仮面のワタシに殺される私。

文月綾花

自殺計画

裏切られたからでも、何でもなく、ただ無性に人を怖がった。

だから、人を信じられなかった。


人間は汚い感情を持っていて、それを隠すためにキレイな感情を繕っている。

幼いワタシは信じ、勝手に恐怖を覚えた。


人に本心を見せるものか、誰も信じられないのだから。

自分の心に、立派な仮面を着けて外すことはなかった。

仮面は唯一の心の支えで、ワタシが生きていく中で無くてはならないものとなった。

だからこそ、崩れるなんて思ってもみなかった。


しかし……、

仮面に侵され、勝手な恐怖心は膨れ上がり、

ワタシ自身の仮面、その内側も心も、ガタガタと音をたて崩れてしまった。


苦しかった。

生きる価値のない人間だと思った。

ワタシは、もうこの社会では生きられないと思った。


「死」という存在が脳裏から離れなくて、

…どうやったら死ねるのだろう

…今、このタイミングなら死ねるだろうか

なんて、いつ何時も「死」を感じ、怯えていた。


あぁ、もういっそ死んでしまった方が楽になれるかもしれない。


ワタシは、「死」に蝕まれていた。


脳内で何度も、自殺の計画を立てては崩し、立て直した。

そうすれば、この日に近づけば、私は楽になれると信じられるようになった。


自殺の計画は、ワタシの中で完璧になっていった。


これでいいのだ。

生きる価値もない人間なのだから、人間はみんな汚いのだから、

ワタシが死んだとしても、影響はない。

ワタシが死んだとしても、すぐに忘れられる。


ニュースで見た、自殺をした中学生の女の子は、

「私が死ぬことで、あいつらに復讐する。」

なんて、言っていたっけ。


死んだところで復讐なんてできるわけがない。

死んだ人間は、忘れられるんだよ。


だからね、

忘れてほしい、ワタシが生きていた証そのものを消してほしい。


そう、私は死にたい。

「死」に侵されているのではない、ワタシ自身で選んだのだ。


そう思って疑わなかった。


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