第百三話

/*** カズト・ツクモ Side ***/


「大主様」

「あぁわかった準備ができたのか?」

「はい。クリスティーネ様。リリーア。オリヴィエがヌル殿の庭でお待ちです」

「わかった。そう言えば、クリスの従者たちは?」

「本日は遠慮して待合所に居るとこの事です」

「そうか、わかった」


 ドリュアスのメイドが、先導にして歩くようだ。


 それにしても、メイドや執事が増えたな。

 また、魔核にスキルを付与した物を大量に作っておくか?

 勝手に吸収して進化するように言ってあるけど、許可を求めてくるのだよな。メイド的なスキルや執事的なスキルを付けて、身を守れそうな感じでの組み合わせて進化して良いとは言っているのだけどな。

 スーンがその辺り調整してくれているらしいけど、これだけの数だと足りているのか心配になってくる。


 今度、時間を見つけて大量に作っておくかな。

 エントやドリュアスだけじゃないからな。今後は、バトルホースにも必要になってくるのだろうからな。


 念話はレベル5だから枚数制限は無いだろうから、大量に複写してもいいのだろうな。

 レベル6以下のスキルなら枚数制限には引っかからないだろうから、大量に複写しても問題にはならないのだろうからな。


「カズトさん!」

「ご主人様!」


 クリスが駆け寄ってくる。

 リーリアとオリヴィエは、椅子から立ち上がって、一歩横に出てから、跪いて臣下の礼をする。駆け出していた、クリスも慌てて元の場所に戻って、臣下の礼をする。


 ここは、俺のプライベート空間・・・に近い場所だし、気にしなくてもいいとは思うのだけどな。


「今日はお時間を頂きありがとうございます」


 クリスがこの場を仕切るようだ。


「あぁそれよりも、昼にしよう」

「はい」


 3名が椅子に座り直す。

 それを見ていたのだろう。ドリュアスが料理を運んできた。


「大主様」

「ん?」


 クリスとリーリアとオリヴィエが何かを期待した眼差しをむけている。


「これは、クリスたちが?」


「カズトさん。リーリアお姉ちゃんが料理を担当して、僕とオリヴィエお兄ちゃんが材料を集めたの!」

「ほぉそりゃぁすごいな。早速食べよう」

「「「はい!」」」


 食事は賑やかに進んだ。


 クリスが少し大げさに採取や魔物討伐を話す。適時、オリヴィエが修正を加えている。リーリアが調理方法を話している。調理方法に関しての質問をクリスがおこなっている。


 デザートは、ピチを冷やした物だ。

 シンプルだが、これは美味しい。


「さて、クリス。何か有るのだろう?」

「・・・カズトさん。あの・・・僕・・・」

「どうした?」


「ご主人様。クリスの代わりに私が説明してよろしいでしょうか?」

「あぁクリスがそれでいいのなら、俺は構わないぞ?」

「はい。クリス?どうしますか?」


 リーリアも、クリスが眷属を受け入れてから、末っ子だと思って接しているようだ。

 序列なんて無いのだけど、眷属になった順番がそのまま兄妹の順番の様になっているようだな。


「ううん。リーリアお姉ちゃん。僕が話す!」

「そうしなさい」

「うん!」


 クリスがもう一度俺の方を向いた。


「カズトさん」


 何か真剣な表情だ。


「僕、エリンのことを、妹の様に思えてきて、お姉ちゃんと呼べないのです」

「はぁ?」


 なにそれ?

 あっ順番で言えば、エリンのほうが先に眷属になっているのか。年齢で考えてしまうと、クリスが最年長なのか?カイとウミなんて4歳かな?5歳位だし、ライも同じくらいだからな。


「あの・・・カズトさん」

「あぁ悪い。気にしすぎだ」

「でも・・・」

「”でも”もなにもない。俺は、眷属に優劣を付けるつもりはない。それは、クリスお前もだ。それに、エリンがなにか文句を言ってきたのなら考えるけど、そんな事は一度も無かったぞ?」

「カイ兄様やウミ姉様も?」

「あぁ大丈夫だ」


 安堵の空気が流れる。

 本気で心配していたようだ。リーリアとオリヴィエも安心した表情を浮かべている。


「カズトさん。それで、9人の名前を変えてほしいのですけどダメですか?」

「本人たちはなんと言っている?」


 急に話しが飛ぶ子だな。

 従者?眷属だったよな。確かに、3人は変えたほうがいいだろうな。


「僕と一緒に居るためにも、名前を変えたいと言っています」

「そうか、それなら了解した。今日の会議の後で偽装を施そう。クリス。名前を考えておけよ。お前が主人なのだからな」

「え?あっわかりました!皆と相談しながら決めます!」

「あぁリーリア手伝ってやれ」

「はい。ご主人様」


 そうだ!

