神に似た者
ALICe
神に似たもの
科学において、何十億年単位の先の話ではあるが、この惑星や太陽系の寿命が尽きることは確かだった。
つまり、遠い未来ではあるが、このままでは人類が絶滅することがわかっていた。
また、光年単位の星間旅行を超高速で行い一世代、いや十世代の人間の寿命の期間内で移動する手段すらも開発が不可能な事が最近わかり、移住先を探すことも叶わなかった。
そこで人々は、遠い未来での人類の存続のため、今まで禁じられていた遺伝子操作に頼った。
それは、気の遠くなるような長い時間の星間旅行に耐えうる1世代の寿命が長い人間、そして、その人間が食べるための動植物として宇宙船内での栽培飼育を想定し、近親交配を繰り返しても遺伝子異常をきたさない品種の開発に取り組んだ。
その研究と開発は長い時間をかけて続けられた。最初は寿命が150年それから200年.......500年、1000年、2000、3000......と増え続けていった。そうして開発された長生きする人間は少しづつ増えたが全人口の中で占める割合は微々たるものだった。
そして、いつしか人々は、彼らのことを長寿族と呼ぶようになった。
始めのうちは、普通の寿命の人間が世代を交代しながら長寿族への教育や知識の引き継ぎを行なっていたが、それもいつしか長寿族同士で行われるようになった。
長寿族はその長い寿命ゆえ、普通の人間より深い知性と洗練された精神性を手に入れ、いわゆる「悟り」も手に入れた。
やがて、彼らは今までの人類に、宿命を受け入れて、その時を待つ心構えを説き始めた。
もはや、普通の人類は移住先として他の惑星を探すことや、気の遠くなるような長い時間の星間旅行のことなど、どうでもよくなり、
ただただ、この惑星が滅びるその日まで、日々の生活に感謝して生きることに専念するようになっていた。
神に似た者 ALICe @kaiteki02
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