第七十八話

/*** カズト・ツクモ Side ***/


「ツクモ殿。お時間を頂き申し訳ありません」

「いや、いいですよ。ミュルダの新領主様に、昼前までは宿に居ると約束しているだけで、他に約束はありませんからね」


 朝から来るとは思っていたが、タイミングとしては悪くないのだろう。ミュルダの新領主との話し合いもしてきて、決裂すると考えての・・・この時間だったのだろう。


「そうだったのですね」


 白々しい

 まぁいい冒険者ギルドの関係者よりは話ができそうだな。


「そちらの方ははじめましてですよね?」

「そうでした!鍛冶師長老の1人で」「ゲラルトだ。儂は、そいつらに付いてきたが、ツクモ殿に頼みたい事がある。最後で構わない話を聞いてもらえないか?」

「えぇいいですよ。それでは、シュナイダー殿と、リヒャルト殿の話が終わりましたら、話をしましょう」

「すまない。シュナイダー。儂の事は気にしないでくれ」


 ほぉ・・・ゲラルト殿は、シュナイダー殿と同格という位置づけなのだな。


「ツクモ殿」

「何でしょう?」


 リヒャルトが最初の相手なのかな?


「まずは、お礼を言わせてくれ」

「お礼?」

「はい。豹族をお救いいただきました」


 あっハーフか?

 鑑定したら、種族がハーフになっている。


「俺にも都合があったからな」

「それでもです。ツクモ殿が来られなかったら、数多くの豹族は殺されるか、捕らえられるかしていたと思います」

「わかった。その気持は受け取ろう。でも、わざわざ朝早くから”そのこと”を伝えに来たわけでは無いのだろう?」


 シュナイダー殿の方を見る。

 こういう爺・・・沢山見てきたな。好々爺しているけど、懐にナイフを忍ばせているのだよな。そのナイフを味方だったものにも平気で振るうからな。


「ツクモ殿。儂らは、貴殿にすべてを委ねます。ミュルダの商人。商隊。職人。すべて貴殿の好きに使ってくれ」


 はぁヤバいやつだな。

 いきなりすぎるだろう。それに、リヒャルトが驚いた顔をしている事から、シュナイダー殿の独断だろう。筋の通しが終わっているのか?


「シュナイダー殿。言っている意味がわからないな。俺は、そんな物は望んでいない」

「解っています。多分、ツクモ殿は、”自由”に過ごせればいいのだろう?」

「なぜそう思う?」


 ダメだ。

 勝てる気がしない。抵抗してみるけど、あまり抵抗していると、ミュルダの領主を任されてしまうだろう。


「なぜ?面白い聞き方をされる。ミュルダ殿への接し方、”えすえー”や”ぴーえー”と呼ばれている施設。獣人族の使い方。今のミュルダの領主のような小物なら考えない」

「ほぉ・・・」

「皆が”富む”ように考えられているのだろう?自分は、眷属と自由に暮らすために、慕って集まった者たちだけで生活できるようにしているのだろう?」


 転移者か?

 でも、俺が転移する時に、転移や転生者がいない事を条件にしている。鑑定しても、”客人”の称号は出てこない。


「そう思うのか?」

「そうじゃな。ツクモ殿。貴殿は、まだなにか隠しておられる。それがなにかわからないが、儂の”勘”がツクモ殿にすべて任せろと言っておる。そうしたら、獣人族やミュルダ殿の様になれるのだろう?小物臭がするシュイス・ヒュンメルやプロイス・パウマンに従っているよりも楽しいことができそうじゃてな」


 シュナイダー殿の中では確定事項のようだな。ミュルダを売っても構わないという雰囲気がある。


「それはわかった。でも、俺のメリットがないと思わないか?」

「そうじゃな・・・獣人族の街・・・ペネムと呼んでいらっしゃるようじゃが、ペネム街を隠す意味で、ミュルダとアンクラムとサラトガの街を商業の中継地点にしましょうか?そうしたら、ツクモ殿がアンクラムやサラトガを回って状況を確認したり、心配したりする必要ななくなるでしょうし、ペネム街の奥に隠している本当に大切にしている場所が表に出ることもなくなるというのはどうでしょうか?」


