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「普通末っ子は甘えん坊に育つのにねぇ」

「末っ子なんですか?」

「うん。上に二人、少し年の離れた男の子がいるんだよ。女の子は一人だし、てっきり甘やかされると思っていたんだけどねぇ」

 と、言うと?

「逆に連れ回されているって感じで。おままごとよりもヒーローごっこをして遊んでいたんじゃないかな」

 元気のいい小麦色の肌にショートパンツと紺色のTシャツ姿の彼女は、今度はテーブルに勉強道具を広げてもくもくと鉛筆を動かしている。男の子に連れ回されていると言ってもちゃんと誰にも言われずに勉強ができるなんて偉い子だ。

「実は娘は離婚してね、片親で三人の子供を育てているんだよ。帰って来いと言っても聞かなくて、そういう所は奥さんにそっくり。だからかな、上の二人は父親代わりもしてくれていて、一番下でも単に甘やかされて育ったわけじゃないみたい」

 ・・・凄い。

 夏目さんの話を聞いてただそれしか浮かばなかった。娘さんも二人の男の子も、そして彼女も。俺があの子達の頃とは全然違って、本当に凄いと思った。

「ふふふ」

「どうされました?」

「実はあの子がここに来るってなって、誰が一番心配しているのかと思ったら上の二人でね。母親である娘よりも先にもう着いたかって何度も連絡があって。どれだけ妹バカなんだろうと思ったね」

「そういう所は夏目さんそっくりですね」

「そうかい?」

「はい、なんとなく」

 「なんとなくかぁ」と笑って見せた夏目さん。それと同時に、ことん、と目の前に玉子サンドが置かれた。息子さんは少しだけ困ったような照れたような、そして同意したように小さく頷いて見せてくれた。

 だよね、親バカは遺伝するよね。

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