第九十六話
/*** カズト・ツクモ Side ***/
30分位待っただろうか。
フラビアが戻ってきた。返り血を浴びている。
俺の前で跪いて
「ツクモ様。首魁共を捕らえました」
「わかった。それよりも」
「そうでした。シロ様。リカルダ。私も無傷です」
「そうか、それならいい。首魁は1人か?」
共と言ったのが気になった。
「3名です。司祭が1名と聖騎士が2名です」
「ほかは?」
「切り捨てました」
「そうか・・・」
「ダメでしたか?」
「いや、お前たちに辛いことをやらせたと思っただけだ」
「ありがとうございます。でも、大丈夫でございます」
そうか・・・なら、なんでそんなに泣きそうな顔をしている。
「わかった。どうする?俺も集落に行くか?」
「ツクモ様。シロ様からお願いがあると思いますが、エリン殿にお願いして、この集落を”炎”で浄化する事はできませんか?」
浄化・・・かぁ本当の意味での浄化なのだろうな。
男児と女児がここの出身だったら話を聞いておきたい。
「わかった、保護した二人の意見を聞いてからでもいいか?」
「もちろんです」
「それで、どうしたらいい?」
「そうですね。ツクモ様。こちらでお待ちいただけますか?首魁共を連れてまいります」
「わかった。シロの命令に従わなければ、腕の一本位なら飛ばしていいからな」
「わかりました」
フラビアが立ち上がって、集落に戻っていく。
カイに座って待っている事にする。
10分位経ってから、縛った3人を連れて、シロたちが帰ってきた。
シロたちは、俺の前で跪いて
「ノーネーム様。集落を襲っていた者たちを捕らえてきました」
シロが、ノーネームと話しかけてきた。
カズト・ツクモの名前がバレないようにするためだな。殺すつもりだけど、確かにどこで聞かれているかわからないからな。
「そうか。アトフィア教の司祭と聖騎士で間違いないのか?」
「間違いないです」
司祭だろうか、俺を見て”餓鬼が”とか言っている。
カイから降りて、縛られている司祭のところまで行く。
シロたちは、跪いたまま俺の方を振り向かない。
『カイ。俺に攻撃力向上のスキルを使えるか?』
『できます』
司祭は、立ったまま俺を見下ろしている。
膝を思いっきり蹴る。膝が曲がってはダメな方向に曲がる。司祭は体重が維持できなくなって転ぶが、自分がなんで転んだのか理解できないようだ。理解できないのなら、理解できるようにしてやろう。
「シロ」
「はっ」
立ち上がってから振り向いた。剣の柄を俺にむけている。
シロから剣を受け取って、司祭の腿に剣を突き刺す。喚き声がうるさいから、腹を蹴飛ばして黙らせる。
「おい。どうする?立ったままなら、同じ様に、座らせるぞ?」
司祭の後ろに縛られていた者があわてて座った。
「シロ。この二人の座り方は話を聞く態度としてはどうだ?」
シロが首を横に振る。ダメだという意思表示だ。
「そうか、腕は縛られているからしょうがないけど、足はいらないのだろう?切り落としてもいいだろう」
「はい」
二人はあわててしっかりとシロたちがしていたような座り方になる。
「できるなら最初からやってくれよ」
俺が、カイの上に座ると、シロも最初の位置に戻る。
「それで?こいつらは?」
「はっ集落に住んでいた者・・・37名を殺害した者たちを率いていた者たちです」
「そうか・・・」
膝を折り曲げた奴は、もう言葉も話せないようだ。
二人も司祭の様子を見て、頭を下げるのみだ。
もともとが権力がある者に対して下げていた頭なのだろう。
『シロ。シロ。聞こえるか?』
シロが”えっ”という顔をして頭を上げる。
『シロ。此奴等は、シロがアトフィア教の信者だと知っているのか?』
あたふたしだすシロ。見ていて可愛いと思うが、和んでしまいそうだな。
『大丈夫。頭の中で、俺に返事したいと考えてみろ』
『・・・カズト様・・・』
『シロ。できたぞ。それで、聖騎士なのはバレているのか?』
『あっ・・・私が、元信者だとは気が付かれていません。っでいいの・・・かな?』
『あぁ大丈夫だ。一度切るぞ?』
『はっはい!』
シロとフラビアとリカルダがアトフィア教の者だとわかっていない状況でも、力あるものに従うのだな。
「なぜ殺したなんて馬鹿な事は聞かない。何か理由が有ったのだろう・・・」
