01-11 クロージング

「無事復旧した。非常に助かった。ありがとう。これで何とか納期までに製品を製造できそうだ」

疲れた様子の所長に安堵の表情が窺えた。


「また、何かありましたら・・・」とテンプレートのように口に出しそうになったが、思いとどまった。

 システムエンジニアのときは、お客さんの要望に応じて往訪したり、御用聞きのように現状のヒアリングと称して仕事のお話を貰いに行ったりという場面があった。また頼ってくださいという社交辞令的な意思表示でもあるけれども、インシデントに限らず、誰だってトラブルに遭遇したくはない(はず)。また再会するとすれば、その時は再びインシデントが発生した時かもしれない。そう思うと「また...」なんて口に出すのははばかられた。


しかし、そんな気持ちを汲んでか知らずか、所長は続けた。

「京ちゃん、じゃあ次に会うのは、いつもの飲み屋だな!」

「え」

 思いがけず変な声が出た。

「そうですねー。いつものメンツで」と涼しい顔で京さんが答えて、どっとと笑いが起きた。


ふと窓の外を見ると朝日が昇っていて上がっていて、

梅雨の時期であることを忘れてしまうような爽やかな青空が広がっていた。

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