Part.14 何故かみんな水着。

 サウナを終え、リフレッシュが完了した二人は再び水魔法を使って魔力の出力を調整する練習をしていた。サウナに入る前と比べ見違えるように上手くなっていたアリステラはサウナの効能に魔法上達もあるのでは無いかと言い始め、サウナは凄いと興奮気味に語った。もちろんそんな効果は無い。



「さて、それじゃあそろそろ水玉の練習でもしようか。基本は水道と同じく水が出るイメージをするんだけど、水が流れないように留めるイメージが必要だ。結構難しいけどアリステラならきっと出来るから頑張って。ある程度水が溜まったら蛇口を閉めて、その後どうやって水を留めておくのか、自分で想像してみてやってみて」


「はい!」



 元気よく返事をするとアリステラは水を出す。最初の一回は水が流れ、こぼれだしてしまった。アリステラは首をかしげると同じくもう一度水玉を作ろうとした。今度は水玉が膨れ上がるようにその場に留まっていた。が、水玉は破裂し飛び散った。



「ははっ、またビチャビチャじゃないか」


「うぅ~……こんなことなら水着のまま練習しておけば良かった……」


「でも凄いじゃ無いか、最後は弾けちゃったけど水はちゃんと玉になってたし、もう一度やったら成功するんじゃないかな?」



 準備が整ったところでアリステラは目を見開き、もう一度集中した。先ほどと同じく水の玉が膨らみ、やがて一定の大きさで留まった。弾けることも無く成功した。



「っ! 先生! やりました! できま――」



 アリステラが集中を解くと水の玉はアリステラの頭に水を吐き出し始めた。ソテルは無言で見つめ。アリステラは肩を落としがっくりとうなだれた。



「なんとなくわかった。アリステラは風船をイメージしていたんだね?」


「はい、でもこれだと口を締めないとこぼれちゃうんですね……」


「何事もやってみないとわからないし初めてでここまで出来るなんて凄いよ。今回のことはどの魔法でも共通することだからアリステラならいろんな魔法を作ることが出来ると思う。構造を理解して、形状を想像して、イメージを明確にする。簡単そうだけどそれが出来るには出来上がるものを正しく創造するだけの知識が必要だ。アリステラはそれが出来るんだからだいじょうぶだよ!」


「ちなみに先生は水玉を作る時どんなイメージで作ってるんですか?」



 桃色濡れ鼠がソテルに問いかける。



「俺はゼリーで外側包んで中に水を入れてるかな」


「ゼリーですか?」


「うん。でもあくまでこれは俺のやり方だからアリステラも自分のやりやすい形を探してみると良い。もちろんゼリーを試してみるのも良いと思うけど」


「早速やってみます!」



 と意気込んだアリステラは濡れ鼠のままゼリーを形成し崩壊。ゼリー状の水を被り、髪も衣服もベタベタになった。



「まぁこうなるから自分のやり方を見つけるのが一番だね」


「うぅ、気持ち悪いぃ……」


「そのままでいるのもそろそろ辛いだろうから崩壊の手順を加えてみようか」


「最初に見せてくれたアレですね……」



 よほど今の状態が気持ち悪いのだろう、アリステラは元気なく返事をする。



「まず手順としては今そこにある自分の作った魔法の核となってる自分の魔力を引っこ抜いて大気中に帰すイメージとでも言えば良いのかな。それで完了する」


「え、そんな簡単なんですか?」


「うん。まぁ作るのは難しいけど壊すのは簡単って言う所は魔法も自然物も構造物という点では同じって事だね。試しにそのゼリーの魔法核を抜いてごらん? 勝手に瓦解していくはずだよ」



 アリステラが目を閉じるとゼリー状のものが消えて無くなった。それに続き、全身を濡らしていた水の魔法も解除したらしく、アリステラは元に戻った。



「すごい! これならどんな魔法でも対処するのは簡単ですね!」


「うん、でもこれは水魔法だから良かったけど、火炎魔法で負ったやけど、風魔法でついた切り傷、土魔法でこすった擦り傷とか、そういった二次被害までは治せないから魔法の扱いには気をつけなきゃ駄目だよ? あくまで分解できるのは魔法そのものだけ、副次的に齎されるものまでは直せない事をちゃんと覚えておいてね」


