第八話 転生した?

 どういう事だ?

 俺は、電車を待ちながら寝てしまったのではなかったのか?


 そもそも、ここは何処なのだ?

 夢を見ているのか?


 それにしても、ここは暗いな。夢なら夢でもう少し気を利かせてくれてもいいと思うのだけどな。

 本当になにも見えないな。


 浮遊感はあるのだけどな。身体がある感じがしないな。

 あぁぁぁそういう事か・・・死んでしまったのだな。俺。


 しまったな・・・。施設のカットオーバまでは生きていたかったな。もう少しだったのに・・・。


 あぁ心残りってこういうことを言うのだろうな。


 心残りが、システムの事しか無いのが我ながら寂しいな。あの施設も、取り敢えずの方向性が出すことが出来たし、やっかいな問題だと思っていたハードウェアも約束を守ってくれれば、解決するだろうからな。

 プログラムや設置は、多分もう大丈夫だろう。後は、オープン後に発生する実業務とのギャップをどうするのかって事だけだろう。それなら、俺が居なくても大丈夫だろう。


 そういえば、美和・・・・あいつらに連絡してくれるかな?

 あいつ、中学の時は底抜けに明るくて、馬鹿だったのに、一番変わったのはアイツだろうな。森下美和って自己紹介したときのアイツのドヤ顔。まだ桜に惚れていたのだな。

 たしかに、桜はいいやつだと思うけど、あの事件がなければ、桜の事を勘違いしたままだっただろうな。

 桜がいれば大丈夫だろう。何か有っても困る事にはならないだろうし、美和がうまくやってくれるだろう。


 今更考えてもしょうがないな。


 そういえば、俺の死因ってなんだろう?過労死?会社に迷惑がかからないといいな。別に、命令されてやっていたわけじゃないし、俺が自らやっていただけだからな。

 ブラック企業じゃないと思っている。給料もしっかり出ているし、休みも申請したら貰える。唯一却下されたのは、会社を辞めるって事だけだからな。


 でも、これが死後の世界ってやつなのか?

 丹波○郎先生の言っていた話と違うな。子供の時には、エンマ大魔王とか本気で怖かったのに、こんなに何もなくて、静かな所なのだな。

 それとも、ここは前室で今からエンマ大魔王の前に連れ出されるのかな?それなら、ユーザビリティの欠片もない仕組み、修正したほうがいいって誰も進言しなかったのかな?

 最低でも、状況判断ができるだけの情報は欲しい所だな。三途の川を渡った記憶もないし、賽の河原も見ていないし、もう少し情報の提示があってもいいと思うのだけどな。

 自分が”死んだ”事がすぐに判断できるようにしないとダメだろう・・・。


 ダメだな。考えるしか出来ないと、できなかった事や、やりたかった事しか思い浮かばないな。

 あぁ・・・。もう少しいろんなプログラムを組みたかったな。

 家の要塞化は出来たけど、家電との連動がまだ不十分だし、カーナビや移動媒体との連動ももう少しなんとかなりそうだよな。

 もっとハードウェアの事も勉強しておくべきだったな。

 ファームウェアレベルと制御プログラムまでしかやった事がないからな。

 最近、面白いガジェットとかが増えているからな。

 正直VRやARには触手は動かなかったけど、入力デバイスが増えてきたら楽しかっただろうな。出力デバイスも、目と耳と振動系以外でもう少し出来ているといいのだけど、今はまだ難しいか・・・。

 AIも結局ハードウェアの発展が鍵になっていたし、ソフトウェアに関しては、10年前と大きく変わっていないのだろうな。いろんな開発ツールが出て、いろんな開発手法が出ているけど、結局はコミュニケーションがしっかり取れるかで、この開発手法なんてそれを定義している物でしか無いのだよな。成熟していない現場だと、開発手法が絶対的な物で自分たちがそれに合わせて窮屈になってしまっている事がある。確かに、ルールは守るべき物だし、その点で言えば、皆が同じ理解を持てる開発手法は大事だけど、それを採用すればプロジェクトがうまく回ると考えるのは間違っているのだろうな。まぁこういう指摘をしても、意味がない場合が多いのだけど・・・・な。

 規模が大きくなる技術には興味は無いけど、業界は活気付くだろうな。

 個人的には、もっとデバイスフリーになってくれると面白いのだけど・・・・な。デバイス依存が強すぎるから、結局ソフトウェアでの解決よりも、ハードウェアでの解決の方が回収の目処が立てやすいのだろうな。ソフトウェアはかかる予算の割に回収できる物が少ないからな・・・。


