アセンション
@takapod
序
狭い空間の中でたくさんの人達がおしくらまんじゅうしているせいか息がしづらい。苦しくて仕方がない。神は何故こんな罰を私に与えるのだろうと一瞬考えてしまうほどだった。四方八方人に囲まれながら、一本の長い電車は私の意志とは関係なく、デビルスクール(悪魔の学校)へと走っていく。
約三〇分走り続けた電車が漸く停車すると、私は解放された気分で深く深呼吸をした。電車を降りようとした瞬間、後ろから強引に押し通そうとする人達がいたが不思議と怒りが湧いてこなかった。それは精神的に疲れていることが原因なのか、将又急ごうとする人達の気持ちを理解することが出来たからなのかは分からなかった。改札を出ると私は背筋をピシッと立てて歩こうとしたが、前から来る人の群れと顔を合わせたくなかったためか、自然と背筋が曲がってしまった。
私が現在、通っている大学は日本の中でもトップ三に入るほどの一流大学だったので聞いたことがないという人はほとんどいなかった。まだまだ学歴社会である日本において、この国を代表する大学に入学出来たのであれば多少辛いことがあっても卒業出来れば勝ち組だとか、不満なんてきっと何もないだろうと言われることがあるが、私にとり大学とは辛くて息苦しい場所だった。それどころか、毎朝起床するたびに早く大学を卒業したいという気持ちが湧いてくるほど嫌いだった。
一限目の授業に遅れそうだった私は駅構内で人の渦を避けるように普段より早めに歩いた。四番ホームと書かれた看板を通り過ぎると、歩行者の数が少し減り隣との空間に空きが出来たので、私は先程よりも歩幅を大きくしながらスタスタと歩いていった。
そして、エスカレーターを早々と駆け上りホームに着いたものの顔のついた銀の塊はまるで私をあざ笑うかのように過ぎ去っていってしまった。私はしばらくその後ろ姿をじっと眺めながら呆然とホームに立っていた。
—次、休んだら留年か
左右からたくさんの人が目の前を通り過ぎていく中、心臓の鼓動はトクトクといつもより早く全身に鳴り響いていた。
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