サイバーライフ!

ゆちゃん

本編

第1話 サイバーライフ

#1

 一昔前、世間ではユーチューバ―という職業の認知が深まり、タレントや俳優などと同等の立場として扱われるようになった。それと同時にバーチャルユーチューバ―という2Dもしくは3Dのモデルを使用した動画配信の仕方が一世を風靡した。

 このバーチャルユーチューバ―という存在が、後に僕たちにとって身近な存在になることはすぐ後の話である。


『VL』――バーチャルライフ。

 いわゆるサマーウォーズに登場するOZのようなもので、パソコン、スマートフォン、タブレットのみに対応している。仮想空間にて自分好みの3Dアバターを作成しそのアバターを使って買い物からゲーム、行政手続きなど様々なサービスができる。

 国が直々に発表したアプリのためセキュリティは万全。安心安全の便利アプリなのだ。

 しかし、発表当初は「子供の教育に悪い」「ゲーム離れ出来なくなる」など批判の声が多かったものの、いざ初めて見ればみんなその便利さに文句ひとつ言えないほどの出来だった。

 更に、脱ニートへの道へも繋がることが発覚。VL上でも仕事が可能なため、家から出ずとも就職することが出来るのである。これが育児と仕事を両立させたり、副業として始めるのにも丁度良くとても好評であった。

 今では人口の約九割がVLを使用しており、LINEやTwitterに続くダウンロード数らしい。



「ぶいえるぅ?」

「そお。知ってるでしょ、バーチャルライフ」


 弁当を頬張る俺の横に立つのはつりあがった瞳に泣きボクロ、花の飾りがついているゴムでサイドテールをした気の強い俺の幼馴染――立花杏たちばなあんずだった。

 彼女の言葉を右から左へ受け流せばサクリ、心地の良い音を奏でながら春巻きを口の中へ放り込んだ。うん、おいしい。


「ねえ、聞いてる?」

「聞いてるよ。えっと、なんだっけ…ボイル?」

「ブイエル!」

「そうそう、それ。で、VLがなんだって?」

「だからあ、りょうもログインしたらわかるからしてみてって」


 めんどくさい、という言葉を咀嚼した春巻きと一緒に飲み込みポケットからスマートフォンを取り出す。電源を入れ、アプリのロゴをタップする。白い画面にまるいうさぎのような可愛らしいキャラクターが出現し、見た目とは想像のつかないドスの利いた声であいさつと共にログインボーナスを渡してくる。今のところ何も変化は感じられない。


「あ、これこれ。プレゼントボックス見て」


 言われるがままにプレゼントボックスを開けば、ログインボーナスの他にもうひとつ何かが届いていた。




 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



 オメデトウ!

 君はVZの宣伝担当に任命された!


 さあ、これを使ってVLの魅力を存分に宣伝して

 ね!


 ps.キミのお友達、アンズちゃんもキミと同じく

   宣伝担当に任命されたよ!

    二人で協力してVLを有名にしてね☆


              VL宣伝部長



 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□




 添付されていたプレゼントを開けると中から出てきたものは、


「――…なんだこれ、銃?」

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