第三十五話 尋問

 床に寝かされているのは、俺が捕縛した奴らのようだ。

 リーヌス・フォン・ルットマンらしき奴も居る。よく見ると、ゴミどもは、目隠しをされている。


 さて、尋問八つ当たりを始める事にしよう。


 ラウレンツ殿にお願いして、椅子を二つ持ってきてもらう。床に転がっているゴミどもが何か言っているが、面倒なので、腹を蹴飛ばして黙らせる。


 さて、まず適当なやつからやっていくか!

「おい」


 手近にいた奴の首を持って、椅子に座らせる。

「おい。お前。名前は?」

「な・・・なんだ。俺は」


 刀を抜いて、首筋にあてる。そのまま、耳を切り飛ばす。


「質問にだけ答えろ。俺は、お前の命に興味のかけらもない。いいか、考えて臭い口を開け、”お前の名前は?”」

「え・・・ぎゃっぁぁ、痛えぇぇぇ」


 名無しの権兵衛は、何か抗議の声をあげているが、まだ5個もゴミが残っている。

 反対側の耳を切り飛ばしてもいいが、聞こえなくなっては困る。足の甲に、刀を落とす。


「煩い。黙れ。それとも、二度と喋れなくして欲しいか?」


「助けてくれよ。俺を助けてくれれば」

「はぁお前はもういい。バカと話をしても疲れるだけだからな」

「それじゃ」

「あぁもう死んでくれ!」

「うわぁぁあぁぁ、助けてくれ」


 刀の柄で、頭を殴り飛ばす。

 床に、何かが叩きつけられた音がして、うずくまったが出来上がった。その音を聞いて、他の5人が一斉に喋りだす。


”水の精霊よ。我アルノルトが命じる。1の魔力で、水で床を濡らせ”


 聞こえるか聞こえない位の声で、魔法を発動する。

 ただの水だが、見えていない5人は、何かと勘違いしたのかも知れない。


 床が水浸しになる。これで、電流でも流したら面白い事になりそうだな。


「さて、誰が、俺の質問に答えてくれる?」


 誰一人声をあげない。


「一人だけ毛色が違う者が居るな。そいつ以外なら殺しても問題ないよな?」


 監視している連中に向けての言葉だったが、転がっている連中が騒ぎ出す。なんで、”俺が、お前たちを生かしておく”と、思っているのかがわからない。


「さて、誰から死んでもらおうか?」


 何もしていないが、面倒に感じてくる。

 どうせ、下っ端は、リーヌス・フォン・ルットマンに言われたというだろうし、本人が何を言うのかわからないが、裏事情なんて知らないのだろう。


 一人、一人尋問するのも面倒だな。

「今から、3つの質問をする。俺を満足させられた者だけ助ける」


 1.ルットマン子爵家が雇った冒険者の素性は?

 2.ライムバッハ家の予定を教えたのは?

 3.クラーラたちとの関係は?


「今から10数える。しっかり考えろよ。10数え終わったら、一人”達磨”になってもらう」

「1」「2」「3」


「おい!俺を」


「4」「5」「6」


「俺を無視するな!アルノルト・フォン・ライムバッハ!」


「7」「8」


「何でも話す。助けてくれ!」


「9」「10!」


 さっき転がしたやつとは別の男を、椅子に座らせる。


「残念だったな。誰も、俺の質問に答えてくれなかったから、まずはお前の両手、両足をもらう。あぁ大丈夫、すぐに止血するから、死ぬことはないはずだ、そのあとは、娼館に鉄貨1枚で売ってやるから安心しろ!」


