第17話 忍びの逆襲
その頃、居住区北西入り口では忍者の城とは思えないほど真っ白な廊下で戦闘が続く。
「『核融合兵器』を用意しろ!」
「あん? 酒でも飲んでんのかと思ったら、何してんだあいつら?」
は『障壁』の中で交戦していたが、半分が片付いた頃、聞きなれない兵器の名に首を傾げていた。
よく見ると入り口の向こう側では一人の忍びを残して退避が完了している。その一人の忍びの手には、手のひらに青い玉がはめ込まれた小手をつけていた。
「発動」
小手の玉が光り輝き何やら充電をしたかと思えば、オレンジの『障壁』指をねじ込み始める。
その時、別の場所ではお鷹の胸が急にしゃがみ込んだ。黒い部屋で苦しそうに呻き始める。
「お鷹の胸様!」
スミレが駆け寄るも治らない。
そして次の瞬間には正門と北東の入り口でも同じような攻撃が『障壁』を襲う。お鷹の胸は一層苦しみ、それは『障壁』の悲鳴でもあった。しかし、お鷹の胸はすぐに苦しみから開放される。
しかし、守りの要は無くなった。
ビキィイ……バリバリバリィ……
サカ鬼の目の前で『障壁』がいとも簡単に崩れ去る。同時に大量の忍びたちが流れ込んできた。そしてそれは龍矢も同じだ。
ミーティアは目の前の状況を把握しきれてはいないが、緊急事態だろうということはわかる。
「コーデルさん! なんかやばいっすよ!」
目の前で戦っていたラブレスが押し倒され、踏み潰される。
しかし、コーデルからはなんだか困ったような声が返ってきた。
『ああ、わかってるよ。でもね……』
コーデルはエクレツェアで忍びたちに刃物で取り囲まれながら、
「本体が囲まれちゃ、操作ができないよ。どっから入ってきたっていうんだい?」
お鷹の胸は痛みが治まると急に立ち上がり、
「『障壁』突破されました、私はアカリの守護に向かいます! スミレ、ここで隠れてなさい!」
「——お鷹の胸様っ!」
彼女はスミレが声をかけた時にはすでに廊下へと走って行っていた。
隠れておけとはどういう意味か? それはスミレにはわかっていない。
******************************************
一方、祭壇前。
交戦は長時間続き、キシヨもまるでアカリを突破できない。
「だが、命には変えられないだろ」
キシヨがアカリに尋ねた。
「妾は母を尊敬しておる。エクレツェアとの接続は必要だと言っていたのだから、現実してやらねばならん。何としてもな。そのためにも私がこの世界を離れるわけにはいかん」
その時、ふとアカリは思いつく。
「我が妹のスミレも一応後継者じゃが、妾がこの世界を捨てれば、次はスミレが狙われる。やはりどう考えても一人だけ逃げることもできん」
「お前ら姉妹だったのか……」
「むむむ……確かに、もう権威とか言ってられんかもしれな」
「どうしてだ?」
「もう敵がそこまで来とる」
「は?」
彼が首をかしげた頃には、本堂の扉を誰かが突き破った。
キシヨが騒然とする。
目の前には傷だらけのミーティアが転がってきていたのだ。
「ミーティア!」
「キシヨさん、ここにいたんすか……すみません、今すぐ敵を片付けますから」
しかし、それをきっかけに大広間の扉が次々と開いていった。そこにはもれなく忍びの姿が。50はいるだろう。
「やめろ! 一人で戦うな! 俺も行く!」
だが、そんなキシヨをまたしても障壁が囲った。キシヨは叫んで『障壁』に手を触れるが叩いてもビクともしない。無理やり力で押し開けようとするが『障壁』の形が変わるばかりだ。
すると、アカリの方を振り返って、
「邪魔をするな!」
「バカを申すな。今『障壁』を出れば妾を誰が守る?」
「そんなこと言ってる場合か!」
言い争っている間にもミーティアは忍びたちに襲われ始める。複数の攻撃をかわしながら隙を作った者に強烈な打撃を加えて吹き飛ばしていた。
