カトレア
勝利だギューちゃん
第1話
「ねえ、ひとつ訊いていい?」
「何?」
「春と夏と秋と冬、どの季節が一番好き?」
「秋」
「即答だね。どうして?」
「夏は暑いから嫌い、冬は寒いから嫌い、
春は花粉症なので嫌い。よって秋」
「わがままだね。(笑)」
「ほっとけ!そういう君は、どの季節が好き?」
「私?私も秋かな・・・」
「どうして・・・」
「それわね・・・」
他愛のない話に、花を咲かせる。
それが、老若男女にとって、変わらない、
安らぎの一時なのかもしれない・・・
友や同僚と語り合い、愚痴をこぼし合い、
酒を酌み交わし、人生を謳歌する・・・
果たして、それでいいのか・・・?
自分に自答する・・・
鏡を見てみる。
明らかに、やつれている自分がそこにいる。
(これじゃ、幸運の女神とやらも、逃げていくわな・・・)
幻覚なのか、僕の脳がいかれているのか?
時々、鏡に女の子が現れる。
歳の頃は、10代後半、僕と同世代か・・・
長い髪を、ポニーテールに束ねている。
絵に描いたような美少女だ・・・
彼女の出現率は、実に気まぐれだ。
本名は名乗ってくれない。
ただ、「カトレアと呼んで」と彼女は言う。
その日の夜、寝る前に歯磨きをしていたら、
彼女がやってきた。
「やあ、元気?久しぶりだね。」
「ああ、久しぶりだね。カトレア」
最初はとまどっていたが、今ではすっかり馴染んでしまった自分がそこにいる。
「その後、どう?」
「まあままかな・・・」
「相変わらずあいまいだね。」
カトレアは苦笑する。
「ところで、カトレア」
「何?」
「君は、何者なの?」
訊いてはならない事を、口にしている。
でも、訊かずにはいられない。
「まだ、わからないの?」
「うん」
カトレアは苦笑する・・・
「私は、君だよ」
「えっ」
カトレアの言葉に、僕は頭が混乱する。
「私は君、君は私、同じようで違う、違うようで同じ存在」
「どういうこと?」
「つまりね・・・」
カトレアの次の言葉を待つ。
「私は、君の理想像が具現化されたもの・・・
つまり、君の心の中にいる、もうひとりの君自身」
「僕は、男だよ」
「それは分かっている。私が言いたいのは、君の理想の女性像が、私ということ。
君のその想いが、私を創りだした。」
カトレアの次の言葉を待つ。
「つまり、私の本当の居場所は、君の心の中。
なので、私は君自身でもあるの・・・
君が強く願えば、私は君の前に、姿を現す事が出来る」
「カトレア、それはいつまで・・・」
「それは君次第・・・」
「えっ」
「君が、私の事を忘れなければ、いつでも会える。
逆に忘れてしまえば、もう会えない」
カトレアの告白に、僕は立ち尽くす。
「ねえ」
「何、カトレア」
「カトレアの花って、知ってる?」
「ああ、調べたよ」
「ありがとう・・・」
カトレアは、笑みを浮かべる。
「今日は会えてうれしかったよ。またね」
そういって、カトレアは消えた。
鏡には、僕の姿が映っている。
カトレアの花は、ほぼ一年中花を咲かせる。
つまり、カトレアとはいつでも会える、
もうじき秋がやってくる。
秋のカトレアは、どんな感じだろう・・・
カトレア 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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