん」


と言って、飛び去っていった。


「いつまでこんなこと続けるんだぜ、グーン……」


 ゴンは悲しい目をして、それを見送った。  






 





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