第百十三話


「!!!!えぇぇぇぇぇ・・・・僕?なんで?」


「あっシロ。おはよう。耳元で叫ぶなよ。頭の中までお前の声が響いたぞ?」


「カッカッカッカズト様。僕なんで?」


「あぁ?シロがドア開けて入ってきたのだろう?おねしょでもして寝られなくなったのか?」


 シロが布団をガバっと開けて、自分の服装を確認しようとした。


「あっバカ!」


 俺は気がついた。

 夜にシャワーを浴びた状態のままである事を・・・。


「カズト様のバカ、僕、おねしょ・・・なん・・・て・・・え?なんで?」


「あぁ?お前が脱がしたの・・・嘘だからな、安心しろ、な、シロ、な、泣くな」


 シロをなだめるために、裸の状態でシロを抱きしめる。布団の中に一緒に入って、シロが昨日間違ってアプルのブランデーを一気飲みして酔ってしまって寝てしまった辺りから少しずつの嘘を混ぜながら話した。

 特に、シロが俺に語った事は心の中だけに留めておこう。


「カズト様。本当ですか?」

「あぁドアを開けて、シロが入ってきて、酔っていたのだろう、布団に入って来て寝てしまっただけだよ」

「本当に、本当に、本当?」

「あぁ本当だよ」

「僕、カズト様に何か失礼な事しなかった?」

「大丈夫だよ。だから、泣くのはやめてくれよ」

「う・・ん(夢で、パパに頭なでられからかな?でも、なんか、パパがカズト様に似ていたよな?)」


「どうした?」

「ううん。なんでもないです。カズト様。今日は、お昼までどうされますか?」

「そうだな。昨日・・・良く寝られなかったから、このまま昼まで休んでいようかな?」

「え・・・それって、僕が居たから?」


「そう・・・シロ!違う。お前があまりにも可愛いから、それに俺に抱きついてきたからな」

「え?僕が・・・(可愛いってまた言ってくれた)」


 シロが俺に抱きついてきた。


「カズト様」

「なんだ?」

「ドキドキしている」

「何言っている!?」


 シロの頭をなでてやる。


「カズト様。僕も少し眠くなってきた・・・」

「そうだな・・・いいよ。戻るか?」

「・・・一緒に・・・ダメ?」

「いいよ。そのかわり、あまり強く抱きつくなよ。俺は、抱きまくらじゃないからな」

「・・・うん。カズト様。頭なでてくれる?」

「しょうがないな・・・シロは・・・」


 子供だなと続けようと思ったが、昨日の事を思い出してしまった。多分、子供の頃、祖父から虐待に近い事を受けていた。母親がどうなったのかわからないが・・・父親は、話を聞く限りでは優しかったのだろうが、祖父に粛清されてしまった。

 そして、ロングケープからミュルダへの遠征。16歳の女の子に背負わせるにはあまりにも重い命令。シロは、”アトフィア教=祖父”なのだろう。祖父から解放されたがっていた?違うな。自分を取り戻したかったのかも知れない。


「シロ・・・?」


 なんだもう寝てしまったのか?

 可愛い寝息を立てている。


 いいか・・・俺ももう少しだけ寝よう。

 その前に・・・。


『フラビア?起きているか?』

『あっツクモ様。おはようございます』

『朝から悪いな。一つ聞きたい事が有ってな』

『はい。なんでしょうか?』

『シロの事だけどな・・・』


 さて・・・なんて聞こうか?


『はい。姫様が何かしましたか?』

『いや、違う。少しシロの母親と祖父の事を聞きたかったのだけどな』

『あっ・・・御母上は・・・』

『どうした?何かあるのか?』

『いえ、ツクモ様なら問題ないとは思うのですが・・・』

『だから、何がある?シロを起こして聞いたほうがいいのか?』

『起こして・・って、あっ大丈夫です。私からお話します』


 何か勘違いしているのかも知れないが、今はそれ以上に母親の事が気になる。


『あぁ頼む』

『・・・はい』


 シロの母親は、シロが子供のときに病死した・・・と言われていた。

 実際には、急進人族最高!派によって殺害されたのだという。父親が推し進めていた穏健路線を嫌ってのことだ。一部奴隷商も絡んでいた事はわかっている。その頃、枢機卿であったシロの祖父が、息子の嫁の死を利用して、急進派で自分と違う枢機卿を押していた者たちを息子の嫁殺害容疑で捕らえて処分した。その他にも権力闘争があり、祖父はめでたく教皇に収まる事ができた。