しかし、同時に傷も増えていく。先ほどからひやりとするほど致命傷を受けているようなきがする。やけに頑丈なその体が切り傷だけで済んでいるのを見ていると、いつ本当に致命傷を受けてしまうのかとひやひやした。
そんな様子を見てアカリが妥協案を出す。
「どうしても戦いたいというのならば一つ提案がある」
「なんだ? 早く言え!」
「外へ出ても妾を絶対に守ると約束するのならば、この『障壁』を消してやっても良いぞ?」
「わかった! 絶対に守る!」
キシヨは着物を脱ぎバトルスーツの姿になる。
「言ったな? では、やってみせろ」
すると、アカリはオレンジの『障壁』に指を触れて、
「妾に従え」
瞬間、『障壁』は放電して消えてしまった。
「おらぁああ!」
キシヨは待っていたとばかりに二丁拳銃を連続発砲。ミーティアを援護した。だが、『障壁』が消えたのをいいことに、クナイがキシヨの頭めがけて飛んでくる。しかし、首を振るだけでかわす。
その時、視界の端で後ろに飛んで行ったクナイを見た。アカリに命中したかもしれない。
「無事か!」
キシヨが見ると飛んできたクナイを掴み取っていた彼女の姿が。
「やっぱりおぬしでは自分一人を守るのが精一杯じゃのう。じゃからおぬしを障壁から出したくなかったんじゃ、お前を守るためには妾も戦わなければならぬではないか」
そう言ってクナイを元の持ち主へと飛んできた倍ほどの速度で投げ返して忍びを一人倒す。立ち上がった。
意外な強さに唖然としたキシヨを忍びが背後から日本刀で切りつける。だが、たやすく身をそらして、敵の胴体に弾丸をぶち込む。
ミーティアも自慢の腕力で敵の武器を破壊しながら迎撃を続けた。
忍びたちは互いの邪魔にならないように一対一の勝負を常に持ちかけ続ける。それは彼らが仲間というよりか、同じ目的なだけが故のことであったが、キシヨたちには都合が良かった。
三人は互いに交戦しながらも互いの標的を常に意識し、時には仲間をカバーして優位に戦う。
特にアカリの戦い方が優雅だった。白無垢姿で華麗に舞い、そして順調に敵を減らしていった。しかし、事態は急に展開する。
キシヨの前にまた一人の忍者が現れたので、彼は他の敵と同じように弾丸を打ち込もうとした。しかし、その時に気づく。敵は女だと。その油断が隙を生んだ。女忍者が日本刀を凄まじい速度で投げつけてくる。キシヨはそれをかわすが、後ろで誰かに刺さった音が聞こえてきた。
振り返るとそこには背中に日本刀が刺さったアカリの姿だ。
キシヨは血の気が引いて駆け寄った。
「大丈夫か!」
「すまん、妾が避けるべきだった」
「さっきまであんなに強かったのになんで!?」
「もう、朝日が近い……継承者は黒数珠繋ぎの影響を受ける。全力をだせんのじゃ」
「なんだそれ!?」
「のろいじゃ」
要するに弱体化したというわけだ。
ミーティアが二人を全力で護衛していたが、対処できる敵の量も限界に近づいていた。
そこでキシヨはアカリの手を強く握りしめて、
「すまん、20秒時間をくれ。それまでは死ぬな」
彼が立ち上がった頃には複数の攻撃が迫っていた。だが、その攻撃をキシヨが防ぎ、反撃する速度はそれらの攻撃をはるかに上回っていた。
「オメガバースト・雷速の弾丸仮面舞踏会(マスカレイド)」
キシヨの目つきが少しだけ殺気立つ。そして、敵の頭部に容赦なく弾丸を打ち込む。向かってくる攻撃は全てかすらせて、最小限の動きで最速の殺人を繰り広げる。
その間20秒、異世界の戦い方を少しだけ身につけたその姿にはミーティアも恐怖し、それを感じた頃には敵が全滅していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます