第19話

1週間が地獄のようで天国のようなふわふわして落ち着かない長さを感じた。

もう、へとへとだ。いっそ息の根止めて下さい。

「おはよう広軌。それと、お誕生日おめでとう」

「ナギさん、おはようございます、ありがとうございます」

今日もオレを見上げる姿が可愛いなあ。顔を見る事数百回に及ぶけど、毎回可愛いとしか思えないし、たまに綺麗だとか思う。本当に年上なのか。神様は罪な人間をこの世に送ったものだ。

「今日はなるべく早く帰る」

心なしか、スーツが真新しい気がする。特別な用事があったりするのかな。

「行ってきます」

そろそろ薄手のコートを羽織って欲しいな。風邪でもひいたら大変だ。

「行ってらっしゃい」

オレも行きますか。

腹を決めるのはオレの方だ。うまく1人立ち出来るかな。

随分、甘えたから、この癖を矯正しないと。


もう、感謝しか無い。



「聞いてるか。身元保証人とは就職時に同意書を求められるんだ。万が一、会社に損害等を発生させた場合、その補償をする責任を負う。それは親族が引き受けるが、お前の場合は親族がいない。だから俺が引き受ける」

また、これか。

せめて部屋着に着替えてから聞きたい話だ。これじゃ、面談みたい。

「大学入学時の奨学金は借りない方向でいいな」

「はい、返還が大変ですよね」

「まずは入学しないと何も始まらないが。その辺りは大丈夫か? 進学希望者」

「センター試験まで乗り切ります。大丈夫です」

特に成績が落ち込んでいるのでも無く、心は壊れたけど、いけるだろう。

「じゃあ、これで未成年後見人の役目は終わりだ」

あ、やっぱり。

この時が来たんだ。

「ありがとうございました。頑張って生きていきます」

「社会人まで面倒見ると言っているんだが」

はい?

「身元保証人の話を上の空で聞いていたのは分かっている。原因はこれだろう」

指すものが違います。

テーブルに置かれたケーキとかじゃなくてですね!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る