 父親はそんな祖父のやり方を公然と非難した。息子も利用する道具程度にしか思っていなかった祖父は息子の娘など道具の付属品程度にしか感じていなかったのだろう。”できない”とは言えない迫力で、準聖騎士に任命した。その後、最年少の女性聖騎士にさせたのだ。自分の権力や影響力を強化するための道具に使った。なので、シロが何かミスや自分の気に入らない事をすれば、人前でも教育暴力を行った。他の聖騎士には優しく接する教皇だが身内には厳しくしていると思わせる演出も有ったようだ。


『フラビア。辛い話をありがとう』

『いえ、ツクモ様。あえてお願い致します』

『なんだ?』

『姫様をお願い致します。姫様がツクモ様に向ける笑顔を私たちは見たことがありませんでした。ツクモ様。私たちの命程度しか払えませんが、姫様の事をお願い致します』

『それは重いな』

『え?重い?』

『あぁフラビアとリカルダの二人の命をもらうのだろう?俺が一生かけてシロを守らないとダメって事になってしまうぞ?』

『はい!それでお願い致します』

『約束はできないが善処しよう。俺の力が届く範囲でシロを守ろう』

『あっありがとうございます』


 そこで、念話を切った。

 シロは、家族の愛情を受けて育つはずだった。アトフィア教に染まっていなかったのは、父親と反面教師の祖父が居たからだろう。急進派の存在も大きかったのかも知れない。


 ふぅ・・・少し寝るか?

 布団の中に潜り込むとシロが抱きついてきた。本当に、こいつ寝ているのか?

 寝息を立てているから寝ているのだろうけど・・・俺の事を抱きまくらかなんかだと思っているのだろう。


 二度寝という至福の時間を過ごす事に決めた。


---

 うーん。どのくらい寝ていたのだろうか?差し込む日差しからまだ昼前である事は間違いなさそうだ。

 でも、そろそろ起きるか?


 隣を確認するとシロがまだ寝ている。本当に、こいつよく寝るよな?


 抱きつかれても居ないことを確認して、布団から出る。

 下着と服を着てから、シロを・・・ん?


 なぜシロの服が床に脱ぎ捨ててある?

 急いで確認するが、”やった”形跡は無い。ひとまず安心するが、状況は何も好転していない。


 フラビアやリカルダを呼び出すか・・・ダメだな。シロがここで寝ている状況では呼び出すわけには行かない。同じ理由で、スーンやドリュアスもダメだ。エントは・・・シロの裸を見せたくない。執務室に、既に執事エントメイドドリュアスが控えているのがわかる。起こして、シロが悲鳴を上げたら部屋に入ってくるだろう。


 シロを抱きしめながら起こすか?


 布団ごとシロを抱きしめてから、起こす事にした。脱いでるのは、Tシャツとズボンだけのようだ。下着は大丈夫・・・だろう。見当たらない。


「シロ!シロ!」

「うぅーん・・・。え・・・あっ・・・そうか・・・おはようございます。カズト様」

「あぁおはよう。シロ、今自分の状況がわかるか?」

「え?カズト様に抱かれています?」

「誤解を招く言い方はやめろ。なんで、俺のベッドで寝ているのかは理解できているのか?」

「はい。眠くなってしまって、カズト様に抱きついて寝てしまいました。申し訳ありません」


 抱きしめながらそんな話をしている状況に関しては何も疑問に思っていないようだ。


「シロ。声を出すなよ」

「はい?」

「お前、今服はどうしている?」

「え?あぁ脱いじゃいました。暑かったので・・・一度、トイレに行きたくなって起きて、まだカズト様が寝ていたので、布団に入ったら、また眠くなって・・・でも、暑かったから、服も下着も脱いじゃいました・・・ダメですか?」

