数多の世界を渡って
フレイクス
第1部
プロローグまたは9
「―――きみ、死にたいの?」
誰もいなかった屋上に、彼女はいた。
それに驚き、同時に見られたことの焦りだとか羞恥だとかが入り混じった、そんな感情を抱く。
「―――――っ、ああ、そのつもりだ。・・・止めるつもりか?」
・・・もしかしたら、俺は彼女に止めてもらいたかったのかもしれない。
けれど、彼女はこちらに背を向けたまま、心外だとでもいうかのように答えた。
「私は他人の意志を尊重するの。・・・だから、止めないよ。」
「・・・そうか。」
彼女がこの場の最後の一人。これで俺一人だ。
”たとえ俺は死のうとも、世界は廻り続ける。”
いつだったか、何かの本で見たフレーズ。
意味はそこまで理解してるわけじゃないけれど。
俺は輪から外れたい。
どうせこの世界は俺がいなくたって廻るんだ。
だから、いなくなっても大丈夫だ。
あいつは俺が逃げたっていうかもしれない。
それでも、かまわない。
「・・・次に生まれ変わったなら。・・・。」
・・・所詮、夢、か・・・。
空が明け始める。
時間が無くなるかもしれない。
乗り越えたフェンスの先から、今一度下を見下ろす。
しがらみに縛られた光が今日も明るい。
先ほどまで感じていた恐怖が、いつのまにか消えていた。
体に感じる浮遊感。
少し、懐かしい。
不思議と、みんなに引っ張られてるみたいだ。
そんななか、彼女のことを思う。
初めて会った彼女だけれど。
なぜか昔からの知り合いみたいだった。
それに、なにか・・・。
あいつと、同じ感じがする。
そんな、不思議な少女。
どうかあの、残酷で優しい少女に。
・・・少女が、救われるように・・・。
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