第5話 僕は作文が苦手だった

 小学校中学校時代の話です。

 自分は作文が苦手でした。夏休みの宿題に読書感想文ってありましたよね。あれ、いつも一番最後に残ってました。最終日の夜中、涙を流しながら書いていた記憶があります。


 そんな作文が苦手だった少年が、年を経て何故ここで書いているのか?

 謎ですね。とりあえず昔を振り返ってみましょうか。


 自分はですね。自慢じゃあないんですが、勉強大嫌いでしたよ。

 授業中は落書きしているか、妄想にふけっているか、寝てるかです。落書きは人物の写真や肖像画があるとヒゲを書き鼻水をつけ必ず汚します。昨夜見たマジンガーのロケットパンチやら、ゲッターの合体やら、教科書の端っこやノートの端っこに好きなだけ書いてました。マジンガーみたいなパクリロボなんかも一生懸命書いてましたね。パラパラ漫画も大好きだった。えへ。

 そんな授業をまともに聞かず、ノートもとらず(落書きだらけ)の少年が、いきなり鉛筆を持たされさあ書けと言われて何か書けるか?って話ですよ。思考の方向性が一致しないんですね。「光子力ビームとブレストファイアの違いを説明せよ」とかなら原稿用紙3枚は楽勝なんでしょうけどね。走れメロスについて書けとか勘弁してくれよって話です。興味のない本を無理やり読んで、興味のない作文を無理やり書くのってものすごい苦痛なんだって、先生方には理解できないんだろうな。

 理由の一つが、学校の勉強と自分の意識が相当ずれていたって事です。

 もう一つ理由があったんですよ。

 これは自動車の免許を取った時に気が付いたんですね。

 自分は手先が鈍いんです。

 よく、時間内にどれだけチェック出来るかみたいな試験があるんですが、ああいうの全然ダメなんですよ。字を書くのも遅いし汚い。反射神経とかが弱いんだろうか?それとも性格的にゆっくりじゃないとダメだとかそういうのだろうか。とにかく指先がついていかないんですね。

 これが文章を書いている時に悪い影響を及ぼしているのではないかと思っているんです。思考に指先がついていけなくて、イメージ通りの文章が書けないんですよ。体育の成績は普通だったから自分が特別鈍いと思ったことはなかったんだけど、授業サボって落書きばかりしていたんで、急いでノートを取るとかそういう訓練を一切していない訳で、それで指先が鈍いのかと思ってみたりするのです。

 ところがですね。PCのタイピングを練習してある程度速度が出せるようになってくると、どうも文章の世界が変わってきたんですね。自分の思考速度に指先が追い付いてきているんです。手で書くと全然ダメだったのに、キーボード叩くのならそれなりにイケるんですよ。何でかな?あ、ワープロ三級くらいですよ。そんなに早くはない。でも手書きよりは全然早い。


 結論。


 学校で書かされる作文は自分の思考とは異なっている。

 手書きの文字は遅いし苦手で、イメージ通りの文章にならない。


 そうだったんだね。理由を分析してみるとそれなりの答が出てしまった。

 今は、妄想の赴くまま書きたいことをそのまま書いてます。手書きよりもキーボードの方が速いんで、わりとイメージ通りに書けるんです。


 作文の苦手だった少年が今は小説を書いている不思議の理由でした。






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