「え?おま・・・下着まで?」

「はい?男性の隣で寝るときには、そうすべきだと言われましたので・・・違いますか?」

「それをお前に教えたのは誰だ?」

「リカルダです」

「わかった。シロ。俺は、執務室に行くから、服を着たら、執務室に来てくれ、シュナイダー老の所に行く時間だろう?」

「え?あっはい!あぁぁそうだ。カズト様。身体清めていいですか?」

「あぁいいぞ?風呂に行くのか?」

「・・・カズト様の部屋の・・・お借りしていいですか?」

「別にいいぞ?」

「はい!」


 立ち上がろうとしたシロを押さえつけたが、遅かった。

 綺麗な肌に小ぶりな双丘にピンクの物が付いている部分が目の前に顕になる。それだけではない部分もしっかりと見えてしまった。


「キャ・・・カズト様?見ました?」


 急いで後ろを向いたのだが、見えてしまったのは間違いない。


「すまん。見えた」

「・・・(もっと見ても・・・ダメ、やっぱりまだダメ)」


 後ろからシロが抱きついてくる。


「着替えてきます(でも、おあいこ・・・さっき、カズト様を見てしまった・・・から・・・初めて見た・・・)」

「あぁ待っている」


 やましい事は無いのだが・・・ないと思うが、後ろを向きながら執務室のドアに向かった。


「シロ。ゆっくりでいいからな」

「はい!」


 執務室に入った。

 ふぅ・・・それにしても、シロの奴生意気にも綺麗だったな。


 ぼぉーとしてしまった。そうだな。シロなら、洞窟に連れて行っても大丈夫かな?カイとウミに相談してみるか?


 控えていた執事エントが決裁が必要な書類を持ってくる。シュナイダー老や商業区からの決裁依頼が無いことに気がつく。今日の話で何かしらの提案が有るのかも知れないな。


 シロが着替えて執務室に入ってきた。


「カズト様」

「早いな。ゆっくりでも良かったのだぞ?」

「いえ、シュナイダー殿が、迎賓館に入られたそうです」

「そうか、わかった。シロも行くよな?」

「はい。もちろんです」


 シロと一緒に、迎賓館に向かう。

 さっきの事を意識してしまいそうになるが・・・あまりにも気にしてもしょうがないだろう。


「シロ!」

「・・・あっはい!」

「シュナイダー老の用事はなんだ?」

「はい。税に関してとだけ伺っています」

「そうか・・・」


 税?

 この前の話の延長か?終わったと思っていたけどな?


 転移門を通って迎賓館に向かった。


 すぐに、会議室に通された。


「ツクモ様!お忙しいのに申し訳ない」

「いや、大丈夫だ」


 シュナイダー老の後ろには執事エントメイドドリュアスが控えている。上手く使っているようで安心した。


「それで?税の話だと聞いたが?」

「あっはい。ミュルダ殿と話をしていますが、ツクモ様のご意向をお聞きしておきたく思いまして・・・」

「あぁこの前の話以外の話か?」

「はい。今話しておりますのは、新しく併合される。ユーバシャール区とパレスキャッスル区とパレスケープ区の取扱です」

「同じではダメなのか?」

「ツクモ様が同じにせよと仰せなら・・・」


「シュナイダー老。俺の意見は置いておいて、どうしたいのか言ってくれ」

「わかりました」


 シュナイダー老とミュルダ老の考えでは、ペネム街に初期に編入された街。

 商業区と自由区とミュルダ区、サラトガ区、アンクラム区と各PAとSAは、先日の話のように人頭税を廃止しても良いと考えているが、ロングケープ区や新しく編入された区は、少しの間今までと同じ税で運営して、緩やかに変えていきたいという事だ。

 その上で、街道を整備して、街道沿いに、SAとPAを設置する。税に関してはSAとPAは同一にしてしまえば、周りの集落や村から移住してくる者が増えるだろうと予測される。そうすれば、ペネム街周辺以外では農業が衰退して、ペネム街への依存度が高められるだろうという事だ。


 それから、3つの街の税を同じにすればよいのではないかという事だ。


 2,3疑問点を確認してから、シュナイダー老が俺の疑問点を解消する方法を考えると言って部屋からでていった。


「次は、リヒャルト父娘との食事だったよな」

「はい。私はどう致しましょうか?」

「ん?一緒でいいと思うぞ?ダメとは言われていないのだろう?」

「はい」

「場所はどこだ?」

「商業区です」

「そうなると、護衛が必要か?」

「そうですね。フラビアとリカルダを呼びましょうか?」

「そうだな。頼めるか?」

「はい!」


 暫くしてから、ニヤニヤしたフラビアとリカルダが迎賓館にやってきた。

 転移で来たのだろう。


「姫様。昨日はどうされたのですか?」

「どっどう?なにも・・・ねぇカズト様。僕は、何もしていないよね??」


 リカルダ。いきなり飛ばすな。


「あぁシロはおとなしく寝ていたぞ」

「そうですか、それならいいのですが?」

「あぁ大丈夫だ。それよりも、フラビア、リカルダ。リヒャルトの所に行くから支度しろ!」

「「はっ」」


 これで普段の様に戻る。

 切り替えがいつもながら早いな。


 二人は、収納から武器と防具を取り出して、装備を固めていく。服装も準備してきているのなら、最初から武装してこいと思うが口には出さない。俺は空気が読める男なのだ!