 最新技術の情報収集や言語を絡めた検証とか・・・。もう心配しなくていいのか・・・。なんか、寂しいな。


 篠原さんとの約束も守られなかったな。

 あの人怒っているだろうな。ああ見えて、後輩には優しい人だったからな。

 山本や井上や小林は、うまくやってくれるだろうな。石川には、もう少しいろいろ教えてやりたかったな。皆は気がついていたのだろう・・・な。俺が一番頼りにしていたのは、石川なのだと・・・。今更考えても手遅れなのだろうけど、チームの存続は難しいかな・・・あんな赤字だらけの部署をいつまでも維持できるとは思えないからな。


 あぁ最後に作っていたプログラム。今考えれば、あそこが問題だったのだな。

 ハードウェアのAPIを、スレッド内で回していたから、取得時の問題が発生したのだろうな。不定期に発生するアプリケーション異常での停止だったし、

 APIがプッシュ対応していないから、即時対応させるために、スレッド内で回すしか無いよな。API自体をカプセル化して、スレッドセーフな物を作るか、スレッド内からイベントを発生させて、スレッド外で情報を共有させるか、まだいろいろ出来そうだな。専用のサービスを作ってもいいだろうし、別プログラムにして外部インターフェースでの接続を作っても良かったのだろうな。そうすれば、あの要件に会うようには出来ただろう。


 生まれ変わりってあるのかな?

 そもそも、俺って生まれ変われるのかな?

 別に、部下を助けて通り魔に刺されたわけでも、喧嘩しているカップルを助けても居ないし、ゲームで貫徹して寝落ちしたわけでもないし、でも、貫徹には近いのかな・・・過労死だから、でも、ブラック企業で無理やり働いていたという事も無いからな。十分幸せな人生だったと思うからな。

 生まれ変わるなら、またプログラムができるような生活がいいかな・・・火消しでも・・・いいかな。辛い事は多いけど、楽しい事も多かったからな。


 それにしても、”ここ”は眠いな。

 もう俺、寝て居ていいのだよな。


 そう言えば、そんなアニメが有ったな。


 真辺の意識はここで途切れた。

 47歳の誕生日に会社の最寄り駅のホームで過労死するという”よくある”幕切れだ。


▲▽▲▽▲▽▲▽


(ん?なんだ。俺。生きているのか?過労死したと思ったけど、助かったのか?俺、まだプログラムを作れるのか?)


トぉかァナぁちぃノぉへェノぉルぁニぃのォみちトぉひィタぁヒぃしいとな


(は?何言っているのだ?)


すちもなこちオぉてェくちサぁィぃもらのらすいしいコぉパぁテぇけぇしち

トぉかァナぁちぃノぉへェサぁホぉノぉへェきちネぇしぃシぃみィもいみにみちすにもちとな

とらのちサぁむぅすなのち?」

もらそくにすらみみしいとなのらそくにすちしいとな


 身体を動かそうにもうまく出来ない。身体が起こせない。

(わからん。どうなっている。それに身体が動かない。)

(もしかして、植物人間とか・・・。まずいな。)

(言葉もそれでわからないのか?)

(あれ?声も出せない?)


トぉかァナぁちぃノぉへェ。」

みちみみしち?」

ネぇきィそくにさんちもちしいとなきちスぅオぉのにツぅドぉきちネぇズぅみらしいとなのらとくにノぉツぅネぇすゥみにとくにもちとな

ニぃプゥといすな


(痛い!なんで、お尻叩く!こちとら、47歳だぞ。今更、お尻叩かれて喜ぶ性癖は無いぞ!)


もらエぇピぃからスぅギぃのなとくにすら!」

くちエぇピぃくち


(痛いな!)

「痛いな!」


(声に出しちゃったよ。痛いな。止めてくれよ。それでなくても、今いろいろ考えているのだから!)

「止めてくれよ。それでなくても、今いろいろ考えているのだから!」


トぉかァナぁちぃノぉへェ

さちヌぅあぁてちエぇピぃかちスぅオぉのにツぅドぉしちみち

くちサぁプぅコぉヨぅツぅドぉのちから

とらしちみちテぇゑォもらんらのなんちエぇピぃかち

みちかちすにきちからきらつちもちとなタぁカぁトぉピィみらタぁねェみにネぇビぃテぇゑォてらシぃはぁとくにもちとな

とらしちみちテぇゑォくちすなみらすなからすなみらすなからウぅポォくなさらみみウぅポォすちもなこちオぉてェくちしち


(え?俺、抱きかかえられたの?それに、お前たち誰だ?この美男子と美女と中年女性は誰だ?)

(え。これ、俺の手か?)

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!どういう事?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る