第十三話 ルスカ、復活

 時は少し遡り、アカツキと流星、ガロンの二人と一匹が森エルフのいる森が燃え盛っているのを発見した頃、ずっと高熱にうなされていたルスカが、グランツ王国の首都グランツリーの城内の一室で目を覚ました。


「はい、ルスカ様。お水です」

「すまぬのじゃ」


 イミル女王の配慮によりルスカ付きとなった侍女に、水の入ったコップを渡され、飲み干す。

熱は引いたものの、顔色は悪く覇気がない。


「すまぬが、イミルを呼んで来てくれぬか? 頼みごとがあるのじゃ」


 一介の侍女に過ぎない者に、女王を呼びつけるような無茶ぶりをお願いをされ、顔を青ざめる。

かといって、女王直々にこの見た目幼子の面倒を頼むとお願いされており、断る訳にもいかず、悩んだ侍女は自分の上司である侍女の長の中年の女性に相談をする。


「ふーっ、あなたね。何のために私がいると思っているのです。イミル女王には私から伝えておきます」


 当然の答えに、侍女は自分の馬鹿さ加減を思いしるのであった。



◇◇◇



「もう大丈夫なのですか、ルスカ様。それで、頼みと言うのは?」


 目覚めたと聞き駆けつけたイミル女王の前で、おくびも無く着替えを始めルスカ。着替えを手伝う侍女は、このまま続けていいものかとイミル女王とルスカを交互に見ながら手が震えていた。


「世話をかけたな、イミル女王。実は頼みというのは、アカツキの居場所を探るのと合流するために馬車を一台用意してほしいのじゃ」

「それなら、適任がいますわ。馬車も準備させます」


 そう言って早速と、イミル女王は手配するべく部屋を出ていく。此処に来るときに着ていた青色の短パンにTシャツと、只の幼子にしか見えない服装を着替え終えたルスカは、侍女を見る。


「お主がワシの面倒見てくれたのじゃな。礼を言うのじゃ。何かしてやりたいが望みはあるか?」

「そ、そんな事いいだ! うちは女王様からの言い付けを守っただけで……」


 訛りの強い言葉遣いで侍女はルスカに向かって首を横に振る。とはいえ、ルスカとしてもなにもしないでは、あとからアカツキからお尻をペンペンされかねない為、容易く引くわけにもいかない。

更に強めに望みがないか追及すると、侍女は困った顔をしながら一つ望みというより気になる事を伝える。


「なにぃ! アカツキに会いたいじゃと!? アカツキはワシのものじゃ、誰にもやらんぞ。いい度胸しておるな、お主」

「ち、違うだ。単に興味が湧いただけだ。ずっとルスカ様が『アカツキ~、アカツキ~』ってうなされながら言っていただか、どんな人か気になっただ」


 そばかすのある鼻の上まで真っ赤になりながら侍女は、断固否定する。

ルスカも寝言とはいえ、アカツキの名を出していたのかと少し照れ臭そうにしていた。


「わ、わかったのじゃ。ならばワシに付いて来い。ワシから女王に口添えしておくのじゃ」

「は、ハイだ!」

「そういや名前まだ聞いていなかったの。なんと言うんじゃ?」

「うちはキャシャリン・クロード・ミラルージュ・ファインブルク・ドッペン・サイ──」

「待て待て待つのじゃ。長い! 長いのじゃ! なんじゃワシをからかっておるのか?」

「うちの家系は代々先人の名前をくっつけるという習慣があるだ。皆からは長いのでキャシーと呼ばれてるだ」

「キャシー……うむ。キャシーでいいのじゃ。それじゃちょっとイミル女王に会ってくるかの」


 ルスカは、キャシーを部屋に残して勝手知ったる城の中を歩きイミル女王の元へと向かった。



◇◇◇



 キャシーも同行を許され、部屋で退屈そうに足をプラプラとさせてベッドに座っていたルスカの元に部屋の扉がノックされる。


「どうぞ、開いてるだ」

「よう。ルスカサマ、ひっさしぶりやなぁ!」


 扉を開いて入って来たのは、ルスカも知った顔であった。ヨミーと同じようなルスカには奇っ怪に感じる関西弁。ここ、グランツリーで商人として生計を立てていたタツロウであった。

ルスカの回復薬を元に一旗上げた彼は、今やグランツリーでも有数の商人となっており、現れた姿も以前と違い漢字の八の字のような髭を蓄えている。


「なんじゃ、その髭は? 似合わんの」

「いやぁ、貫禄つける為に生やしたんやけど、似合わんか──あっ、落ちた」

「付け髭か。ええい、何かイラッとするから外しておけ。それで、何の用じゃ?」


 落ちた付け髭を拾いポケットへ無造作に突っ込んだタツロウは、近くにあった椅子に腰を降ろして、話を切り出す。


「女王様に頼まれてな。俺が馬車を出すことになってん。いや、忙しいで。ごっつう忙しい。けどルスカサマと聞いたら出さんわけにはいかんやろ」

「そ、そうか。助かるのじゃ。それとアカツキの居場所なんじゃが……」

「そっちも問題あらへん。曽我のスキル“通紙”で色々事情を聞いとる。何せ俺も日本人やからな。あのスキルは日本語やないとわからへんし」


 タツロウは、任せろと言わんばかりに親指を立ててサムズアップの構えをするが、この世界の住人のルスカには、その意味がわかっていないようであった。


「今、アカツキはレイン自治領に戻ろうとしてる。なんでも森エルフの森が焼き払われて助けた森エルフの身柄を預ける為みたいや。曽我と三田村も魔石っつゅうのを探してファーマーまで旅に行ってたそうや。このグランツリーで合流しようって言ってたわ。それでな、ちょっと不安なこともあったそうや」


 アルステル領の惨劇、森エルフの住み処を急襲した者がいるとタツロウは、カホから聞いた話をルスカにも伝えた。


「でもな、そんな急に現れて急に消えるなんて出来るもんなんか?」

「転移の魔法じゃな……ワシが昔レイン帝国に教えたお主らを転移させてきた魔法と類似のものじゃ。しかし、集団転移か……恐らく魔法ではないのじゃ」

「魔法でなく、そんなん出来るって言ったら……もしやスキルか!? となると、俺達と同じ転移者!?」


 神妙な面持ちでルスカは、コクリと頷いた。


 

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