「シロ。リヒャルトに連絡して、どうしたらいいのか聞いてくれ」

「はい!」


『ツクモ様』

『ん?フラビア・・・リカルダもか?』

『はい』『はい』

『どうした?』

『今朝のツクモ様からの問いかけが気になりまして・・・申し訳ありません』

『別にいい。シロが大切なのだろう?』

『・・・はい。姫様は、私たち二人の希望です』

『希望?』

『はい。お話していませんでしたが、私たち二人は、姫様とはその』

『血が繋がっているのか?そうだな。今までの話では、現教皇の庶子の娘といったところか?』

『え?』『・・・はい・・・私たちは、異母姉妹です』


 フラビアがしっかりと説明してくれるのだろう。

 それにしても、異母姉妹?3人とも血が繋がっていると考えても良いのだろう。


『父親が現教皇の庶子なのか?』

『いえ違いまして・・・私とリカルダの母親は、現教皇が犯したメイドが生んだ娘です。その娘・・・母なのですが、母を当時司祭だった者に与えたて産まれたのが私たちです』


 複雑だな。

 祖母が違う感じになるのか・・・・。


『ちょっとまてそれだと、お前たちは姉妹になるのではないか?』

『あっ教皇が犯したメイドは1人ではありません』


 おいおい・・・。それで、父親が同じって狭い世界なのだな。


『想像以上だな』

『はい。私たちの、母を与えられた男は、枢機卿になって、母たちを合法的に殺しました』

『は?曲がりなりにも、教皇の子供だろう?』

『はい。姫様がお生まれになった事で、もうこれ以上子供が必要なくなったのでしょう。男児が産まれてしまっては困ると思ったのかも知れません。母を与えられた男も、母が殺された後でその咎で処分されています』

『ん?そうなると、現教皇の孫では男児は居ないのか?』

『わかりません。わかりませんが、認められているのは、姫様だけです』

『そうか・・・フラビア、リカルダ・・・お前たち、もしかしなくても、アトフィア教を恨んでいたのか?』


 沈黙がその答えなのだろう。

 そう考えると、俺に従った辺りからの行動がわかってくる。シロを俺に付き添わせて、自分たちが汚れ役を引き受ける。アトフィア教の司祭や聖騎士たちを屠る事への罪悪感を感じなかったのも、一部を除いて当然だと思っていたのだろう。


『フラビア、リカルダ。申し訳ないが、もう一つ教えてくれ』

『なんでしょうか?』『はい』

『俺に語った、許嫁の話、半分以上嘘だよな?許嫁が居たのは本当だろう?でも、何かしらの条件を付けていたか・・・穏健派・・・そうか、シロの父親の関係者か?』

『はい。そうです。姫様のお父上の腹心の子供です』

『連絡係としての婚約だったのだな』

『・・・はい。ですので、愛情も多少は有ったのですが、肉体関係はありませんでした。内通情報や姫様の動向を穏健派に伝えるのが私たちの役目でした』

『わかった・・・辛い話を悪かったな』

『いえ、いずれお聞かせしようと考えておりました。これで、もう隠している事は、姫様の恥ずかしい過去だけです』

『それは、今度酒の席で聞かせてくれ』

『わかりました。一晩でも、二晩でも話せるネタはあります』

『それは楽しみにしておくよ。シロが何か勘付いているから、また後で聞かせてくれ』

『はい』『かしこまりました』


「どうした。シロ?」

「え?あっなんか、3人で僕の悪口を言っていたように感じただけです」


 シロも女という事だな。

 感が鋭い。悪口じゃないけどな。


「そんな事ないぞ?シロの恥ずかしい過去の話を、今度、フラビアとリカルダが教えてくれるという事を決めていただけだ」


 シロが、フラビアとリカルダに言い寄っている。言っても、負けるのがわかっているのに無駄な事をするよな。


「シロ。それよりも、リヒャルトたちはどうするって?」

「あっはい。迎えを出すとおっしゃっていました」

「わかった、それなら迎賓館で待っていればいいよな?」

「はい」


 待つこと20分。

 リヒャルトからの馬車が到着したと知らせが入った。

 転移門に到着したようなので、転移門に向かう。転移していく事にしたのか?


