第14話 エース・クリンプト

 ミズノの報告通り、大学周辺は思わぬ襲撃を受けていた。

 突如、砂漠の地中からガンマンが飛び上がってきたのだ。

 砂だらけのガンマンたちは、すかさず銃を構えると、辺りにいたサーバントたちに乱射した始めた。

 拳銃にしては重い弾丸の音。

 彼らの一撃は凄まじく、巨大なワニのわき腹に、大きな風穴が簡単に空いてしまったのだ。

 キングコングも簡単に沈める。

 きりきり舞の速度には簡単に追いつくし、大グモのはらわたすらたやすくうち抜く。

 それがガンマン一人分で起きた被害だ。

 まだ、周囲にはたくさんのガンマンたちが。

 彼らの及ぼす被害は甚大だった。

 サモントレーナーたちはぬりかべのサーバントの後ろに身をひそめるが、その耐久力も時間の問題。

 ゴッサムも太一を掴んでそこに引っ張ってきた、すかさず現状を尋ねる。

「ゴッサム、一体何が起きてる!?」

「わからん、だがガンマンであることには間違いないな」

 太一は混乱していた。

 目の前に現れガンマンたちは皆二丁拳銃だ。それらの威力はよしきが一度見せたものより、はるかに強い。

 かすかに見た銃の大きさを考えても、明らかにマグナム以上の銃であることが窺えた。

 それを片手でやすやすと扱い、挙げ句の果てには異世界の補正か何かで、一発一発が機関銃やガトリング砲のそれより凶暴だ。

 今、彼らが隠れているぬりかべもよく耐えているものだと感心した。

 ゴッサムが太一の頬をたたく。

「何してる! 早く奴らを倒せ!」

「できるわけないだろ!」

「エクレツェアのメンバーじゃないのか!?」

「無茶いうな!」

 しかし、そうこう言ってはいられない。

 塗り壁の体を貫通する弾丸が現れ始めた。

 ちょうどゴッサムの後ろにいたサモントレーナーが一人頭を吹き飛ばされる。

 思わず目を逸らしたが、彼を助けるためには一刻も早く異世界技術での治療が必要だ。そのためにはこの場を今すぐ制圧しなければならない。

 だが、太一にそれだけの実力はなかった。

 太一はゴッサムを囃し立てる。

「お前こそ大学で一番強いんじゃないのか!」

「それは……!」

「お前が手伝うならやってやるよ!」

「だが、それは……」

「どうしたんだよ! みんな死んじまうぞ! 早くしろ!」

「……わかった」

 ゴッサムはポケットからサングラスを取り出し、こめかみを指で二度たたく。

 それがサーバント召喚の合図らしい。

 銃撃は続く。

 ぬりかべもう半分ほどしかない。

 危険だ。だが、狙い撃ちされては手の出しようがないのだ。

 一か八か、フィガーを使うか?

 だが、そう思っているうちに、ぬりかべは倒れてしまった。

「まずい!」

 絶体絶命、まさに今の状況だ。

 しかし、ヒーローとは常にそのいうときにこそ現れるものだろう?


『正義の使者、エース・クリンプト。降臨!』


 誰かが、太一たちを遮るように、砂漠に着地したのだ。

 しかも、あの凄まじい威力の弾丸を、全て体で受け止めていた。

 太一たちはその姿を見ようとするが、逆光でよくわからない。

 だが、そのヒーローは筋骨隆々なのは見て取れた。

「みんな! もう大丈夫だ! 後は任せていなさい!」

 そう答える彼がゴッサムのサーバントなのか。

 尋ねる間も無く、エースは中に飛び立った。

 逆光のまま上空に上がると、それは地表に大きな影を生みだし、彼の強さをまたひときわ目立たせる。

 彼の姿が見え切れぬままことは進んだ。

 エースがガンマンの一人に尋ねる。

「君たち! 一体何の真似だ!?」

「お前には関係ない!」

 容赦無く弾丸を浴びせられる。

 だが、彼の鋼の肉体にはかすり傷一つつかない。

 へちゃがった弾丸だけが砂漠の上に落ちた。

「よかろう、では正義の鉄槌を受けるがいい!」

 エースが拳を真上にかざす。

 するとその瞬間、彼は新幹線よりも早く飛び上がり、そのまま低空飛行へ。

 砂漠の上のガンマンたちを次々と殴り倒していった。

 彼の高速移動は、ガンマンたちの弾丸をかい潜り、太一たちを狙う弾丸は、目から出る光線で焼き消してしまった。

 とんでもない戦場と化した砂漠の上は、瞬く間に鎮圧され、ヒーローが飛び上がるのみとなったのだった。

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