Part.4 瞬殺

 朝食の席でステラの登下校にソテルが同行することが出来なくなったことを伝えるとステラは少しつまらなそうな顔をしたが渋々と言った様子で納得した。


 ソテルはブリックスの許可を取り、庭に物置小屋を組み立てると、小屋の中に地下室を作った。地下室への入り口は樽や木箱で隠し、地下の隠し部屋で一心不乱に魔法の開発に努めた。



 来る日も来る日も魔法の開発を続け、一ヶ月ほどたった頃、それは完成した。


 試作の状態だが、その魔法は姿を隠す事は出来なくとも欺くことに関しては非常に長けていた。その魔法は髪を伸ばし漆黒に染め上げ、服も黒一色、顔は青白くなり、その姿は完全に怪しい魔女や邪道士の形をしていて、到底近づこうとも声を掛けようとも思えない。その怪しさ故警備を呼ばれる可能性すらある事が難点だろう。



 完成した喜びを誰かに伝えたい一心でソテルは屋敷に向かうと、仕事が休みだったアリシアに声を掛けた。



「アリシ――」



次の瞬間ソテルは気絶した。危機感を持たぬ物の危うさと言ったらない。ブリックスのそんな言葉が脳裏を駆け巡った。

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