 ペネムの奥。誰かが話したとは思わない・・・情報源を探せばいくらでも有るだろう。

 もともと、バレても問題が無いようにはしている。攻められても防げる自信はある。ペネム・ダンジョンが完成すれば、安全性は飛躍的に高まる。

 でも、たしかに、シュナイダー殿が言っている事が実現できたらメリットは大きい。

 居住区やログハウスの秘匿もそうだが、地域色がある食材や情報を集める事ができる。商業の中継点は確かに考えていた。ミュルダだけで良いと思っていたが、アンクラムとサラトガにもその役目が振ることで、違う目的にも使えそうだ。面倒な調整や街同士の連携や値段調整なんかもシュナイダー殿がやるのなら確かにメリットになる。


「そうだな。実現できるかわからないが、確かにメリットだな」

「それでは?」


 シュナイダー殿だけではなく、リヒャルト殿が身を乗り出す。


「魅力的ですが、まだ足りませんね」

「なにが足りないのですか?」


 リヒャルト殿を見る。

 ハーフだと宣言しているが、態度が不明確な状態では重要なポジションを任せられない。


「リヒャルト。ツクモ殿は、お主の気持ちを知りたいという事だ」


 この爺さんすごいな。

 行政区に来てくれないかな?

 ミュルダ老の手助けにはなるだろうし、スーンのいい相談相手になりそうだ。


「俺?」

「お主はどうする?儂は、ツクモ殿の許可が出れば、ペネムの街に居を移すぞ」

「ちょっと待ってくださいよ。俺・・・も、商隊の本拠地を移したいです。俺は、未来を・・・可能性を、ペネムの街に見ました。カズト・ツクモ様お願いいたします。移住をご許可下さい」


 リヒャルト殿は、俺に向き直って、頭を下げた。

 13歳の餓鬼に素直に頭を下げられる人はすごいと思う。俺にできるかと言われたらわからない・・・多分、できないだろう。


「わかった・・・が、シュナイダー殿。1つお聞きしたい。リヒャルト殿の動機はわかった。貴殿は?」

「儂か?儂は、ミュルダの商人が守れればそれでええ。今、ミュルダにはミュルダが抱えられる限界を越えた商人が来ておる。理由はわかっていらっしゃるのだろう。それに儂は・・・これ・・・でな」


 そう言って、シュナイダーは、髪の毛で隠れていた耳を顕にする。

 エルフを思わせる尖った耳・・・耳の先端が切られている。なにか独特の印なのだろうか?


 俺が微妙な雰囲気を出していると、察したのだろう。笑いながら説明してくれた、壮絶な過去の事を・・・。


 シュナイダー殿は、ハーフエルフ。種族にそう出ていたから、そう思っていた。それは間違いはないが、エルフとエントとのハーフで、オリヴィエと同じで、アトフィア教の実験体だ。初期の頃の実験体で、ブルーフォレストに捨てられたところをエントたちに助けられたそうだ。その助けたエント達も人族の冒険者に倒されて、シュナイダー殿は隷属スキルを使われた。鑑定持ちだったのが命を取られないで済んだ理由だ。

 隷属スキルを使われた時に、耳の上半分を切られた。奴隷である事を示す証なのだと言っていた。

 人族の冒険者たちが、サラトガのダンジョンで命を落とすまで隷属生活が続いた。鑑定をうまく使いながら、スキルカードをためて自分自身を開放してから商売を始めた。それから、いろいろあって長老と呼ばれるまでになった。


「そうか・・・シュナイダー殿が根を張っているミュルダがアトフィア教の信者が少ないのは、そういう理由だったのだな」

「結果的にそうなっているだけじゃ」


 任せるだけの技量があり、俺のメリットも存在する。


「カズト・ツクモ様。儂は、主が怖い」

「怖い?」


 なぜに、”殿”から”様”に変わる。前にも思ったが、この世界の住人はいきなりすぎる。


「あぁ怖い。主を鑑定しても、人族と出る。じゃが、主の周りで純粋な人族は1人も居ない。獣人族ばかりではなく、エントやドリュアスも大量に居る」

「それで?」


「アトフィア教に関しての嫌悪感が強い。もしかしたら、儂よりも強いのかもしれない」

「そんな事はないと思うぞ。俺が嫌いなのは、”正義”や”真理”を・・・”神の名”を振りかざして自分の行いを正当化する奴らだけだ、正義なんて生きている”物”の数だけ存在しているだろう。そんな事を言い出すから争いが絶えない。同時期に生きている者同士で、”正しさ”なんて形がなく説明できない物を理由に、相手を貶める事が嫌いなだけだ。俺がそう考えているだけで、共感して欲しいとも思わない。俺の考え自体も俺だけの物だからな。どうせ、同じ時期に生きている者では判断できない。客観的な情報が揃う未来の人間たちが判断すべき事だ」


 やってしまったか?

