7月28日 午後3時05分 官邸
官房長と副総理の半分用済みを食らった形の鷺野は"ふてき"な表情を浮かべながら山川のところへ戻ってきた。
「納税者と国民主権国家の国民として言うべきことは言ってきましたよ」
と山川にほざく。
「お前に何ができるんだ?」
と山川。老いたレンジャー隊員に何ができるんだ?と鷺野は訊きたいぐらいだが多少のリスペクトを見せて黙っている。
そこへ、名もなき官邸付きの官僚がよくある固定電話を持ってきた。
「ひかり電話なので、練馬に通話可能です」
「どうもありがとうございます」
下のものは優しい鷺野だが、さっきの二人に比べてというだけでどこから出向しているのかわからないが彼でも国家公務員だ。
「第一普通科連隊にかけるのか?」
「実家にでもかけると思いましたか?」
「貴様ならやりかねん」
鷺野はプッシュボタンを適当に押し、
「ああ、練馬の第一連隊の
<そうですが、、現在連隊の全隊員は待機命令を受けておりまして、あいにく動けません>
「知ってます。第505特殊電算小隊の鷺野です」
<えっ?ごーまるーご?505?隷下にそんな小隊がありましたかね?>
「あります。今年度4月より発足運用開始です」
鷺野の声が大きくなる。
「完全に忘れられとるじゃないか」
と山川が笑いながら混ぜっ返す。
「あの駐屯地の西端の西館の4階に、」
<ああ、あの物置き>
「あなたね、名前を尋ねますよ、本官の曹長でしょ、書面で本官の幹部に正式に報告しますから。国家の喫緊です。至急つないでください」
<はいはい>
もれ聞こえるらしく、山川はこれほど愉快なものはないという顔で鷺野を見る。
<ドタドタ、バタバタ、おい西館へ行け、佐藤、そっちじゃない>
とか小さくもれ聞こえる。
「えらく、時間がかかっとるじゃないか?国家の喫緊なんだろう?」
今度は山川が嫌味を言う番だ。
「この不手際の全部責任は第一連隊の本官にあります」
やうやうあって、ゼイゼイ息をする声が受話器からもれ。
<御電話かわりました。佐竹三曹であります>
「ああ、たけちゃん?、まず、電話番してた曹長の名前確認して、」
<今ですか?>
「社会の半分は報復と復讐で出来ている。かかれ」
間があり、
<彦坂曹長であります>
「了解、たけちゃん、官房長官から直接我々に命が下った。第505特殊電算小隊、全員出動。同小隊の
<マジっすか、信号機止まってるとかで駐屯地の前の通りも大渋滞ですよ>
「たけちゃん、先日ホーム・センターから納品した17式二輪運搬用軽車両<ババン>一号車と二号車があるだろう」
<あのママチャリで、、>
「渋滞だろ歩道を使いたまえ、君と
<あの、89式は、今連隊でも連隊長が腹切る覚悟で実弾配るとか、これクーデターになるとか幹部同士で本気で揉めてまして、、、>
「ああ、ライフルは要らないよ、戦闘用の装備全部、ああ水筒ぐらいは居るかな、ああ、そうでもないか」
<先月届いた、あのちっこいラップ・トップもですか?>
「たけちゃん、あれは18式だ。正式名で呼称したまえ。全装備と言っただろ、それより、これは重要事項だから全小隊員に達す。17式運搬用軽車両運用に至っては立ちこぎを要す。佐竹三曹、直ちに復唱!」
<はい、復唱します。佐竹三曹と
「了解。交通安全には気をつけるように、事故って到着しなければ意味がないから」
<了解>
電話はきちんと切られた。
「おい鷺野、たけちゃんとなんとかあかねが来るのか?」
「そのとおりです。陸将補、この機に全兵力を投入します」
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