「はい! でもそういった時のために治癒魔法があるんですよね?」


「うーん。治癒魔法は少し特別でイメージをしづらいよね。そもそも治癒術って呼ばれるモノの多くは魔法じゃ無くて練気法、治癒能力の向上からなる治療術だから魔法では無いんだよね」


「じゃあお母様が使っているアレも魔法じゃないのですか?」


「うん、アリシアさんの場合だと昨日ブリックスさんにボディーブローしてたよね? あの時アリシアさんは気脈って呼ばれる正しい方向へ向かう力を手に集めて拳を作っているんだと思う。これを練気って言うだけどこの状態で気穴って言われる人体のツボを正しく突くことで回復効果を出しているんだと思うんよ。詳しいことは本人に聞くのが一番だから興味があったらアリシアさんに直接聞いてみると良いよ」


「だから気絶したソテルさんを見て後頭部を殴打してたんですね。ビックリしてつい身が竦んで怯えちゃったんですけどアレは治療行為だったんですね! お母様がご乱心なさって怖い人になったとかじゃ無くてホントによかったぁ」



 アリステラは胸をなで下ろすがソテルは複雑な表情になった。



(あの人そんなことしてたのか……気絶してる人間の後頭部を殴打って、すごく残酷な絵面だな……想像するのはやめよう)



 俺は心深く誓った。二度とアリシアを怒らせることのないようにしようと。



「じゃあ制御の工程が落ち着いた事だしそろそろ放出の魔法もやってみようか」


「先生が最初にやったように投げたりしちゃ駄目なんですか?」


「構わないけど、もし戦闘中にいちいち手で投げたりしてたら命がいくつあっても足りないからね。手を使わずに放出できるように練習しよう」


「戦闘、ですか」



 アリステラは少し震えている。無理もない。こんな小さな女の子が戦闘の練習をする必要などない方がいい。しかしこんなご時世だ、ブリックスも最近物騒だと言っている。そうもなれば自身の安全は自分で勝ち取るほかない。



「怖いよね。でも今のところ俺はどこかで仕事を見つける予定もないし、アリステラが立派な……魔法使い? それとも役人? まぁ、何になりたいのかはわからないけど独り立ちできるようになるその日まで俺は面倒を見ていこうと思ってるよ。それまでの間は俺はアリステラのボディーガードでもあるから任期を終えるまでに自分のことを自分で守れるようになってくれれば十分だ。焦らなくても大丈夫だよ」



「ありがとうございます……それじゃあやってみます!」



 アリステラは水玉を作る。先程と同じく風船をイメージして作っている。アリステラは水風船を膨らませると口を縛るかのように魔力を流し、水の出口を塞いだ。



「おぉ、まさか水玉で放出をする気だったのか」


「え?」



 予想外だった。水玉は失敗したばかりだったので今度また練習させようと思っていたのだが目の前でアリステラは成功してみせたのだ。



「いや、俺が教えようと思ってた放出って言うのは水玉でやるのじゃ無くても出来ることだからもっと簡単なやり方をするのだと思っていたからさ」



 右手を突き出し手の平から水を湧かすと、出口を狭め、勢いを強くして見せた。



「ホースで水の出口を小さくすると勢いが良くなるよね? 極限まで出口を細めて勢いを強くすれば十分な攻撃魔法になる。水玉はさっき失敗してたから代わりにやってもらおうと思ってたんだけど。まさか水玉を成功させるとは」



 俺はすっかり感心してしまったのだがアリステラは困った表情をしていた。



「あの、それじゃあこれ……どうしましょう?」


「とりあえず物理的に投げてみれば良いと思うよ」



 そういうとアリステラは水玉を投げた。すると放物線を描いて地面にたたきつけられた。しかし水は弾けず、バウンドしてそのまま蒸煙石まで跳ねて行き、蒸発した。



「あれ? なんで先生みたいに水が弾けなかったんだろう」


「多分風船をイメージした副次効果なんだろうね。まぁ弾けはしなかったけど今の水玉の動きを見て、いろんな力が加わって放物線を描いて落下していくことがわかってもらえたと思う。魔法の放出も同じで、大凡の力の設定、打ち出し角度の想像と放出した結果を想像する事で放出の方程式は成り立つ。だから漠然とあそこに撃ちたい! と思ってもその通りには進んでくれない。これはもう経験回数を積んで勘とかを磨くしか無いと思う。毎日これから練習しておくと良いよ」