 まぁもう遅い。俺の考えに賛同できなければ、別にそれはそれでいい。

 商業の長として、ミュルダ/サラトガ/アンクラムの経済を回してくれるだけで十分だ。シュナイダーやリヒャルトの参加がだめになったら、当初の計画に戻せばいいだけだからな。


「・・・・ツクモ様。儂が、長老衆を説得します」

「説得は正直どうでもいい。シュナイダー殿。サラトガ/ミュルダ/アンクラムからアトフィア教を根絶させるのと、商業の街として再興する事は可能か?」

「・・・わかりませぬ」

「何が解れば判断できる?」

「ペネム街から提供できる物が解りませぬ」

「俺は、この後、多分新領主との話がある。それが終わったら、ペネムに帰る予定だ。話し合いがうまくまとまれば、一泊すくらいはするつもりだが・・・。SAとPAを見ながら2~3日かけて帰るつもりだ。移住希望者がいれば一緒に帰る事もできる」


 リヒャルト殿が立ち上がった


「ツクモ様。俺は、あんたについていく。シュナイダー様問題ないよな?」

「あぁ」


「リヒャルト殿。それ「ツクモ様。俺の事は、リヒャルトと呼び捨てにして下さい。俺は、あんたについていくと決めた!!」」


 え?

 まぁいいか・・・今更だよな。


「わかった、リヒャルト。商隊の規模はどのくらいなのだ?」

「俺のところ単体だと、500名を少し越えるくらいだ、普段は100名で商隊を組んで動かしている」

「主な商材は?」

「なんでもだな。商材があれば遠方にでも出かける」

「わかった、少し頼まれてくれないか?」

「いいぜ、なんでも言ってくれ」


 リヒャルトの商隊に、穀物の買い占めを頼んだ。その上で、近隣の村々を回って、人族至上主義者でない村の救済を頼んだ。村ごとの引っ越しでも構わないと条件を付けた。ショナル村で行った様な事をやってもらう。口減らしが必要な村の救済だ。


「それで買った穀物は、ペネムに運べばいいのか?」

「いや、ペネムに大量に持ってこられても腐らせるだけだからな」

「それじゃどうするのですか?」

「そりゃぁもちろん、アンクラムとサラトガで安く売る。利益は考えなくていい。だから、アンクラムとサラトガで飢えに苦しんでいる者たちを救って欲しい」

「俺たちはかまいませんが、かなりのスキルカードが必要ですぜ?」

「あぁ解っている」


 三人を見回す。

 ドワーフのゲラルトはいまいちわからないけど、裏切られたと判断したら殺せばいい。


 別に大きな問題は無いだろう、呼子スキルで、ライを呼び出す。

 いきなり現れたスライムにびっくりした様子だったが、気にしないでライに命じる。


『ライ。スーン呼び出してくれ、レベル5以下のスキルカードを2枚づつ残してもってこいと伝えてくれ』

『わかった・・・あるじ。スーンからだけど、魔核は必要ないのかと聞かれたけど?』


「シュナイダー殿。魔核はすぐにスキルカードに変換できるのか?リヒャルトが買い占めする時に、スキルカードと魔核ではどっちがいい?」

「ツクモ様。儂の事も呼び捨てでお願いします」

「・・・シュナイダー老でどうだ?」

「ハハハ。ミュルダ殿と同じですな。光栄ですな。それから、スキルカードと魔核のどちらがという事じゃが、やはりスキルカードのほうが怪しまれないで済むだろうな。ちなみに、魔核のレベルは?」

「ちょっと待て」


『ライ。スーンが持ってこられる魔核は?』

『今、確認したよ。レベル7穴なしが21個で、不明が沢山。レベル6は100個以上ある。あとは数えられないって?数えたほうがいい?』


「いや、いいよ。シュナイダー老。レベル7魔核が21個で、レベル6は100個程度だ、それ以下の魔核も100以上はある」

「はいぃ?」


 ん?もう一度言ったほうがいいか?


 シュナイダー老ではなく、リヒャルトが答えてくれるのか?