 そうすると、オリヴィエが暇になるよな?


「オリヴィエ。今日、なにか仕事が有るのか?」

「いえ、なにもないので、ペネムダンジョン内を散策しようかと思っておりました」

「そうか、ちょうどよかった。エリンが、客人を案内していると思うから、手伝ってやってほしい。大丈夫だとは思うが、手持ちのスキルカードが少ないと思うから、オリヴィエが持っていってやってくれないか?」

「かしこまりました」


 フラビアとリカルダも居るから大丈夫だとは思う・・・違うな。シロの好奇心の爆発とフラビアの天然暴走を、リカルダが止められるだろうと考えたいが・・・ダメだ。想像できない。


「オリヴィエ。頼む。この時間なら、まだ宿区に居ると思うから、エリンと連絡を付けて早急に合流してくれ」

「はっ」


 オリヴィエは立ち上がって、俺に深々と頭を下げてからその場を離れる。


「ご主人様。私が後片付けをいたします」


 タイミングを見計らっていたかのように、スーンが姿を現す。


「大主様。皆様がお揃いです」

「わかった。クリス。リーリア。お前たちも来るのだろう?」

「はい」「いえ、私はレナータと一緒に軽食をお作りいたします」


 そうか、会議も長引くだろうからな。


「わかった、リーリア。片手で食べられるものを中心に頼む。それから、飲み物も頼むな」

「はい」


「それじゃクリス。行くか?」

「はい!」


 場所は、謁見の間だ。


 ログハウスも作り直さないとダメかな?

 SAやPAだけじゃなくて、今後ロングケープ街に向かう街道にも設置していくだろうからな。そうなったら、謁見の間は、謁見の間で用意しておいたほうがいいよな?

 国会のような会議場・・・そうか、行政区に作ればいいか・・・ここはあくまで、ログハウスで会議をする場所じゃないとしておけばいいよな。


 スーンが俺の前を歩いて、待機していたカイが俺のすぐ後ろを歩いている。

 その後ろにクリスが従う形になっている。


 謁見の間の表から入る事が殆どないからな。

 スーンが、扉を開けた。そこには、俺が考えていた以上の光景が広がっていた。


 こんなに?


 200名近い者たちが一斉に立ち上がって、真ん中を開ける。俺が先頭で入って、カイが続く。

 どこで練習してきたのかわからないが、クリスは、そのまま入り口から入って、末席に連なる。その後ろに、9名の従者が続いた。そして、クリスに、ペネムダンジョンコア(のダミー)を渡す。


 歩いているときに気になったのだが、右側にはペネム街の関連施設のトップが居るようだ。SAやPAの代官も右側だ。左側は、獣人の長や長候補が並んでいる。獣人族の方には、新しく下ったペネムダンジョンで暮らす集落の長も加わっている。獣人だけではなく長の大半は人族のようだ。


 いま、心底良かったと思っている事がある。

 ”カズト・ツクモ様のおぉーなぁーあぁーりぃー”とかやられなくてよかったと思う。これだけでも十分恥ずかしいのに口上まで付いたら悶絶してしまうかも知れない。


 静かに生きようとおもっただけなのに、大事だな。

 大変な事も多いだろうけど、楽しいからいいかな。すくなくても、生産性が乏しいシステムを作り続けるよりは楽しい生活だからな。


 玉座というべき場所に腰を落ち着かせる。

 皆が臣下の礼を取る。


 え?どうしろと?


『大主様。”大儀である”とおっしゃって下さい』


 え?大義ってご苦労さんとかだろう?

 偉そうじゃないのか?


『大主様』

『わかった。わかった』


「大儀である」

”はっ”


 これで元の状態に戻ってくれるのか?

 俺、会議がしたいのだけど?


『大主様。”スーン。始めろ”と言って下さい』


 先に教えておいて欲しいな。

 背中に尋常じゃない汗が流れている。


 わざと教えなかったのか?

