夜もすがら君想ふ

皐月泰汰

第1話 女神との出会い『エピローグ』

ある夏の日、俺は彼女に出会った。

その日はとても暑く、俺は脱水症状でベンチに座りもう動くことが出来ないほどであった。

「何か飲まないと・・・」

何か飲まないといけないことはわかっていた。わかっていたんだけれど俺は・・・俺は動くことができなかった。

「大丈夫ですか?」

そこにある女性の声が空気を振動させ、鼓膜を揺らし脳に直接話しかけるように声が届く。

「すみません。軽い熱中症なものになりまして・・・」

俺はこれまでの経緯の要点を手早く説明する。

「動くことができないので何か水分をもらえませんか?」  

彼女は少し悩んだ顔を見せいやが結論を乱すと俺に伝える。

「お茶を持っているのでそれでいいですか?」

そして彼女は少し照れながら小さくつぶやく。

「・・・飲みかけですけど」

もちろん俺にはそのつぶやきは聞こえなかった。

『とにかく水分が欲しい』その一つのことに俺は命を懸けていたのだから。

「ありがとうございます!」

俺は出せる限りの声を出し礼を言った。その声は少し枯れていていたので『あざす!』みたいな感じに聞こえていただろう。

彼女は持っていたバッグからお茶が入ったペットボトルを取り出しキャップを開けた状態で手渡してくれた。

『優しいな』

これが彼女に抱いた第一印象だった。

俺はもらったお茶を飲み干し、少し力が戻ってきたことを確認するとポケットから財布を取り出し小銭を手に取り彼女に渡した。

「これで新しいお茶でも買ってください」      

俺は歩けるようになったので彼女に深々と頭を下げこの場を後にした。


ーーーこれが女神(彼女)との出会いだった。

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