#2

南国の空はきっと甘いんだろうと彼女は思った。

ここはとある南国。

この南国で彼女は育ち、大学を出てからは地元のみんなともっと寄りそいたいと心のケアマネジメントに関わる仕事をしていた。

いつもの忙しさから抜け出すように今日は休日を取っており、海辺近くまで来ていた。

ハイビスカスが染め物のように赤々とし、

石垣の屋根屋根がなんとも愛しい。

そんな風景にブラブラ歩いているとふと行った事のない道があることに気づいた。

こんな道あったかなと興味本位くらいで歩いて見ることにした。

予想とは裏腹に何も無い道が続く。

外したかなと思った時、ザアンと潮の匂いが

鼻をくすぐった。

海だ。海が青く並んでいる。

だがまさか、こんな所に海が広がっていたなんて・・・

長年住んでいながら、気づかなかった隠れた名所。好奇心旺盛な彼女は海に心奪われながら浜に跡を付けて行く。

そしてとある物が視界に入った。

植物を纏い、腐りかけの木材で建てられた小さな小屋。

普通の人からすれば、ただの薄気味悪い小屋だが、彼女からすれば例外と言えよう。

彼女の好奇心がその先へと進みたがり、ゆっくりとドアのぎこちない音を鳴らし、そっと

顔を覗く。

回りには本が天井に着きそうなくらい山積みでかなり埃臭く、地面には何かの書類らしき物が散らばっていた。

そして真ん中に人が、いた。

見た目からして大学生くらいだろうか?

結ばれた金髪が特徴の少女である。

ただ、その顔は俯いていて、どこか魂が抜けたような感じなのだ。

恐る恐る近づいて声をかけるも返事をは無い。体調が悪い可能性もあるし、改めて顔を覗いて━━━

意味が分からなかった。

混乱した。

動揺した。

本当に何なんだ!

俯むげな少女の右顔が‘機械’なのだ。

あまりの緻密性に特殊メイクでは出せない生々しさがあったのだ。

そしてその時、ゆっくりとこの顔が上がり、

こう呟いた。

「あなたは、私の、ダーリン?」

「・・・えっ?」

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