 そうしないと俺が抵抗すると・・・スーンを見ると、すましていることから、はじめから皆と話して決めていたな


「スーン。始めろ」

「はっ」


 200名がざっと左右に別れる。

 完全に打ち合わせしていたな?こんなに連携がとれるとは思えないし、綺麗に整いすぎる。


 左右に別れた事で真ん中にスペースができた。

 そのスペースにエントたちがテーブルを運び込む。そして、ドリュアスが椅子を並べ始める。


 そして、スーンがひときわ豪華な椅子をお誕生日席に設置する。


 一段高くなっていて、俺が座る場所なのだろう?

 左右にスペースができていて、カイとウミが座る場所まで用意されている。エントやドリュアスたち・・・アトフィア教との戦いにおいていかれたことを根に持ってこんな・・・違うな。単純に俺のためを思って作ってくれたのだろう。よく見ると後ろにライの居場所まで作られている。


 諦めて椅子に座る。

 カイも定位置にするつもりなのだろう。俺の右側に座った。


 スーンかな?この椅子を作った奴に聞きたい。

 カイとウミとライの位置は、100歩譲って許そう。椅子が高い位置にあるのも、俺の今の身長を考えれば受け入れるしかないだろう。座ってみて納得したのだが、奥まで、末席のクリスまでしっかりと見える。

 そこまでは許そう。残念だけど、納得しよう。


 だが、この椅子。二人掛けだよな?俺に横になって話を聞けというわけじゃないよな?

 背もたれも二ヶ所作られているよな?


 終わったら、スーンを問い詰めないとな!クリスやリーリアが座ってくるのかと思ったが、そうではないらしい。俺の意思は尊重してくれるのは間違いなさそうだ。


 俺が腰をおろしたのを見て、皆が決められた位置に座る。

 連れてきた者や長で無いものは、後ろに控えるようになるようだ。


 今だと向かって左側にミュルダ老を先頭にして、ペネム街の関係者が並ぶSAとPAの代官が続く。

 右側には、ヨーンを先頭に獣人の長が並んでいる事になる。その後集落の長が並ぶ。


 順番ぎめとかでもめなかったのかな?

 もめていたとしても、今後の指標にはなるのだろう。


 座ったのを確認して

「皆、集まってくれた事を嬉しく思う。それと、勝手な行動を取ってしまって申し訳なく思う」


 先に謝罪してしまったほうが楽だ。


 昨日の今日だぞ?

 確かに、スーンにお願いされて、振動と拡大のスキルが付いた魔核をいくつか作成して渡したけど・・・そうだよな。こういう会議こそ必要だよな。


 俺の声が拡張されて、謁見の間に響く。


 ミュルダ老が手を上げる。

 そうしたら、エントが俺が作ったアーティファクトを持って、ミュルダ老の所に行く。そうか、マイク代わりなのだな。


「ツクモ様。無事ご帰還をまずはお慶び申し上げます。しかし、ご自身が前線のそれも聖騎士との戦いに赴いたとお聞きしたときには、心が止まってしまうかと思いました」

「すまない。事前に相談しなかった事は謝ろう」

「わかっております。これからも、ツクモ様のなさりたい事をしていただく方法を我らは考えました。お聞きいただけますか?」


 妻を・・・とか、跡継ぎを・・・と。言い出すかと思ったが、違っていた。

 獣人の長たちも加わって説明してくれたことだが、俺はこれからも自由に動いて良い事になった。


 ただし、SAやPAや近くの街に必ず寄って欲しいという事だ。通り抜けるだけでも良いので、街や集落に入ってそこに待機しているエントやドリュアスや長に今後の予定を伝えて欲しいという事だ。

 それは承諾できる事なので、抵抗なく受け入れる事にした。急いで居るときもあるので、そのときには、前触れを出して連絡だけを入れる事になる事も承知してもらった。


『なぁスーン。これって、念話でお前たちに予定を伝えればいいよな?』

『はい。そうなりますが、彼らとしては、SAやPAを素通りされる事を避けたいという事ですので、急いでいないときには、寄っていただければ幸いです』

『わかった。それなら問題ない』

『はい』


 せっかく集まってくれているので、いろいろ提案しておこう。


 まずは、ミュルダ老や行政区の者に、ロングケープ街をどうしたらいいのかを決めてもらう。

 誰かにロングケープ街まで行ってもらって話を詰めてもらう事になった。ミュルダ老とシュナイダー老が向かう事になった。

 基本的には、ロングケープ街もペネム街の支配下に置く事にしたいという意見が多かった。それは、デッセル・ライマンと話をして決めてほしい旨を伝えた。


 次は、税の問題だ。

 俺が思い描いている事を提示して、あとを決めてもらう事にした。


「ツクモ様」


 シュナイダー老がなにかあるようだ。


「なんだ?」

「人頭税の廃止の前に、各街と集落の状況をお話してよろしいですか?」

「あぁでも、資料はスーンにもらって見たぞ?」

「はい。重ねての説明の部分もありますが、各長が揃っておりますので、お願いいたします」


 そんなに皆でお願いしますと声を揃えなくても、聞くよ?