 御者は、何度か顔合わせをした事があるリヒャルトの所の従業員のようだ。


「ツクモ様。お迎えに上がりました」

「たのむ」

「はい」


 シロと俺が正面を向いて座って、向い合せになるようにリカルダとフラビアが座る。狭くはないが丁度触れ合う位の距離だ。


 転移門を通って、10分位で目的地なのだろう。


「ツクモ様」

「あぁありがとう」

「いえ、旦那様に叱られてしまいます」


 チップにレベル2魔核を渡そうとしたが断られてしまった。

 無理強いしてもしょうがないので、そのまま店内に入る。ここは、たしか数ヶ月前に、リヒャルトから申請があって許可をだした。甘味処だな。一時ナーシャが入り浸っていたから、最初にナーシャへの販売禁止を言い渡した店だ。


 店に入ると、店長がでてきた。

「ツクモ様。シロ様。フラビア様。リカルダ様。大旦那様がお待ちです。どうぞ」


 案内されたのは、二階にある個室だ。


 部屋に入ると、リヒャルトと娘のカトリナが既に来て座っていた。

 俺とシロは、二人の正面に座って、フラビアとリカルダは、少し離れた席に座った。


「それで、リヒャルト。今日はどうした?」

「はい。ツクモ様。以前お話した通り、他の大陸で食べられていて、この大陸ではあまり馴染みが無いものを集めました」


 それはいいけど・・・


「なんで、この店なんだ?」

「あっそうでした。この店は、カトリナがいい出した店でして、食材を持ち込みやすかった事や、情報漏えいの問題を考えまして、ここに致しました」

「そうか、カトリナの店だったのだな」


 カトリナを見てみるが、何かお願いが有るのだろう。


「わかった。今日の食材で何か甘味が作られるようなら、教えよう。それでいいか?」

「はい!ありがとうございます!」


 正解だったようだな。


 でてきた食材は、多岐に渡っていた。

 その中で俺が喜んだのは、”テングサ”があった事だ。パレスケープから渡った大陸で採取できる物だと言うことだ。やはり海は沢山の素材が有るようだ。イカやタコもある。ウツボも有るようだ。昆布やワカメもある。

 テンションが上がってきた!


 果物類も沢山有るようだ。

 種子が取られる物は、スーンに渡して増やせないか確認していかないとな。植生がめちゃくちゃだけど、果物としては、見ればわかる物が多いのは嬉しい。


 テングサは干して乾燥させないとダメだけど、時間がかかるから今日はスキル分解を乾燥に使ってみるか?


「ツクモ様!」

「おっ悪い。沢山あったな。俺が欲しかった物も多数あったからな」

「本当ですか!」


 カトリナが前のめりすぎて怖い。

 テングサで寒天を作ればいいかな・・・これなら、アロエとかも見つかりそうだな。


 結局、甘味だけが増えていくのだろうな。

 醤油と味噌が欲しい、あと・・・鰹は贅沢かも知れないけど、サバやイワシがあればいい。マグロは食べたいけど、まずは出汁に使える物だな。アジも欲しいけど、輸送を考えるとな・・・。ここ思いっきり内陸部だからな。

 いっその事、ダンジョン内に海を作って、そこに魔物として生み出してみよう・・・か?


 菌が居るのは間違いないから・・・発酵食品の開発も推し進めないとな。


 結局その日は、夕方までいろんな料理を作る羽目になってしまった。

 これに関しては、シロとフラビアとリカルダは戦力外。しょうがないので、店の従業員にレシピを教えながらいろいろな料理を作った。


 リヒャルトが一番喜んでいたな。カトリナは、テングサの仕入れと販売価格を計算していた。寒天は利用価値が高いからな。

 果物やこの辺りにない植物が手に入ったから、俺としても有意義では有ったな。


 帰り際、落ち込むシロをなだめるという面倒なイベントが発生したが、今度料理を教えてやるという事で落ち着かせる事に成功した。

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