なぜか、二人は安堵の表情を浮かべる。
聖騎士は、男と女だ。司祭との関係も気になるが、それ以上に、なぜ助かったという雰囲気が出せるのか疑問だ。
「”赦しの儀式”なのだろう?違うのか?」
二人は、ぎょっとして俺を見る。俺が、シンボルを持っているのかと胸の辺りを見るが、もちろんそんなシンボルは持っていない。
「罪を犯した者が、神に許されれば、復活できるのだったな?違うのか?」
「そっそうだ!だから、食料がないなぞと抜かした奴らに儀式を施したのだ!やつらもそれを望んだ!神の前で懺悔できるだのこれ以上の誉があるか!」
男の聖騎士が叫んだ。
「そうか、そうか、それは大変だったな。俺には関係ない!だが、子供はどうした?」
シロたちも、あっ!という顔をして俺を見る。
31人の中には子供らしき遺体は無かった。逃げてきた二人だけがこの集落の子供だとは思えない。この規模の集落だ、最低でも4~5人の子供が居てもおかしくない。湖の恵みが期待できる事を考えれば、10人位居ても不思議では無いだろう。
「どうした?なぜ答えない?」
二人の聖騎士は何も答えてくれない。
俺の想像があたってしまったようだ。
「シロ。集落の中居たゴブリンは何匹だ?」
「はっ3匹を除けば18匹でした」
「子供の遺体は有ったか?」
「いえ・・・ございませんでした。集落のなか・・には、若い女の死体があるだけ・・・でした」
カイから降りて、虫の息になり始めている司祭の所に行く。
胸ぐらを掴んで
「おい。これが解るか?スキル治療だ。使ってやってもいい」
「はっはやく・・・痛えぇぇよぉぉぉ」
剣を抜いてスキルを発動する。
別に馬鹿正直にスキルカードではない。
『ライ。スキル治療をこのゴミに使ってくれ』
『わかった』
うん。
今までの実験通りだな。スキル治療を単純に使っただけでは、折れた骨はその状態で固定される。剣などの怪我はある程度は治るが、時間の経過で効果が変わってくる。
今のように、1時間以内なら怪我も元通りになる事が多い。骨折は、俺が”骨まで治す”と思ってスキルを使うと治るが、他の者が行うと治らない。治される側が骨の概念を理解した上でスキル治療を発動すると、骨が治る事が確認されている。
この司祭は・・・アトフィア教では、骨や身体の概念は教えていないか?解体とかしていないのだろうか?
スキルカードをすばやくしまう。これで、スキル治療が使われたと思うだろう。
「さて、司祭。子供はどうした?」
「わっわしは知らん。聖騎士たちが・・・儂はしらん。神の声に従ったまでだ!」
「そうか・・・その神の声は、聖騎士には聞こえなかったのか?」
聖騎士二人はうつむいたままだ。
「そうだ!儂は優秀だからな。教皇様から直接お声がけしていただいている!期待されているのだ!」
「それで?」
間抜け面を見たいわけではない。
「それで。子供は?1人も居なかったのか?」
「そっそうだ!儂たちは」
剣を司祭の喉元に突きつける。
「どうした?早く言え。子供をどうした?」
剣に力を入れる。殿に少しだけ食い込む。
「しょっしょうがなかった!」
男聖騎士が地面に頭を着きながら叫ぶ。
「黙れ!貴様!」
女聖騎士が男を怒鳴る。
「フラビア。リカルダ。二匹のゴブリンを連れて行け」
「「はっ」」
まだなにか怒鳴っている
「フラビア。リカルダ。煩いようなら、足か腕を切ってでも黙らせろ」
「「かしこまりました」」
さて、男聖騎士の方を見る。
「さて、お前は、話ができるのだな?」
「はっはい。はい。なんでも・・・お話します。話しますから・・・命だけは、命だけは・・・」
「いいだろう。考慮してやろう」
「はっはい!子供は・・・司祭と、連隊長の命令で・・・」
「どうした?言えよ?」
シロは立ち上がって、俺の後ろに控えるような格好になっているが、剣を握っている手が震えているのが解る。
「喰ったな?」
「・・・・・・・はい」「きっきさまぁぁぁぁ!!!!」
「シロ。控えろ!俺が話をしている!」
シロが握っている剣の柄に手を添えて黙らせる。
「申し訳ありません。ノーネーム様」
「謝罪を受け入れる」
シロの剣から手を離して、男聖騎士を見る。