「大丈夫だ。最初は、ミュルダ老からか?」

「いえ、ダンジョン内の集落が先にお話いたします、次にPAをお聞きいただきたい。その後、SAのご説明をいたします。それから、ミュルダ区とサラトガ区とアンクラム区の状況をお話いたしまして、居住区と商業区と自由区でダンジョン区の状況説明を行います。最後に行政区でまとめたいと思います。宿区と神殿区は省略させていただきます」


 長い長い説明の始まりだ。


 ダンジョン内の集落は、一つの集落での自給自足には至っていない状況のようだ。クリスというよりも、ペネムが適時説明を入れているが、簡単に言えば、ダンジョン内の集落は人数の問題もあるので、単一食物の生産をおこなっていて、商業区や自由区におろしているようだ。あとは、近隣?の集落と交換しているとの事だ。大きな問題は発生していないという事だ。

 商業区や自由区との格差がなければ問題ないと思う。住居に関しても、自由区の平均的な物よりも良くするように言ってあるのが守られているようだ。自由区の住民から、ダンジョン内集落に移動したい旨の嘆願も出ているらしい。その嘆願に関しては、集落の長の判断に任せる事にした。


 PAとSAは、問題はないという事だ。

 小さな問題として、犯罪者を捕らえたときの対処を決めて欲しいという事だ。今は、ダンジョン内に送って話を聞いてから判断する事にしているが、輸送費やその間の食費などが嵩んでしまうという事だ。


「そうか、今までは、その街々で処理していたから、輸送という概念が無かったのだな」

「はい」


 ミュルダ老が答えてくれる。

 さすがに、区ごとに用意するのは現実的ではないな。


「スーン。スキル変体を使って、魔蟲のサイズまで小さくしてから、輸送したらどうなるか至急実験してくれ。死んだら元に戻るのは解るから、死なないように輸送する方法の確立だな」

「はい。早速、実験させます。スキル変体はどういたしましょうか?」

「あぁ後で渡す。スキル道具でいいだろう?」

「かしこまりました」


「実験次第だけど、これで輸送が楽になるだろう?逃げ出しても、死ぬまで変体が解けないし、発声器官がない魔蟲にすればスキルも使いにくいだろう?それで、罪が確定してから、死罪以外のときにスキル変体を解除すればいいのだからな」


 これで、SAやPAだけじゃなくて、ダンジョン区の犯罪者問題が片付いた。

 裁判所とかも作りたいけど、まだまだ先だろうな。


 ミュルダ区とサラトガ区とアンクラム区も、大きな問題はなさそうだ。

 獣人族が抜けてしまって、一時期街の機能不全になっていたが、それで不便だと思った連中や獣人と同等に扱われるのが嫌な連中は出ていってしまったらしい。

 現在は、この3つの街は商業の拠点の様な発展を遂げている。

 ミュルダはこれから、ロングケープ街との交易が盛んに行われるようになる。ロングケープ次第では役目も変わってくるかも知れない。

 サラトガは、アトフィア教の総本山がある大陸とは違う大陸。この世界で1番大きな大陸らしいが、そことの窓口になっている街との交易が増えてきているという話だ。

 アンクラムは、ヒルマウンテンの裏側?にある街との交易が増えてきているという話だ。


 概ね問題ではないらしいが。二つの街が結託して、ペネム街に攻め込もうとしているという噂があるので、いまその噂の信憑性を確認しているという話だ。

 俺としては、せっかくアトフィア教を撃退して、やっと静かに暮らせる状況になったのだから、紛争にならないで、ぜひ”良き隣人”として付き合って欲しい。


 自由区からの報告は、少し深刻になってきている。

 難民が押し寄せてきてそれらが、難民キャンプの様な感じになってしまっているという話だ。


「ミュルダ老。その難民たちは?」

「はい・・先程の二つの街が近隣の集落から・・・」「わかった。わかった。愚かだな。住民を切り捨てて、街が栄えるはずが無いのに・・・な」

「・・・はい」


「受け入れろ」

「はっ」

「ただし、自由区ではなく、ダンジョン内の下層に集落を作らせろ。クリス。まだ空きはあるよな?」

「はい。もちろんです。ツクモ様。階層は別にしますか?」

「そうだな。冒険者ギルドがある階層でいいかも知れないな」

「かしこまりました」


「ミュルダ老。難民は単一の集落でいいのか?それとも複数なのか?」

「複数です」

「そうか・・・クリス。ペネムに言って、難民が入植する区画は隔離できるようにしておいてくれ」

「かしこまりました」


「ミュルダ老。難民は、難民のルールが有るだろう。自治が欲しければ、自治を認めるがその場合は、ペネム街からの援助はない事と代表を決めてこの会議に出席させろ。自治がいらない場合には、他の集落と同じ扱いにしろ。皆もそれでいいな?」