「やめろ・・・。止めてくれ、俺は、ルットマンに雇われただけだ・・・本当だ!何も知らない。だから、助けてくれ!」


「まずは、右腕!」

「ぎゃぁぁぁ!痛てぇぇぇ。俺の俺のみぎうでぇぇ!」

「うるさいよ!次は、左腕がいいだろうな。それとも、舌でも切るか?あぁそれじゃ、悲鳴が聞けないか・・・」

「なぁなぁたすけてくれよ。俺も元とは言え」「質問以外の事をしゃべるな!お前たちは、俺の大切な者を奪った。簡単に死ねると思うなよ!」


「左足」

「辞めてくれ・・・なぁたすけて・・」

「右足!」

「ぎゃぁぁ俺が何を・・」


 宣言通り、一人目の両手両足を切り落とした。


「マナベ様」


 書記官を名乗っていた男が声をかけてくる。


「なんだ?」

「いえ、そのものはどうしますか?」


 ちらっと外を見る。少し暗くなってきている上に、部屋の臭気もひどい状態になっている。


「そうだな。鉄貨1枚程度の価値しかないだろうが、娼館にでも売ってくれ、もし買い手が居ない時には、どっかのダンジョンでもいいし、集落でもいいから、ゴブリンやオークの奴らにくれてやって、喜んでもらっていくだろうからな。どっかの村に渡して、魔物が襲ってきた時の盾にしてもいいだろうな」


「かしこまりました。その様に、伝えます。腕や足は?」

「あぁ他の5人の餌にでもしておけばいい。どうせ、獣程度の知恵しかないのだから、共食いでもさせておけばいい」


 俺と書記官は、部屋から出る。

 疲れては居ないが、気にしだすと、匂いがひどい状態だと気がつく、そのまま、5人は縛られたまま床に転がしておく。


「しばらくしたらまた来る。楽しみにしておいて欲しい。それと、ゆっくり話し合って、俺の質問に答えられるようにしといてくれよ」


 何か、ゴミルットマンが喚いていたが無視して扉を締める。

 まだ心を折るには時間がかかりそうだな。


 部屋から出たら、イーヴォさんが待っていた。

 今わかっている事を話してくれると言うことだ。


 ヘルムート殿の部屋で、今後の事を含めて話をした。手足を切断した元冒険者は、すぐに男娼に買い手が見つかるだろうと言われた。やはり需要があるようだ。気が付かなかったが、一人女性も含まれているようだ。


 尋問は不定期にやったほうが効果が高い。

 あと、5人。どうせ大した事は聞き出せないのだろう。次は、約1時間後に尋問を再開すると決めた。イーヴォさんにお願いして、切れ味が悪い剣を数本用意してもらった。


「アル。これでいいのか?本当になまくらだぞ」

「ありがとうございます。構いませんよ。実戦で使うわけでは無いですからね」

「・・・そういう事か・・・。えげつない事考えるよな」

「そうですか?俺の剣だと切れ味が良すぎますからね。簡単に切れてしまうのもいいですが、話す前に、壊れてしまうのは困りますからね」

「そう思う事にしておくよ」


 さて、次の尋問に行きますか!


「さて、いろいろ思い出しましたか?」


 部屋に入るなり聞いたが、ゴミはやはりゴミだな。自分たちの立場がまだわかっていない。

 いや、違うな二人ほど、泣き叫ぶばかりで、何を言っているのかわからない様になっている。監視員に言って、椅子をもうひとつ持ってこさせる。心が壊れかけている二人を座らせる。


「二人に座ってもらったが、あぁ残りは気にしなくていい。そのまま、思い出したら話してくれ」


 座らせた二人を観察したが、もうだめかもしれない。

 一人は、何かブツブツ言っているだけだ、”俺は悪くない。雇われただけだ。ルットマンに騙された”を繰り返しているだけだ。


 もうひとりも、確実に心が死んでいるようだ。

 穴という穴から出てはいけないものがタレ流れている。座らせたが、これじゃ尋問も意味が無いようだし、拷問しても何もならないのだろう。自分の幸せだと思う世界に旅立ってしまっている。

 薬やポーションの実験台くらいにはなるのか?それとも殺してしまったほうがいいか?


 まだ、心が壊れていない3人に目を向ける。ルットマンはまだ大丈夫なようだが、身体を小刻みに揺らしているから、そう長くは持たないだろう

 今は、俺への復讐心で持っているのかもしれない。


 さて、心が壊れた二人を、殴り飛ばしても、なんにもならない事はわかっている。

 監視員に言って、連れ出してもらう。これで、残りは3人。


 本命を尋問八つ当たりするか?

