感情メガネ

@Rinarin

第1話

「沙織、なんか疲れてるんじゃない?」

 レイナにそう声をかけられて、沙織ははっと我に返った。

 レイナは細かいところに良く気づく。昔は気が強かったが、高学年になってからは何かが変わって人気者になっていた。

「沙織、私達この後アキナの家に行くけどどうする?」

 そう言ったレイナの声は、少し遠慮がちだった。この約束を自分抜きで決めたからだろう。

「私、今日眼鏡買いに行かなきゃいけないからやめとく。視力低下しちゃって」

「へえ…… なんていう眼鏡屋さんなの?」          

レイナが一瞬真剣な顔つきを見せて聞いてきたが、すぐに

「わかった。じゃあまた今度ね」

 と、みんなと一瞬に角を曲がっていった。


 眼鏡屋に着くと平日のせいか、客は沙織しかいなかった。しばらくメガネを見ていると、奥から痩せた店員が出てきて、

「お嬢さん、どんなメガネにする?」

 と言った。そして、思い出したように

「そうだ。実はね、ここだけの話、特別なサービスがあるんだよ。お嬢さん、何か悩み事を抱えているみたいだから、メガネが決まったんだったら今回はオマケでつけてあげてもいいよ」

 と、どこか不気味な表情で言った。

 沙織はそのなんとも言えない表情に押され、

「……お願いします。」

 と言った。

 しばらくすると、店員がメガネを持って現れた。

「かけてごらん」

 そう言われ、沙織は早速メガネをかけた。

 すると店員が、さっきより少し黄色く見えた。

「え?おじさん…なんか黄色いような気がする」

 そう言うと、店員は笑いながら言った。

「このメガネをかけると、人の感情を読み取ることができるんだ。おじさんは今お嬢さんが眼鏡を買ってくれて嬉しいから黄色。他にも怒ってたら赤。悲しかったら青、とかね。あっ、でもこの事は絶対言っちゃダメだよ」

 そう言った店員の目からは黒いモヤが出ていた。

「……」

 沙織は今すぐにでもこの場を離れたい一心で急いでメガネを購入した。

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