 皆の方を見る。特に、集落を治めている長を見るが皆がうなずいてくれているので、問題はないと思う事にした。


 居住区と商業区は問題なし。


 ダンジョン区も大きな問題は発生していないようだ。

 問題と言えるのかは微妙な所だが、探索が進んでいないという事だ。浅い階層しか作っていないダンジョンの攻略はできているようだが、20階層を超えるようなダンジョンはまだ攻略に至っていないという事だ。これに関しては、少し放置する事にした。難易度をさげてもしょうがないし、順番に試していけば力もついてくるだろう。


「ツクモ様」


 クリスが申し訳なさそうに手を上げた。


「どうした?」

「いえ・・・実力的には、20階層を踏破できるパーティーも多数有るのですが・・・その・・・」

「いいから話せ」

「はい。そこまで危険を犯さなくても、10階層位からとれる素材でそこそこ贅沢な暮らしができてしまうので、それ以上潜ろうとしないのです」

「なんだそりゃぁ?そんな物なのか?」


 サラトガの領主の息子が、クリスに変わって話をしてくれた所によると、サラトガではダンジョン攻略時や階層到達時に表彰や報酬が出ていたという話だ。俺・・・もらわなかったけどな・・・まぁ言ってもしょうがないか。ペネム自身が報酬のようなものだな。


「クリス。皆の意見を聞いて、どうしたらいいのかをまとめてくれ」

「わかりました!」


 報奨金とかではなくて、もっと違う物がいいかな。


 報告の最後は行政区だ。全体のまとめと収入と支出の話を聞いている。うん。税金いらないよな?

 街の収入がすごい事になっている。使う事もないスキルカードだけが集まってくる。


 どうするかな・・・人口も増え続けているようだ。

 最初は、俺とカイとウミとライだけだったのにな。何百倍・・・何千倍になっているのだろうな。人口を正確に数える方法が確立していないから、納めされた人頭税が基準となっているが、3万人程度になっている可能性が高い。


 神殿区と宿区に関しては、俺が直接赴いて話を聞くことで終了した。

 実験区と同じく俺が直接管理する区だという事が再確認された。


 最後に税の話だ。


 税は、人頭税を廃止する事は確定事項。

 街に入るときの税も廃止。ただ身分証を持たない者に関しては、区の裁量で入区税を課して良いことにする。


 商人の荷に対する税も廃止。今は、重さで税を課しているが、それを廃止する。そのかわりに、ペネム街の戦略商品に関しては卸しの段階で税を付与する事にした。スキル道具などだ。後、居住区で提供が始まっている酒なんかも同じだ小売のときには、税を課さないが元売りのときに定額の税を付与する事にする。簡単な礼だと、競りのときに税負担をさせるという事だ。


 利率は10%とする。わかりやすいようにセリ落とした金額に、10%の税を課す事になる。

 行政区と商業区の売上報告から、それだけで人頭税の倍以上の税収入になる。これで売上が落ち込むようなら考えればいいけど、値段がまだ上がり続けているので大丈夫だろう。10%は強気かも知れないけど、計算が簡単だからな。競り落としたスキルカードのレベル毎の枚数を一つ下のレベルの枚数分払えば良い事になる。

 そのかわり、競りの手数料は廃止する。


 シュナイダー老もそれなら問題ないと言っているので、これで回してみる事にする。

 商業区とSAとPAとダンジョン内の商店、飲食店、宿屋に関しては、年で場所に応じた税金を徴収する事も正式に決まった。業態で分けると面倒なので、場所と広さで決める事にした。そうすれば複合店が多くなるだろうと予測している。


 ここまでで概ねの報告と今後の方針が決定した。

 一時解散となって、ミュルダ老とシュナイダー老とゲラルトとヨーンとスーンとクリスと従者だけが残った。


 第二幕の始まりだ・・・泣けてくる。

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