とあるアップローダーにうpされた、.txt 1

 この文章を誰かが読んでいるときには、もう僕はこの世にいないでしょう。

 

 今は、払暁。

 夜明け。

 世界が青くなる時。

 僕の気持ちもブルー、青です。

 

 場所は埼玉県どこか、場所を書くことに意味がありません。


 どうせ事が始まれば全部すぐにわかることだから。


 今、この文章を軽自動車の座席に座って、コンビニで買った500ccの自社ブランドのサイダーを飲みながらラップ・トップPCで打ち込んでいます。充電はたっぷり。給水もたっぷり。

 生先おいさき、考える必要がないのに、コンビニでは安いのを買っちゃう。

 小市民って怖いね。


 一晩中かかって作業してた。

 でも、思ったより早く終わったけど疲れた。

 変な文章でごめんなさい。

 最近は自分の精神をきちっと保つことがうまく出来ないから。

 病院で処方される薬って、もうアッパー系なのか心を落ち着かせるダウン系なのかわかんなくなってるから、何がどれだけ効いて、どれだけ耐性ができてるかも。

 先生に怒られたのに嘘ついて心療内科を二重三重受診してるから。

 ほぼ、引きこもって寝たきりだったけど、だけど、あれだけ、動くと久しぶりにお腹減った。

 一番高いコンビニ弁当でも食べよう。


 あの事故以来、妹の人生は壊れ、私の家族は壊れました。

 たった一瞬の出来事で、普通の人生、日常ってなくなっちゃうですね。

 

 本当に怖い。

 

 怖くて、世界をまともに見れなくなりました。


 妹とは仲良かったわけでもないけど、悪くもなかった、ごく普通の兄妹でした。

 守ってやったこともあったし、喧嘩したことも数多く。

 思い出一つ一つがいとおしくて、懐かしくて、そして悲しい。

 どうして、こんなに悲しいんだろう。


 最初、病院に駆けつけてガラス越しに頭を剃られ管だらけの妹を見たときは、言葉が出なくて、全身の毛が逆立ちました。

 父だけが、先生も嫌がるぐらい先生に詰問し、母は人目もはばからず病院の廊下で大声で泣いていました。

 あの頃はあまりにショックでしばらく、時間の感覚が記憶がないな。

 ただ、次の日の朝だったか、二三日後だったか、ぼーっとしながら日常はきっちりしなくっちゃとか行って会社行って、ミス連発して上司に『すぐ休暇取りなさい』って優しく厳しく言われたのだけは覚えてる。

 

 そっから記憶が飛んで、妹が退院してきたところへ飛ぶ。

 妹が退院する日、僕は休暇をとってアパートから実家へ帰った。

 妹は見た目は髪の毛も伸びて、見た目はずいぶん良くなっていたけど、半身が麻痺したままだった。

 原題の医療ってすごいなぁとも、思ったけど、父がタクシーから抱いて妹を家に入れたときは、これじゃ治ってないじゃんって日本の医療システム全体に怒りを感じた。

 鉄道会社に対して持った怒り以上に、なぜか厚生省とか、医療システムに対して思った。

 僕も健康保険料は払っている、ちゃんと妹を直せよって。


 もちろん妹の地獄はあの事故から始まったのかもしれないけど、ここから家族は壊れていった、確実に、音を立てて。

 実家は妹用に改築されていた。

 父は自慢げにいくらいくら掛かったとか最初言っていたが、そんなことを言ってたなんてあとから考えると、信じられない。

 母は妹の看護、介護につきっきりになった。

 僕は、実家からは独立していたけど、今頃、妹の世話のあれをしているときだなとか、シンクロするようにもなった。

 でも、実家に帰るたびに、少しづつ家が荒れていくのがわかった。

 日に焼け変色したびっくりするぐらい前の芳香剤が置いてあったり、信じられないぐらい前に賞味期限が過ぎた調味料が冷蔵庫にあったり。

 父は妹を見るのが本当に辛いらしく、いつも哀れで貧弱な庭を見ていた。

 それか、新聞と被害者の会が出している裁判の進捗状況のメールを何度も。

 しかし、それは僕も同じだった。妹から逃げていた。本人が言うのだから間違いない。

 

 ある時、僕も妹のリハビリに付き合った。というか、送迎に手を貸しただけだ。

 の、つもりだった。

 そして、軽自動車の中で待つつもりだった。

 しかし、トイレに行きたく成って病院の中に入ってしまった。

 リハビリで行われていたのは、、、、もちろん妹の為に行われているのはわかっていたが、、、、、。


 妹は泣き叫んでいた。本当に泣き叫んでいた。心の底から泣き叫んでいた。理学療法士の人も僕に露骨に愚痴った。


「妹さん自身がもっと真剣に取り組んでくれないと」


 僕には、この理学療法士がだめな人なのか、妹が拒絶しているのかわからなかったが、僕は、妹を抱きかかえると、軽自動車に向かった。

 この一件もこの辺しか記憶がない。

 口や舌が人間の半身のどっちにあたるのか僕は知らない。

 妹は、車の中ではっきりとした声で言った。 

 

「お兄ちゃん、私を殺して」


 と。


 その時、僕は誓った。


 この社会をぶっ壊して、やると。

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