「なぜ?なんて・・・わかりきったことだよな。20名を超える人数が急にあの規模の集落に来れば、食料なんてあっという間になくなるだろう。それに、自分たちのほうが身分が上だとでも勘違いした者。ピクニック気分できた戦場で地獄を感じて・・・そうだな、場所から考えれば、2-3日程度は逃げたのだろう。その間、命の危険を感じていたのだろうな。それが集落に入って緊張が緩んだ。集落も最初は食料を提供した。でも、集落の女を提供させ始めた辺りで拒絶反応が出たのだろう。食料はもう無いとでも言ったのだろう、誰が始めたのかわからないけど、幼児を殺して親に食べさせたのだろう。それからは坂道を転がるような感じなのだろうな」
殺した女も食べていたかも知れない。
集落の前に並べられた死体が少しばかり不思議だったがこれなら納得がいく。
子供を殺す時に親を殺した。その肉を集落の者が”赦しの儀式”の形にしたのだろう。許されるのなら・・・神の前で懺悔したいと思ったのだろう。聖騎士がフラフラだったのも、人肉を食べた事への忌避感なのかも知れないし、酒に逃げたのかも知れない。それ以上に、集落の周りの状況から数日くらい寝ていないのかも知れない。
「どうした?話せよ?俺が言った事で間違いはないのか?」
「・・・私は、やめようと・・・」
「そんなことを聞きたいわけではない」
男の所まで歩いていって、頭を踏んづけてから問い続ける。
「子供は美味かったか?」
「・・・っ・・・私は、私は、命令・・」
まだわからないようだ
「命令?誰に?」
答えは決っている。
「神に・・・そう、神が全部お認めになった。司祭が神の声を聞いた!」
やはりな。
正当化するのに、神を使っている。これ以上は、会話にならない。
「そうか・・・わかった」
「それでは・・・私は?」
シロの方を見る。シロは、俺を見つめる目からは大粒の涙を流している。もしかしたら、何かが壊れたのかも知れない。
「殺しはしない。それこそ、判断は神に任せよう。さっきの二人を連れてきてくれ」
涙を拭ってからシロが答える
「はっ」
シロが、二人を呼びに行く。
「さて、お前たちの事情はわかった。わかったが、理解できるものではない。俺には判断ができない。近くの街まで連れていて、そこで判断してもらってもいいとは思うが、アトフィア教の司祭と聖騎士は”神の声”が聞こえるのだったな?」
3人は何も言わない。
「俺に判断できないから、神に尋ねる事にした」
驚いたのは、シロたち3人だ。俺が、此奴等を殺すと思っていたのだろう。殺したいのは同じだ。ただ、殺すだけでは気が収まりそうにない。
司祭とかいう奴が、神の声が聞こえた。私を許せといい出している。
それを聞いた女聖騎士も同じ様なことを言い出している。それだけではなく、司祭の神の声は偽物で自分が本物だから、私を助けろとまで言っている。
「煩い。今から、お前たちをどうするか説明する」
なにさまのつもりだと言いはじめる。神の名をだした事で、自分たちが優位な立場になっていると勘違いしているのだろう。
「俺が何者か?そんな事もわからないのか?教えてやるよ。俺は、お前たち人の言葉をしゃべるゴブリンをすぐにでも殺せる立場の者だよ。わかったら黙れ!醜い!」
「ウミ!ここから1番近い、ゴブリンの集落はどこだ?」
縛られている三人がぎょっとする。
シロたちも”はっ”とした顔をする。
『ウミ。返事は、シロやフラビアやリカルダにも聞こえるように言ってくれ』
『ゴブリンは、なさそう。オークなら、2時間位いった所に、10匹程度の集落があるよ?これで大丈夫?』
3人がうなずく。
ウミからの念話も大丈夫なようだ。
「そうか、ゴブリンは無いのか・・・」
ほっとする3人
「オークの集落しかないのか・・・本当は、ゴブリンのほうが良かったのだけどな。オークは乱暴だからな。すぐに殺してしまうからな。オークも楽しめないだろうな」
本当は、そんな事はない。
人も食料として考えている上に、女は苗床としても考えているから丁寧に扱われる。
集落をマークしておいて、3人が死んだら、エントたちに滅ぼさせればいいかな。
シロの方をみる
「シロどうだ?」
「ノーネーム様の御心のままに」
今度は、フラビアだ
「フラビア!」
「御心のままに」
最後になったがリカルダに問いかける
「リカルダ!」
「ノーネーム様。オーク程度なら、倒されてしまうのでは無いのでしょうか?」
