01-6 トリアージ
「綾瀬、現時点の状況確認結果の報告を頼む」
「はい」
早速、所長や明夫さんこと品川さんなど主要な従業員を集めてもらった。
集まったところで、私はみなの前に一歩出た。
「現況を確認をしたところ、ランサムウェアというマルウェアによりPCの一部データが暗号化され、そのせいで正常に動作できなくなっていることが推測されます。画面に表示されている文字はマルウェアの作成者が暗号を解除する鍵が欲しければお金を払えというメッセージです」
ニュースで聞いた気がする、という声がする。
「ランサムウェアはネットワークを通じて感染が拡大する可能性が高いマルウェア、すなわち悪意のあるプログラムです。なので、同じような症状になっているPCや機器が他にないかを確認する必要があります。もし他にも感染している場合は、即時で連絡してください」
ここまで告げて、周りの人たちの様子を見回す。
何を言っているかわからないということはなさそうだ。
「これからの行おうとしている対応について、3つのプランがあります」
「3つ」
思いがけず中野所長が小さく復唱する。
「まず第1のプラン。ランサムウェアについては多種多様な種類が蔓延しています。私たちでどのランサムウェアの種類を特定します。特定ができた場合、そのランサムウェアに対応した暗号解除ツールが存在するかどうか確認し、存在した場合は復旧を試みます。この場合は身代金を払う必要はありません。次に第2のプラン、PCのバックアップデータが存在している場合、それからファイルを戻して復旧を試みます。この場合は身代金を払う必要はありません。そして、第3のプラン、どうしても復旧しない・
「身代金を払う・・・」
「払ってちゃんと復旧できる保証はあるのか・・・」
「えーっと、バックアップってとってたっけ?」
「いや、知らないな・・・でもどこかに保存とかしてるもんじゃないのか・・・」
みな、思い思いに口にする。
「第3のプランについては、払っても解除の鍵を渡してもらえるか保証がありません.。そしてすべてのプランが
と私が言うと、中野所長に思うところがあったのか
「バックアップについては、恥ずかしい限りだが私も把握していない・・・。ファイルサーバも設置しているが、正直その中にあるとも思えない。第1のプランで進めてほしい」
方針は決まった。
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