「わかりました。先生、あの……」


「どうした?」


「あのですね……そろそろ良い時間なので練習をやめにしたいのですけれど」



 見ればあと一時間もすればアリシアが帰って来るであろう時間になっていた。



「うん、そうだね。じゃあ今日はこれでおしまい!」


「やったぁ! じゃあ先生! サウナにしましょう!」



 アリステラは爛々とした目でソテルを見つめた。どうやら先程の体験でサウナの快楽を知り、虜にされてしまったようだ。もちろんそれだけでは無くサウナの後に魔法の練習が捗ったことも助勢となったのだろうが、今はただ喜びを分かつ同志が出来た事に感動していた。


 先ほどのように蒸煙石のある岩場すべてを囲うのでは無く、手頃な蒸煙石を外気浴場の近くに運び、小さめの小屋を土魔法で形成した。日も落ちてきたので内部に照明石と言われるランプ代わりになる石を飾り即席サウナを完成させた。



「アリステラ、さっきは魔法の水でサウナをしたけれど、今度は本物の水でサウナをしてみようか」



 そう言うとソテルはホースを引っ張ってきて蒸煙石に水を浴びせ始めた。すると咽せるほどに沸き上がる蒸気。アリステラはワクワクしながら入場のその時を待っているとソテルとアリステラは後ろから軽めの鉄拳を浴びた。



「ステラ。ソテルくん。二日連続でご苦労様。何をしてるのかしら?」



 振り向けば鬼神がそこに立っていた。



「あ、アリシアさん! いやぁ! これこれは……お早いお帰りですね!」


「お、お帰りなさいお母様」



 ソテルは慌て取り繕い、アリステラは目尻に涙を浮かべ頭をさすっていた。



「ただいま。それで、これはなにをしているのかしら?」


「こ、これはサウナといって――」


「お母様! これはサウナという健康療法なのです! 美容にもよく大変気持ちの良いものです! お母様も一度体験してみてはいかがですか!」



 アリステラはサウナの魅力を熱弁しようとするも、その格好は水着だ。アリシアから見れば何故こんな庭先で水着を着ているかの方が疑問であって、はしたなさを感じる方が勝っているのだろう。すこし目つきが厳しい気がする。



「それはわかりましたが……何故水着なのです? ここは浴場や遊泳施設ではなくただの庭ですよ?」


「それは、サウナの蒸気を肌で感じる必要があるためです!」



 ソテルが強気にハッキリと口にした辺りでブリックスが帰ってきた。



「ただいま、みんな。どうかしたのかね?」


「いえ、ソテル君がまた不思議なものを作っていたもので何かを聞いていたのと、あとアリステラが水着で庭にいるから……」


「ふむ? これは何だね?」



 ブリックスはサウナの扉を開けると、目を見開き叫んだ。



「ソテル! よくやってくれた! シア、早く水着に着替えなさい!」



 ブリックスはアリシアの返事を待つ事も無く屋敷の中へ駆け出すと、あっという間に水着に着替えて帰ってきた。旦那の奇行に呆気に取られたアリシアは帰ってきた夫に早く早くと急かされて、致し方なしに水着に着替え、サウナの前にやってきた。