リカルダの言っている事は正しい。正しいが間違っても居る。
聖騎士二人は、オーク位なら・・・と思っているようだ。
「そうだな。そうなれば、神に許されたと思えるのではないか?そのためにも鎧もスキルカードも剣もすべて取り上げる。神の試練なのだから、当然の事だよな?」
そんなに甘くはしない。
なんと言っても、神の試練なのだからな。
「はっそれならば!ノーネーム様の御心のままに」
「シロ。フラビア。リカルダ。今から俺が行う事は極秘事項だ!」
「はっノーネーム様!」
3人ともうなずく
「見てしまったら、俺から離れるときは死んだ時になるぞ?それでもいいのか?」
「はい!」「「はっ!」」
重いけど・・・即答してくれた事は、素直に嬉しい。シロやフラビアとリカルダにはかなり酷いことをしている認識がある。
ペネム街に着いたら、しっかりと3人と話し合わないとダメだろうな。少しだけ心を休めてからだけどな。スパイダーかビーナの監視を付けての自由位でいいかなとは思っている。
まずは、司祭からだな。
固有スキルが・・・ない。鑑定しても出てこない。今まではじめての事だ。
聖騎士の二人は、速度向上や命中向上が付いている。女は、スキルレベル4”睡眠無効”なる固有スキルがある。初めて見るスキルだ。抜けるか?
すんなりと盗む事ができた。
手元に、レベル5睡眠無効が出てきた。
ん?固有スキルから奪うことができないと思っていたけど、できる場合もあるのか?種族スキルでなければ奪えるとかなのか?
持っているスキルカードを奪っていく。
レベル5が中心だな。レベル4や3も持っている。集落で奪ったものか?
3人からスキルを全部奪った。
次は、鎧や隠している物を全部奪う。
触りながら、収納するだけの簡単な仕事だ。奪った物は、後で処分すればいいだろう。男児と女児に渡してもいい。
下着姿になった三人を改めて拘束し直して、ライに大きくなってもらって、ライの乗せる。
ウミを案内にして、オークの集落を目指す事にする。
「シロ。フラビア。リカルダ。エリンの所まで戻って待っていてもらえるか?」
「ノーネーム様は?」
「俺は、このゴミを始末してくる」
「それならば!私もご一緒いたします!」
シロがついてくると言ってきた。1人でも十分だし、すきを与えれば3人で逃げる算段でもするのかと思ったのだが・・・。逃がすつもりはないけどな。
「そうか?俺1人でもいいのだぞ?3人で話をしていてもいいぞ?」
「いえ、私は、ノーネーム様に着いていきます!」
「ノーネーム様。シロ様をお連れ下さい」「お願いします」
そうか・・・それなら、それでもいい。
「カイ。二人を、馬車の所まで頼む」
『かしこまりました』
「二人もそれでいいよな?」
「「はっ」」
二人は、跪いて頭を下げる。
臣下にしたつもりは無いけど、上位者にやる礼だよな?今、考えても仕方がない。
「ウミ。俺とシロを乗せて、オークの集落まで行ってくれ」
『うん!』
「ライ。ついてきてくれ」
『わかった!』
ウミは、ライの速度に合わせて移動を開始した。
シロは着ていた鎧を脱いで返り血は拭き取っているが、汗や着いてしまった血の匂いはごまかせない。俺に抱きついてからそれに気がついたのだろう。
「カズト様。申し訳ありません」
「どうした?」
「わたし・・汗や血が・・・」
「あぁ気にしないぞ。汗は、シロが頑張った証だろう?血はしょうがないだろう?」
「・・・はい。スキル清掃が使えればよかったのですが・・・」
「スキル清掃?有るぞ?使うか?」
「え?よろしいのですか?」
「あぁ」
スキルカードを取り出して、シロに渡す。
受け取りはしたものの使うことを戸惑っていたので、スキルに触れてスキルを発動させた。対象を指定しないで発動したら、スキルカードを触っている二人が対象になることは実験でわかっていた。
これで、俺とシロから汗と血の匂いがなくなった。
「え?」
「どうした?」
「いま、カズト様は何をされたのですか?」
「何って?スキル清掃を発動させただけだぞ?」
「でも、私が持っていました・・・それに、カズト様が発動してどうして私まで・・・え?」
身体を少し離して、服の中を覗き込む。女の子としてはちょっと減点の行動だけど、確認したくなったのだろう。
俺が見ている事に気がついて、あわてて、服の合わせ目を戻して、真っ赤になる。
