第56話待ち合わせ
世界が終わるって時に、私は小説を書いていた。
私には家族もいなければ恋人もいない、馬鹿騒ぎする友人もいない。
ずっといじめられていた私にとって本だけが友人だった。
だから小説を書くのだ。
後二ヶ月で終わると言う世界。
間に合うのか?
そう思いながら書いている。
残り二週間を切った時、ネットに上げていた私の小説にイイねがついた。
私は初めてついたコメントに舞い上がった。
コメントは的確だった。
つまらないところはつまらない面白いところは面白いとはっきりと書いてあった。
つまらないと言われるのはきつかったけど、面白いと言われるのは想像以上に嬉しかった。
誰のために書いていたわけじゃないけど、張り合いが出た。
充実した日々を過ごせた。
ついに世界が終わると言う当日。
結局小説は終わらなかった。
私はコメントをしてくれた人にお礼を言った。
すると会えませんか?と返事があった。
私はすぐに返事をした。
待ち合わせの場所は行くのに二時間かかる。
世界が終わるまであと一時間四十五分。
間に合うか?
私は最後まで小説を書いてコメントを貰った方が良かったのか、十分でも一分でも直に会えることの方が良かったのかわからなかった。
走りながらそんなことばかり考えていた。
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