「おぉおお、寒い! 早く入りたいなぁ! まだかね!」



 ソテルは入場者が大人二人増えたことを配慮し、小屋を大きめに増築、蒸煙石の数も倍に増やした。



「では、やらせていただきますよ!」



 かけ声と同時にホースから勢いよく水を吹き出すと小屋は一気に蒸気で満ちた。



「さぁシア! こっちにおいで!」



 ブリックスは妻の手を引き、煙の立ち上る小屋へと進んだ。一人で作業している俺を気にしてかアリステラはサウナに入らずその場でうずうずとしている。



「――アリステラも先に入っておいで」


「え、でも……では! お先に失礼しますね!」



 ソテル以外をサウナに放り込むとソテルは大急ぎで沼へと走り、沼の中から一本の木を抜き出した。風魔法を使い、かまいたちで木を削るとベンチの形に成形した。最初にサウナに入ったときにつくった二組の椅子と今しがた作ったベンチを並べて置き、四人全員が座れる準備を整えるとソテルもサウナに飛び込んだ。



「遅かったじゃ無いかソテル。いやぁしかし、またサウナに入れるとはなぁ」


「旦那様はこれをご存じなのですか?」


「お前には前に話したことがあったろう? オディロンで入った珍妙な風呂が非常に気持ちよかったと。アレが今入っているサウナだよ」


「でも、聞いていた話と全く違って息苦しいだけで気持ちよくはないわよ?」



 ブリックスは妻の言葉を聞いて昔を思い出す。アリシアやアリステラを見ると鼻がムズムズするらしく少し心地悪そうな顔をしている。


 二人の異変に気付いたソテルはそのまま放っておくのも可哀想なので風魔法で外気と繋がるパイプを通す。



「さぁ、これで大丈夫だと思いますが、どうですか?」


「あら、ありがとう」


「ありがとうございます先生」



 二人は感謝したがブリックスはしかめっ面をしていた。どうやらあの咽せる感覚も楽しんでいるようだったのでそっと解除した。



「うむ! この鼻を灼くような熱気を感じてこそサウナだな! しかしサウナを作るとはどんな経緯があったのかね?」


「これにはアリステラの魔力許容量がとても大きかった事に由来していて、自分の魔力を制御させるために水魔法を放出させていたのです。でも庭に流し続けたら洪水になってしまいそうだったので、蒸煙石を使って水を蒸発させていたんです。そしたら大分この蒸気が暖かかったのでサウナにしてみようと思って作った次第ですね」


「なるほど、いやぁしかし素晴らしい。若い頃はあちこち飛び回っていてね。オディロンで働いていた頃、疲れ切ってた僕を癒やしてくれたのはこのサウナだった。あんまり心地が良いものだから毎日通ったよ。でもこの町の町長になってからはなかなかオディロンまで行くことも叶わなくてね」


「仕事に追われるようになってしまって自由に動けないのはお辛いでしょうね」


「それもあるのだが、立場上軍国家に直接的に接触すると他の軍国家を刺激しかねないからね……サウナの作り方も知らなかったから諦めていたんだよ」


「でもあなた、この蒸気を楽しみたいのであればお風呂の湯気で十分じゃない?」


「そう思うだろう? でもこの蒸気の濃密さはサウナを以て他には無い。僕も初めて行ったときは信じられなかったがこれから身をもってサウナの気持ちよさを理解するだろうから後二時間くらいは僕についてきなさい」



 アリシアは怪訝な表情をしながらもブリックスに従った。


 一時間後にはアリシアはひぃひぃと言いながらもサウナと外気浴を繰り返し楽しんでいた。ブリックスはなれた様子で汗をたんまりと掻いては外気に触れて身体を休めてを繰り返し楽しんでいた。



「お父様もお母様も気持ちよさそうで良かったです」



 喜んでいる様子のアリステラは自分の限界に挑戦したいと子供らしい意地を張って二十分程経過しているがまだ元気な様子。ソテルはそんなアリステラを見守りながら自身もサウナを楽しんでいた。


 しばらくサウナを堪能した四人はソテルの腹の音をきっかけに切り上げることにした。当初怒っていたアリシアは少し疲れた様子だがサウナ自体は楽しめたようだ。ブリックスは大変ご機嫌でこれで明日からいつもの倍は働けると意気込んでいる。アリステラの我慢大会は三十分続きギブアップ。子供らしく楽しみ、今も元気いっぱいな様子である。