「ツクモ様。レベル7魔核だよな?スキルカードでなくて?」

「あぁ魔核だ」

「ふぅ・・・ツクモ様。魔核のレベル7を交換など・・・できるわけがない。長い間商隊を率いているが、レベル7魔核なんて数回しかみた事が無いぞ!」

「そうなのか?それなら、スキルカードだけになるけど大丈夫か?」

「どのくらいですか?」

「ちょっとまってくれ。ライ。とりあえず、呼んでくれ、外で呼んだほうがいいだろう」


『わかった』


 器用に部屋のドアを開けて出ていく。


 2分くらい経っただろうか、ドアがノックされた。


「大主様」


 スーンが満面の笑みからの会釈する。

 後ろに、フィリーネが控えている事から、荷物持ちに駆り出されたのだろう。帰りはエリンに送らせればいいかな。


「すまんな急に。それで?」

「あっはい。フィリーネ」


 3名は展開についてこれていないのか黙ってしまっている。


 フィリーネが出したのは、大量のスキルカードだ。ざっと見て、4~5千枚程度だろう。


「スーン。これだけか?」

「細かい物もありますので、何に使われるのかと思いまして、レベル3,4,5を中心に持ってまいりました」

「そうか、ありがとう」


 リヒャルトやシュナイダー老が固まってしまっている


「ん?どうした?」

「ツクモ殿・・・これは?」

「あぁ穀物の買い占めに必要だろう?」


「シュナイダー様。俺の感覚がおかしかったら言ってくれ、スキルカードってこんなに準備できる物なのか?」

「さぁな。儂も長い間商人をまとめているが、こんなに多くのカードを見たのは初めてじゃ」


「そうなのか?でも、レベル5程度だぞ?」


 2,000枚あったとしても、2千万程度にしかならない。


「大主様。ライ様から、穀物を買われるという事なので、レベル3の魔核もお持ちしました」

「そうか、ありがとう」


 リヒャルトに、スキルカードと魔核を渡そうとした


「ツクモ様。いいのか?」

「なにが?」

「いや、俺がこれを持って逃げると考えないのか?」

「逃げるのか?その程度のスキルカードで逃げるのなら、その程度の奴だと思うだけだ。そして、俺が関連する施設にはいられなくするだけだ」

「・・・怖いな・・・本当にできそうだからな」

「簡単じゃないが、できるだろうな。もっと直接的に動いてほしければ、魔蟲を向かわせて、空腹や暑い寒いを気にしなくていいようになってもらうだけだからな」

「・・・シュナイダー様。ミュルダは、とんでもない人に・・・喧嘩売ったって事ですか?」


 シュナイダー老が首を縦に振るに留める。


「ツクモ様。改めて、俺は、あんたについていく、これからよろしく頼む。まずは、穀物の買い占めと近隣の村々の救済だな」

「あぁ頼む。救済はおまけだからそれほど気にしなくていい」

「わかった。お任せあれ!俺は、ここで失礼する。早速動きたい」


 そう言って、リヒャルトは部屋から出ていった。


「スーン。シュナイダー老だ。これから、行政区に入ってもらって、商業関係を取りまとめてもらう」

「シュナイダー老。スーンという名前だが・・」「解っている。スーン殿。よろしくお願いする」


「大主様。今後、どうされるのですか?」

「あぁ大筋は、シュナイダー老が提言した、サラトガ/ミュルダ/アンクラムの商業街化する」

「解りました。SA/PAを両方の街にも伸ばしますか?」


 シュナイダー老を交えて話をしたが、途中から、スーンとシュナイダー老の二人でいろいろと話始めていた。


 決まったのは、商業区からサラトガとアンクラムにもSA/PAを要する道を作る事。

 今よりも3つの街が強固になるように、サラトガ-ミュルダ-アンクラムにも道を整備する。こちらはSA/PAは作らない。


 扱う商材は、シュナイダーが帰ってきてから決める事になった。


 大筋の話が決まったので、シュナイダー老は長老衆のところに行くことになった。スーンが説明要員として一緒についていく。


 さて、次は・・・・


「ツクモ殿」

「ゲラルト殿。なんでしょうか?」


 ゲラルト殿との話だが、なんだかこれは早く終わりそうな雰囲気がある。


「ツクモ殿。ツクモ殿は、竜族を支配下に置いているという話じゃが本当か?」

「支配下ではないが、1人預かっている」

「そうか、竜族と交渉ができるのか?」

「どうだろう・・・フィリーネ、俺が泊まっていた部屋わかるか?カイとウミが居る」


 フィリーネの方を見てみるが大丈夫そうだ。


「大丈夫です」

