第12話 父親不在

私の父親は昔から魚に関する仕事をしていた。


会社が倒産した後も、また魚の仕事を起こしていたようだ。


その仕事の関連で私が8歳前後の頃から

長く家をあけることが出てきた。


チラリと耳にしたところによると外国とも取引をしていたようだ。


けれどお金は儲けられていないようで

そういう事もあってだろうか?


母はしきりに離婚したい、する、と言い出すようになった。


今は離婚する夫婦は3組に1組と言われるほど多くなったが

私が子どもの頃はもっとずっと少なく、しかも田舎で


離婚したところの子は

遠巻きに見られながら「あの子のところ離婚したんだってー」と囁かれるような

状態だった。


親が離婚したら恥ずかしい、そう思ってしまうような風潮だったのだ。


だから私も最初の頃は離婚してほしくないと思っていた。


だけど日ごとに母の父に対するヒステリーは酷くなり


「もういい、こんなケンカ聞き続けるなら離婚すればいい」


と思うように変化していった。


父も母のヒステリーのためだろうか?仕事が忙しかったのだろうか

やはり家をあける日が続いていた。


そんな小学4年になったある日、音信不通だったSにいちゃんがやってきた。

前に赤ちゃんの時に遊んであげていた子が入院したらしいのだ。

命には別状無いものだったが近くの病院だったので私もお見舞いに行った。


久しぶりに会った奥さんはお腹が大きくなっていて

もう少ししたら生まれるようだ。


父の不在続きで寂しかったところに

Sにいちゃん家族が戻ってきて

私の気持ちは少し嬉しくなっていた。

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