 本命のルットマン以外の二人を椅子に座らせる。


 まだ、比較的心が壊れていないのだろう。目に力が残されている。”死んだような目”と、いうことがあるが、そんな輩は、銀行システムの統合や医療費改定の時によく見ていた。まだまだそこには至っていない。


 二人の枷を外す。なまくらな剣を目の前に投げる。


「二人には、ルットマンの尋問を手伝ってもらう。うまくできたほうの一人は、少なくても死罪にならないように手配しよう。どうだ?やるか?剣を持って、俺に切りかかってきてもらっても構わないが、その時には、覚悟を決めてからにしてくて、命乞いをさせる時間を与えられそうに無いからな」

「ふざ・・」


 男がなにやら言ったが、刀を抜いて、喉に突きつける。


「言葉使いには注意して欲しい、俺には、お前たちは、道に生えている草よりもどうでもいい存在なのだから」

「・・・わかった」

「それで、わたしは何をすれば助けてくれる?身体か?」


「馬鹿か?お前の身体なんかいらねぇよ。汚い!」


 女の腹を蹴る。

 女の顔が、苦痛で歪む。それなりの容姿で、今までそうやってきたのだろう。手加減していると言っても、弱っている身体には、効くのだろう。しばらく、腹を抱えていた。


「俺が、言った事だけに答えろと教えたよな?お前たちは馬鹿か?あぁ悪い悪い。バカじゃなけれれば、そんなクズの儲け話に乗ったりしないな」


 二人は、沈黙で答えながら、落ちている剣を拾う。


「それで、ルットマンを切れ!あぁ殺した方が負けだからな。かなり弱っているからな。簡単に死んでしまうだろうけどな。ルットマン。最後だ何かいいたい事はあるか?」


「ライムバッハ!俺を早く開放しろ!命だけは助けて」


 頭を踏む。


「馬鹿かお前は、お前は、今から、お前が雇って、人生を狂わされた二人に刻まれる。死ぬまでな。死にたくなかったら、俺が望んでいる事を全部話せ!」


「だれが、お前なぞに」

「それがお前の答えだな。残念だよ。リーヌス・フォン・ルットマン元子爵。今は、ルットマン子爵家も無くなったから、心置きなく死んでくれ!」


 二人を見て、「やれ。やらなければ、お前たちは助からない」


 二人は、交互に、ルットマンになまくらの剣を振るっている。

 ここからは、別の人間にルットマンの尋問を引き継がせる事になった。ヘルムート殿からの要請だという事だ。


 俺としても、ルットマンの末路までは興味がない。実行犯の一部を切った所で、気持ちが晴れない。

 やはり、本当に裏で”絵を描いた”人間に、地獄を見せなければ気が済まない。


 数日を、ギルドが用意した宿屋で過ごした。


 待遇がいいとは言えないが、俺は一つ心に決めた。

 ユリアンネを、ラウラを、カウラを、そして、俺の大切な者たちを奪っていった奴らを根絶やしにする。そのために、最終的に帝国に向かうことにした。今の俺では、クラーラには勝てないだろう。ブノアには勝てるかもしれないが、エタンには無理だろう。ラウラとカウラが居れば・・・。だから、俺は、俺を鍛える。一番手っ取り早く鍛えられるのは、ダンジョンだろう。ライムバッハ領にあるダンジョンに潜る。それ以外にも、ダンジョンはあると聞いている。


 ダンジョン攻略を、当面の目標とする。


 結局、ルットマンは知っていることはなかった。収穫と言えば、ブノアだと思われる奴が接触してきたことや、ルットマンたちの武器防具や魔道具が、エタンらしき奴らから渡されたこと。そして、”あの方”と呼ばれている奴が、帝国に居るらしいことが追認された形だ。


 今はまだ無理だ。でも、いずれきっちりと落とし前をつけさせてもらう。

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