「エリンが居るから起こして来てもらってくれ」


 エリンに聞くのが1番だろう。


「やはり、貴殿が連れていたおなごは竜族なのだな。そうだろう?」

「えぇそうですが、それがなにか?」

「いや、すまん。少し興奮してしまった」


 腕を組んで目を閉じる。

 ドワーフがやるとなにか感じているのかと思えてしまうから不思議だ。


 3分くらい経ってから、フィリーネがエリンを連れてきた。


「パパ!なに?」


 後ろから、カイとウミもついてきている。


「うーん。あっゲラルト殿。それで、何を交渉するのか?」

「え?あっそうじゃった。ツクモ殿も竜族なのか?今、”パパ”と聞こえたが・・・」

「あっこの娘、エリンの癖だから気にしないでくれ。俺は人族ですよ」


「わかった。ドワーフ族の悲願がいくつかある。その中で”竜族の鱗を鍛えし剣と盾”がある。率直に言おう、竜族の鱗が1枚欲しい。交渉できないだろうか?」

「え?鱗?エリン、どうだ?」


「うーん。エリンは、まだ鱗が生え変わらないからダメだけど、商業区に来ている竜たちなら生え変わるから、大丈夫だと思うよ?落ちた物でいいよね?おじちゃん」

「・・・そんな簡単に・・・」


 なんか、今まで張っていた緊張の糸が切れてしまったようにさえ思える。

 身体のちからが抜けて、うなだれてしまっている。


「あっ忘れていた」


 一応、ライに念話で話しかける。


『ライ。そう言えば、竜族の集落で戦った時に、剥ぎ取った鱗何枚か持っていたよな?』

『うん!綺麗だから貰ってきた!彼らも、すぐに生え変わるから気にしないで持って帰ってって言っていたよ!出す?』

『確かに、色もいろいろ有ったよな?』

『うん!』

『試しに全種類二枚ずつあったよな?一枚ずつ出してくれないか?』

『わかった!』


 ライが、数種類の鱗を出す。


「エリン。この鱗を、おじちゃんに渡していいか?」

「うん。大丈夫だよ。お兄ちゃんたちのだよね。パパが欲しくなったら、またもらいに行けばいいよ!」


 ゲラルト殿が口を大きく開けて、ライが出した鱗を見つめている。

 確かに鱗だが、1つの大きさが人の顔くらいの大きさだ。赤/青/茶/緑/白/透明?/黒/紫・・・全部で10枚程度だ。


 剣と盾を作るのだろうから、これだけあれば足りるだろう。


「ゲラルト殿」

「はっ・・・ツクモ殿。これは?」

「あぁ俺たちが、竜族の集落に行った時に、力を示せと言われて、戦った時に、剥ぎ取った物で戦利品として貰ってきた」

「えぇえぇ・・・あっツクモ殿。どれか一枚でいい売ってくれないか?スキルカード・・・は、手持ちが少ない。足りなければ、なんとかかき集める。ミュルダに居るドワーフ族全員に掛け合ってでも集める!売ってくれ!」


 圧力がすごい。

 髭面のおっちゃんに責められても怖いだけだ。


「わかった。わかったから、少し落ち着いてくれ。正直、値段は付けられない」

「そうじゃ・・・ろう・・・な。でも・・・!」

「えぇそうだな。全部渡す。そのかわり、できた剣の中から俺が2本もらうという事でどうだ?」

「それだけでいいのか?これだけの鱗があれば、剣は2-30はできるぞ?」

「でも、盾も作るのだよな?」

「そうだな。それでも10くらいは打てる。その中から2本でいいのか?」

「構わない。最高の物を作ってくれるのだろう?」

「もちろんだ!条件がそれだけじゃ儂が納得できん。シュナイダーではないが、ペネムの街には、職人は居るのか?」


 おっ!流れとしては最高だな


「腕のいい人を探しては居るのですが・・・今は、アンクラムで鍛冶屋をしていた、ヤルノが取り”まとめ”をしているだけだ」

「ヤルノ?アンクラムの?」

「えぇそうだな」

「そうか・・・ヤルノか・・・・」

「ヤルノを知っているのか?」

「知っているもなにも、奴は儂の弟子じゃ」

「え?そうなのか?」

「あぁ奴が取りまとめているのなら、間違いは無いだろう、よし儂が現場をまとめて、奴に交渉事をやらせるか・・・そうしたら、儂は竜族の鱗で剣を打っていられる・・・いい考えだな」


 なにやら、独り言が最後に混じっていたようだが、職人が来てくれるのは嬉しい。

 いろいろ作りたい物もある。


 前向きな話は楽しいけど・・・この後の来客予定・・・面倒だな。

 シュナイダー老とミュルダ老に丸投げできないかな?


 襲ってきてくれたら・・・楽なのだけどな?

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