 みんながご満悦な中、ソテルは一人思案していた。それはサウナと外気浴を繰り返した結果、汗として老廃物や毒素が体外に排出されたのはいいものの、それを風呂で流していないのだ。このまま家に入れば多少なり汚れる。三人には申し訳ないが、現状自分を含め全員汗臭い事だろう。そこでソテルはアリステラに提案する。



「アリステラ、ちょうど良いから魔法でみんなにシャワーを浴びせてあげて」


「わたしがですか?」


「うん、お父さんやお母さんにアリステラがどれだけ魔法が使えるるようになったかを見せてあげてよ。シャワーじゃなくて、水流で流してもいいよ」


「わかりました!」



 アリステラは目を閉じるとそよ風が吹いた。すると四人全員の上空に突然ポツポツと雨が降り、やがてシャワーのような水の群れがみんなに浴びせられた。



「おぉお、これは驚いた。丁度体がべたついてたんだ」



 ブリックスとアリシアは体を軽く流すとアリステラとソテルもそれに続いた。体を流し終えると今度は水分を崩壊させて見せた。すると先ほどまで濡れていた四人は既に乾燥した状態になっていた。



「これは便利だな。風呂もこうして入ればタオルなどいらんのではないかね?」


「確かに非常時はそういったことも出来ます。でも自然物で作られたお風呂の方が格別に気持ちいいと思いますよ。そのことでアリステラは実感してると思います」



 そう言われてみればとアリステラは思い出すように記憶をたどる。すると答えを見つけたのかソテルに聞いた。



「自然物のものは触れるけど、魔法で作られたものは触れない?」


「正解。自然物のお風呂は肌が実際に湿って、肌に浸透したりするけれど、魔法で作られたお風呂は水魔法として留めるための特別な力が表面に掛かる。そのせいで水の重さとかを感じることは出来ても肌には浸透しないし、感じ方が変わってくる」


「でもお洋服とかはビチョビチョになりましたよ?」


「あれは服自体が濡れているのでは無くて、服の繊維の隙間に細かくなった水が表面張力とかで形を保ったままそこにある、と言った感じなのかな。だから崩壊させると元通りになるって訳」


「ではやはりサウナも風呂も天然物の法が良いというのだね?」


「その通りです。自然物の水蒸気であれば長時間留まるため温度を高く保ちやすいのですが魔法で作った水だと蒸発した瞬間から崩壊が始まってしまってどうしても部屋の温度が上がりづらいみたいですね」


「魔法も万能なようで使い勝手がいまいち悪いものだね」



 ブリックスは困ったように微笑むとソテルも困ったように笑った。



「でも魔法はとっても便利ですよ! 今回サウナを経験できたのも魔法があったからだしソテル先生は空も飛べましたし! 私もいつか鳥みたいに飛んでみたいです!」


「それはいいなぁ、それにしてももう魔法が使えるなんてステラは賢いなぁ。頑張って魔法を覚えなさい。でも、勉強も疎かにしてはいけないよ?」


「はい! お父様!」



 元気よく返事をするとアリステラは家へと走り出した。



「なぁソテル、ステラは魔法に才覚があるのかね?」


「恐らく王属魔法使いと同じか、磨き上げればそれ以上のものだと思います」


「そうか……自分の娘故贔屓目に見てきたつもりだがそれを上回る器だったとはな」


「多分三年もあれば僕の使える魔法のほとんどを使えるようになると思います」


「ほとんど、と言うことは魔法においては君の方が才覚があると言うことかな?」


「いえ、ただ世の中で起こる納得できないことや不可思議なことは実際に体験しないと納得することが出来ないときもあります」


「その心は?」


「神のみぞ知る、と言った所ですかね。俺たち人間は見聞きしたものしか信じられないし、その近くにいないと自分の住む世界とは違うものとして棲み分けてしまう」


「なるほど、確かについ最近まで無一文同然の資格ナシの男がこの屋敷に住むとは到底想像もしていなかったからね、僕にはよくわかるよ」


「あはは……一本取られてしまいましたね」



 二人で談笑していると屋敷から二人を呼ぶ声が聞こえる。



「さて、この格好では肌寒い、我々も中へ入るとしよう」


「そうしましょう」



 上半身裸の二人の男は屋敷へ向かうと早々に着替えを済ませた

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