「どうした?」
「いえ・・・身体だけではなく、着ていた物まで匂いが取れて・・・それで・・・」
「あぁ綺麗になっているだろう?」
「・・・はっはい」
「スキル清掃ってそんな物だろう?」
「・・・いえ・・あっ今度時間が有る時に教えて下さい。カズト様」
「ペネム街に着いてから、お前たちの今後の事や考えを聞いてからだけどな」
「はい。わかっております」
2時間と言っていたが、感覚的には90分だろうな。
洞窟を根城にしているようだ。
しまった・・・な。アントを・・・ライが居るからできるな。
『ライ。オークの洞窟の入り口は、あそこだけなのか、アントに確認させてくれ』
『わかった』
5分位で調査が終わったようだ
『あるじ。入り口はあそこだけみたいだよ。小さな穴は有るけど、オークは通れないって』
『人も無理そうか?』
『うん。眷属が通れる位の穴だって』
空気穴が開いているだけだな。
『中は何体くらい居た?』
『全部で13体で、人が奥で死んでいたって』
『わかった。ありがとう』
そうか、既に人の味を覚えたオークだったのだな。
オーク洞窟から10m位離れた場所にスキルで作り出した岩を並べていく。登ろうと思えば、登れる程度の高さだ。
「ライ。オークの洞窟の目の前に、上でうるさく喚いているゴミを捨ててきてくれ」
『わかった』
ライが動き出した事で誘ったのだろう。
なにか喚いている。
「神の声が聞こえるのなら、助かる方法でも教えてもらえよ。オークと仲良くなる方法でも教えてくれるかも知れないぞ。そこのオークは、既に人を食べているし、犯している。お前たちの先輩が、洞窟の奥にいるらしいから、しっかりと挨拶しておくようにな」
オークが、ライに気がついたが、ライには中途半端な攻撃は通じない。オークごときが持つ武器では傷つかない。
ライが背中に乗っていた3匹のゴミを襲ってきたオークの前に投げ出す。
3人の悲鳴が聞こえる。オークは洞窟から援軍が出てくるが、目の前に出された餌の方に注意が移っている。ライは、そのまま悠々と戻ってきた。
「ライ。お疲れ様。ウミ。ライ。シロ。エリンの所に戻るか?」
『はい』『うん』
「カズト様。わかりました」
ライのバッグがないので、カイの頭上に乗る。俺が前にまたがって、後ろからシロが抱きつく格好になるのは前と同じだ。
「シロ」
「はい」
「俺のことを、外道だと思うか?」
「・・・私にはわかりません。私は、神が言っている事だけが・・・真実だと思っていました。私の総てであり、私の正義でした」
「あぁ」
「父が粛清されて、考えていました。神はなぜ私から父を奪ったのだ?父が間違っていたのか?」
「そうか・・・」
「今回の遠征も、獣人が人族を迫害していると神から言われてそれを助けるためでした」
「そうか・・・」
「領主や副長と話をして、違うのではないかと思い、二人に調べさせました」
「二人?フラビアとリカルダか?」
「そうです。二人は、領主と副長と帯同していた司祭たちが、獣人から富とダンジョンを奪うと言っていました」
「そんな感じだったのだな」
「はい。それで、私たちは話が違うと司祭に詰め寄りましたが・・・」
「あぁそうだったのだな」
「カズト様。私は・・・カズト様の事を、外道だとは思えません。私たちは、それだけの事をしたのです」
「そう思えるのはいいけど、話は違うからな。俺は、アトフィア教がした事を・・・違うな。俺たちの街を守る為に動いただけだ」
「はい」
「そこまでは俺は誰から非難されても構わない。ただ、今回は俺は俺の感情のまま行動した」
「・・・はい」
「その行いが悪いとは思っていない。思っていないが・・・」
後ろから抱きついているシロの腕の力が強くなる。
体が温かい。シロは生きている。同じ生きている人間なのだ。
「なぁシロ」
「はい。カズト様」
「葬送の儀式を仕切れるか?」
「人数が居ないので・・・簡略式になってしまいます」
「そうか・・・あの集落を送ってやってくれないか?俺の命令でお前たちが殺した聖騎士も一緒にな」
「・・・はい」
「その後で、エリンにお願いして、ブレスで浄化してもらおう」
「・・・はい」
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