第10話 ディオグラディティ社長護衛計画
「おーい、酒鬼! 呼ばれてるぞ!」
「わかってるっての! あと、俺の前を歩くなクソトカゲ」
水色と赤の着物を来ている男は、逆三角形の角を生やして喧騒の響く繁華街のようなエクレツェア本部の廊下を進んで中央会議室に入る。
紳士服を着た、でかくて黒い尻尾を携える美形の男も、まるで巨大な酒場のようなこの会議室ででかでかと座っていた。
中にはよしきが待っていて、急かすように黒板を叩く。
「おはようさん、早速だけど今回の任務について話させてくれ」
そこにはミーティアとスミレの姿もあった。
よしきは早速本題に入る。
「前回、和帝の国に乗り込んだわけだが、あの任務は特に良かった。サカ鬼と龍矢が致命傷を負ったのは想定外だったが、あの任務をこなせたのは他でもない彼らが敵陣で敵を集めてくれていたおかげだ」
彼はそう話しながらなかなか結論に入らない自分にイラついていた。
「そこで、我々はしばらくこのチームで任務をこなしていこうと思う。目標は皆が仕事に慣れることだ。それまでは俺がこのグループのリーダーを務める」
するとサカ鬼と龍矢が小さく歓喜した。
「よっしゃ! 詠嘆のエクレツェアが付いてりゃ間違いない」
「いいとこ見せないとな」
よしきが話を続ける。
「実はな、すでにコーデルから聞いているものもいるかもしれないが、今エクレツェアはキシヨを探している。しかし、先ほど俺がワールドテラスで検索を行ったところ、キシヨは1・5世界以下にはいないことが判明した」
話は続く。
「みんなも知っての通り、世界は1に近づくほど巨大になる。つまり、その世界の住人もそれなりに強くなるということだ。そして、我々エクレツェアは1・5世界だ」
スミレはそれが意味することを知っている。
「それって、太一の友達が私たちよりはるかに強いってことよね?」
よしきは黒板に図を描いて説明し始めた。
「サカ鬼と龍矢が1・6世界。スミレは1・8世界。ミーティアは2・8世界の出身。これもすでに説明済みかもしれないが、キシヨを探し出しても直接会わなければ意味がない。だから、我々は我々の強化を初めの目的にして別の任務にあたっていきたい。異存はないな?」
サカ鬼だけ依存があった。
「赤毛族が2・8世界の人間? それはおかしいだろ、よしき」
「その通りだ。だが、強さはこの中で俺の次に強いぞ」
「うそだろ!? 前回一番活躍してなかったじゃないか!!」
すると、よしきは黒板に数字を書き始めた。
「えっと〜、確か斬撃が2861。打撃が32発。毒矢、吹き矢53発。火炎電撃氷結溶解液などなどの被弾回数86回」
龍矢が戸惑う。
「それってまさか」
「ミーティアが致命傷になり得る攻撃を受けた回数は計3032回。擦り傷も含めて6328回。ほぼ無傷だ」
「さすが赤毛族だ」
スミレは赤毛族についての知識がなかった。
「ミーティアちゃんは赤毛族っていうの?」
「そうっすよ、世界一気高い種族っす」
そういえば、和帝の国から帰る時まで、ミーティアが傷を負った姿を見ていない。
「ミーティアちゃんすごいわよそれ!
「ありがとうっす〜!!」
よしきがスミレに特別授業を始めた。黒板に赤いチョークで女の人間を描く。
「スミレ、これが赤毛族だと思ってくれ」
「……ごめんなさい。その絵ってなんか特殊で、つまり、それを二度と人間を描いたって言わないでちょうだい」
言われようwww。
棒人間書いとけ。
「じゃあこの棒人間を見てくれ。赤毛族は普通の人間の10倍の高度20倍の筋力、40倍の質量があると言われている」
「40倍ですって!?」
「ああ、多分今床が抜けてないのは赤毛族の細胞システムによるものだ。よくあるミトコンドリアのような細胞内の組織が、軽重を行っている。だが、赤毛族の細胞を全てエネルギーに還元するとやはり人間の細胞の300倍のエネルギーが放出される」
また物理学ちっくになってきたので省略しよう。要するに、物質を構成するエネルギーは同じ世界の同じ条件下では一定の体積、質量、密度、温度、圧力だったするわけだ。
期待と同じシステムと考えてくれればいい。
あとは特殊相対性理論を学べば完璧にマスターできるはずだ。
周囲の皆に資料が行き届いた。
よしきは机の上にデバイスを出す。
「これが今回の任務だ」
部屋の中央にホログラムで映像が投影される。
『グラバッチアカンパニー。〜世界をあなたと守る会社〜』
よしきは任務について話を始めた。
「今回、我々チームエクレツェアはこのグラバッチアカンパニー社長の『ディオグラディティー』と業務提携を図ることとなった。そして、彼の護衛に当たるのが、今回我々のこのグループだ」
ミーティアが記憶の糸を手繰りながら、
「それって確か、兵器開発会社じゃなかったっすか? 和帝の国では爆撃より個人の方が『コストが低い』って言ってたじゃないっすか」
「ああ、確かにそういった。だが、今回は仕事で使う兵器ではなく、この我々の住む惑星『プレートプラネット』を災害から守るためのものなんだ。とりあえずそこに反対してるやからがいて、我々はその敵から『ディオグラディティー』を守らなければならないんだ」
『ハロー、ディオグラディティー』
映像にこれまた童顔の若い男性が表示される。
「彼がその社長だ」
『我が社グラバッチカンパニーはあの詠嘆のエクレツェアと提携。今日から三日間あたりを巡礼し、提携の儀を行う予定です。詳しくはホームページをクリック』
よしきは三本指を立てると、
「期間は三日だ。それを乗り切れば今回の任務完了となる。もちろん、まだ我々が仕事に慣れるまでの準備期間だから、難しい任務じゃない。気楽にやってくれ」
『同時期公開予定、ディオグラディティー・オブ・アドミニストレイトよろしくね!』
「はぁ、俺もこんなPV流す奴と提携するのは面倒だが……本当、適当に頑張ってくれ」
『1200分の超大作ダァア!』
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